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「二本の足が生えているでしょ」
「それは、まあ、そうだが」
 ここまで歩きで来たのふに言われては将門としても二の句を継げない。
「まあ、命があっただけでもよしとしよう」
 他方、在信は今の境遇をあっさりと受け入れていた。兄の死、という偶然から家を継いだことが在信の性根に影響を与えているのか、割り切りの早さには将門も羨ましさを感じた。
「それにしてもあやつら、なにゆえに襲ってきおったのだ」
 将門は眉間に皺を寄せて独語する。
『目代の咎、都に報告などさせぬぞ』などともうしておったが――。
「後ろ暗いことをしている奴輩だ、急に怖気づいたのさ」
 童にしては大人びた口調で福丸が吐き捨てるようにいった。
 その可能性もなくはないが――忠平の権威にあれほど屈服していた連中が急に襲ってきたのはやはり違和感がある。

 今宵、目代の姿は集落で二番目に大きな宅(やけ)にあった。
 母屋の蔀戸の内側、“客人”に酒をふるまっていた。瓶子から盃に注いで相手に渡す。それを相手は長い腕で受け取る。
「いや、それにしても助かったでおじゃる」
 目代は客に媚びるような笑みを向けた。
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