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 朝、将門は宿としている当地の受領の別棟を出て庭へと降り立つ。
 そして、野太刀を抜き放った。
 仮想の敵を想像しながら体を開いて突き刺す。
 つづいて、空いたほうの手を餌にし、体を捌いて喉元を剣で掻き切る。
 こんな具合でいくつもの技を試していった。だが、将門の眉間には皺が刻まれていた。
 片手の型から両手で柄を握る技法へと切り替える。だが、それでも満足がいかない。盗賊に不意討ちを受けたのち、自分の剣はこのままではいけないのではないかと感じるようになっていたのだ。
「精が出るな、小次郎」
 そこにふいに声がかけられた。
 型を演じるのを止めて声、宅を出てすぐのところを見やる。そこに立っているのは在信だった。
「兵の嗜みというものだ。そなたもどうだ」
「手前はいい。見ているだけで疲れた」
 在信はここたえると、その場にだしなく足を投げ出して座り込む。
 あきれたやつだ――弓こそが兵の表芸とはいえ、剣の達者であるに越したことはないだろうに。
 まあいよい――将門は首をふって型を再開する。
 上段に剣をとり掲げながらななめに動く。刹那、袈裟斬りを仮想の相手に浴びせた。
 次は真っ向から敵と打ち合う。ただし、将門の斬撃のほうがわずかに遅く結果、想像上の相手の刀身に刃を乗せた彼の一閃が相手をとらえた。
 そこまで終えて野太刀を鞘に収める。
 そして在信のもとまで近寄って腰をおろした。
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