74 / 136
74
しおりを挟む
「確かに一面の真理ではあるがの」
「真理なんて人の数だけあるんだ、だったら都合がいい真理で満足していいんじゃないか」
彼の言葉に在信が気づかわしげな声で言った。
しばし将門は黙った末、ふたたび口を開く。
「したが、目の前にある“事実”は曲げられぬ。たとえば、いかように否もうがそれがしが兵であることは変わらぬ」
将門の言葉に、なぜか妙に在信は表情を歪めた。
「いかがした」
「なに、将門にちと痛いところを突かれてな」
彼の質問に在信は曰くありげな口調で応じる。これを受けて、
「そうか」
と将門はあえて踏み込まなかった。
そこに、
「真理が人の数だけあるってどういうことなの、小次郎」
と福丸がたずねてきた。
「それはな」
それに答えることで自然と在信との会話は打ち切りになる。
第四章
一
登庁する刻限の前のことだ。
放免たちには「一人で参るところがある」と言い置いて、左京の四条のはずれにある宅から北へと向かった。
途中、時々周囲に人影がないかを確かめた上でひとつの邸の門扉を叩く。
「真理なんて人の数だけあるんだ、だったら都合がいい真理で満足していいんじゃないか」
彼の言葉に在信が気づかわしげな声で言った。
しばし将門は黙った末、ふたたび口を開く。
「したが、目の前にある“事実”は曲げられぬ。たとえば、いかように否もうがそれがしが兵であることは変わらぬ」
将門の言葉に、なぜか妙に在信は表情を歪めた。
「いかがした」
「なに、将門にちと痛いところを突かれてな」
彼の質問に在信は曰くありげな口調で応じる。これを受けて、
「そうか」
と将門はあえて踏み込まなかった。
そこに、
「真理が人の数だけあるってどういうことなの、小次郎」
と福丸がたずねてきた。
「それはな」
それに答えることで自然と在信との会話は打ち切りになる。
第四章
一
登庁する刻限の前のことだ。
放免たちには「一人で参るところがある」と言い置いて、左京の四条のはずれにある宅から北へと向かった。
途中、時々周囲に人影がないかを確かめた上でひとつの邸の門扉を叩く。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
出雲屋の客
笹目いく子
歴史・時代
短篇です。江戸堀留町の口入屋『出雲屋』は、乳母奉公と養子縁組ばかりを扱う風変わりな口入屋だった。子を失い、横暴な夫に命じられるまま乳母奉公の口を求めて店を訪れた佐和は、女店主の染から呉服商泉屋を紹介される。
店主の市衛門は妻を失い、乳飲み子の香奈を抱えて途方に暮れていた。泉屋で奉公をはじめた佐和は、市衛門を密かに慕うようになっていたが、粗暴な夫の太介は香奈の拐かしを企んでいた。
夫と離縁し、行き場をなくした佐和を、染は出雲屋に雇う。養子縁組の仕事を手伝いながら、佐和は自分の生きる道を少しずつ見つけて行くのだった。
忍び零右衛門の誉れ
崎田毅駿
歴史・時代
言語学者のクラステフは、夜中に海軍の人間に呼び出されるという希有な体験をした。連れて来られたのは密航者などを収容する施設。商船の船底に潜んでいた異国人男性を取り調べようにも、言語がまったく通じないという。クラステフは知識を動員して、男とコミュニケーションを取ることに成功。その結果、男は日本という国から来た忍者だと分かった。
新説 呂布奉先伝 異伝
元精肉鮮魚店
歴史・時代
三国志を知っている人なら誰もが一度は考える、
『もし、呂布が良い人だったら』
そんな三国志演義をベースにした、独自解釈込みの
三国志演義です。
三国志を読んだ事が無い人も、興味はあるけどと思っている人も、
触れてみて下さい。
混血の守護神
篠崎流
歴史・時代
まだ歴史の記録すら曖昧な時代の日本に生まれた少女「円(まどか)」事故から偶然、大陸へ流される。
皇帝の不死の秘薬の実験体にされ、猛毒を飲まされ死にかけた彼女を救ったのは神様を自称する子供だった、交換条件で半不死者と成った彼女の、決して人の記録に残らない永久の物語。 一応世界史ベースですが完全に史実ではないです
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる