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「おのれ」
 火を避けながらも将門は前へと躍り出た。手には既に抜き放った野太刀があった。
 そんな彼にひとりが斬りかかってきた。剣光一閃、将門は体を開くや片手に持った野太刀で相手の喉をかき切る。
 刹那、矢が一本、二本と男たちの片方の眼窩に突き立った。在信の所業だ。当人の性根とは裏腹に兵の業である弓の扱いは将門以上のものがあるというのが在信という男だ。
「うぬ」無事な男が野太刀を両手で構えて一閃を送ってきた。
 電光石火、将門は相手に肉薄して肘を片手で受けとけ、鍔元を相手の首にあてがってかき切る。
 ここに至り、残りの男数人が怯んだ。仲間の死体を各々盾にしているが、そんな状態で満足に剣がふるえるわけがなかった。
 刹那、「今だ」と将門が叫んだ。瞬間、燃え上がりつつある母屋から在信とのふ、福丸、それに足往が飛び出してきてその勢いのままに死体で開いた包囲の輪の外へと駆けていった。風を巻いて将門もそれにつづく。ひとり、斬りかかろうという気配を見せたが将門が視線を向けたとたんその殺気は萎んだのが表情から分かった。それを尻目に将門は疾走しつづける。
 表に出て、さらに集落の外にまで在信とのふ、福丸と合流して駆けた。あたりに建物が見えなくなったところで、
「ちっ、馬を置いてきたな」
 将門は立ち止まって顔をしかめた。
「ここからは徒歩(かち)かあ」
 それで在信も現状を認め悲鳴じみた声をもらす。
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