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「のふよ、福丸を山の民に迎えることはできまいか」
その考えには将門の兵を忌避する思いがある。仮に郎党などに迎えて坂東まで連れていっても、そこに待っているのはまず間違いなく弓矢の沙汰だ。そんな場所に福丸を迎えても幸せにはできない、そんなふうに思える。
「うーん、里の長に聞かなければしかとは言えないけれど、おそらくは大丈夫じゃないかな。住処を失って山に迷い込んで山の民になる者もそれなりにいるし」
将門の疑問にのふは軽い口調で応じた。
「おいらは武技を習いたい」
「弓ならば山の民にも教えられる。剣は旅のあいだに仕込んでやる、だからおまえは山の民になれ」
異議を唱える福丸に将門は懇々と説く。だが、福丸は首を縦にふらない。
「まあ、今決めなくともよいのではないか。まだ、旅路は随分とある」
そこに在信がのんびりとした口調で絶妙の間で割って入った。頑なになりかけていた空気がそれで和らいだ。何だかんだで人の心の機微に通じていることが在信にはあった。
藪を出た先は開けた場所だった。シュウメイギクなど草花をなるだけ踏まないようにしながら、一番近い大木へと近寄り、のふはその横からいったん数歩直進する。その後、後ろ向きに木のところまで戻り進行方向を大きく変え木の前を横切って進む。それに将門たちはつづいた。
これならば、万が一追手がいたとしても最初の足跡に惑わされるはずだ。
森のなかに入ってしばしのことだ、再度のふの前を進んでいた足往が突如として立ち止まる。それに合わせてのふまでもが足を止めた。
「どうした」
戸惑いながら将門は距離を詰めて囁く。緊張をおぼえていた。
その考えには将門の兵を忌避する思いがある。仮に郎党などに迎えて坂東まで連れていっても、そこに待っているのはまず間違いなく弓矢の沙汰だ。そんな場所に福丸を迎えても幸せにはできない、そんなふうに思える。
「うーん、里の長に聞かなければしかとは言えないけれど、おそらくは大丈夫じゃないかな。住処を失って山に迷い込んで山の民になる者もそれなりにいるし」
将門の疑問にのふは軽い口調で応じた。
「おいらは武技を習いたい」
「弓ならば山の民にも教えられる。剣は旅のあいだに仕込んでやる、だからおまえは山の民になれ」
異議を唱える福丸に将門は懇々と説く。だが、福丸は首を縦にふらない。
「まあ、今決めなくともよいのではないか。まだ、旅路は随分とある」
そこに在信がのんびりとした口調で絶妙の間で割って入った。頑なになりかけていた空気がそれで和らいだ。何だかんだで人の心の機微に通じていることが在信にはあった。
藪を出た先は開けた場所だった。シュウメイギクなど草花をなるだけ踏まないようにしながら、一番近い大木へと近寄り、のふはその横からいったん数歩直進する。その後、後ろ向きに木のところまで戻り進行方向を大きく変え木の前を横切って進む。それに将門たちはつづいた。
これならば、万が一追手がいたとしても最初の足跡に惑わされるはずだ。
森のなかに入ってしばしのことだ、再度のふの前を進んでいた足往が突如として立ち止まる。それに合わせてのふまでもが足を止めた。
「どうした」
戸惑いながら将門は距離を詰めて囁く。緊張をおぼえていた。
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