平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「なれど、いつまで公庭(朝廷)の世がつづくであろうな」
「なに」
 頼慶の言葉に将門は眉をひそめる。
「公庭は万姓(民衆)から兵(へい)を取ることを止めて久しい。貴種は荒事に兵(つわもの)をもちいることが常となっておる。つまりは、武を司るのは兵(つわもの)だ」
「なれど、貴種は広大な所領を治めておるぞ」
「米で人を殺せるか?」
 将門の言葉に頼慶が声を立てて笑った。
 確かに――頼慶の言葉には一理ある。源平というのは皇族の子孫だ。将門にも五代の苗裔(びょうえい)としての誇りがある。だからこそ余計に忠平に仕えていることが苦痛だった。
「物騒なことをもうすな、頼慶」
 誰か余人にでも聞かれればことの発言を将門は笑い飛ばす。
 それに合わせて頼慶も笑声をあげた。
「なに、おまえが不満そうだからちと焚きつけてみたのだ」
「笑えん冗談をもうすな」
 頼慶の言葉に将門は微苦笑を浮かべる。
「どうだ、京は」
「当代の帝になってからは、菅公の祟りは影をひそめ総じては平穏だな」
「そして、公庭は一の人が牛耳るようになっている、か」
「さようだ」
 他愛も話題に話は移った。
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