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 あやつらを富士の頂きへたどりつかせるわけにはいかぬ――。
 そのためなら憎悪する国司受領、彼らの代理である目代をも利用してみせようと大食は考えた。
「されど、肝心なのは奴輩の息の根を断つこと。抜かりはありはすまいな」
「我が郎党をすべて差し向けたゆえ」
 と話していたところ、蔀戸の外から声が聞こえてくる。
「目代、言上に参った」「入れ」
 目代の許しを得て男がひとり中に入ってきた。直後、信じられないことを口にする。
「侍一党、遁走を許してしまいもうした」
「なんだと、なんのために寝ているところを襲ったのだ」
「偶然か、気配に勘づいたかあやつらは起きておりもうした」
 目代の叱責に郎党の男は首をすくめる。
 だが、怒鳴りたいのは大食のほうだった。役に立つと考えたからこそ目代という唾棄すべき者に平身低頭して将門のことを吹き込んだのだ。役立たずどもが――大食は側にある野太刀に手が伸びそうになるのを必死にこらえた。

   三

 将門はカケスの地味な鳴き声を聞いて目を覚ました。手の届く距離にのふが仰向けに倒れているのを見つける。
 体の節々が痛む。どうしてこんなことになったのか、記憶を遡った。
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