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相手が上段から木太刀で斬ってくるのを霞に受けようとした。
が、失敗(しくじ)る。足が思うように動かず、また一撃を受けた木太刀を支えきれず額にぶつかった。
痛い――童のときの源在信は胸のうちで悲鳴をあげる。当然、それは表情にも出た。
しかし、斬撃を送ってきた相手はつまらなそうな顔をしているだけで心配する気配はみじんもない。
「そなたの母御から厳しゅう指南せよともうしつけられておる。さっさと構えられよ」
剣術の指南のために雇われた男は冷たい声で告げる。なにもしないままでいると無防備なところをさらに打ち据えられることになる、在信は柄を両手で握って木太刀を八相に構えた。
「参れ」
と冷然といわれ、破れかぶれで彼は正面から斬りかかった。
刹那、後から男が木太刀を一閃する。遅れて一撃を送ったはずだというのに、男の一撃が在信の頭蓋をとらえた。寸前で止めてはいるが、わずかに当たっている。それで充分に激痛が走った。
そこで視界の端で人影が動くのを在信は認める。母屋の簀子の上を母が歩いてきた。
「夕餉の刻限です」
母親が子息にかけるには随分と無感情な声で在信に告げる。
木太刀を放り出し、在信は母親のもとへと駆け寄った。だが、母の表情はやはり動かない。
「今日の剣の修練はいかがだったのです」
「それは」
問いかけに答えかけて在信は口ごもった。それが返答となった。
相手が上段から木太刀で斬ってくるのを霞に受けようとした。
が、失敗(しくじ)る。足が思うように動かず、また一撃を受けた木太刀を支えきれず額にぶつかった。
痛い――童のときの源在信は胸のうちで悲鳴をあげる。当然、それは表情にも出た。
しかし、斬撃を送ってきた相手はつまらなそうな顔をしているだけで心配する気配はみじんもない。
「そなたの母御から厳しゅう指南せよともうしつけられておる。さっさと構えられよ」
剣術の指南のために雇われた男は冷たい声で告げる。なにもしないままでいると無防備なところをさらに打ち据えられることになる、在信は柄を両手で握って木太刀を八相に構えた。
「参れ」
と冷然といわれ、破れかぶれで彼は正面から斬りかかった。
刹那、後から男が木太刀を一閃する。遅れて一撃を送ったはずだというのに、男の一撃が在信の頭蓋をとらえた。寸前で止めてはいるが、わずかに当たっている。それで充分に激痛が走った。
そこで視界の端で人影が動くのを在信は認める。母屋の簀子の上を母が歩いてきた。
「夕餉の刻限です」
母親が子息にかけるには随分と無感情な声で在信に告げる。
木太刀を放り出し、在信は母親のもとへと駆け寄った。だが、母の表情はやはり動かない。
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「それは」
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