19 / 136
19
しおりを挟む
「なれど、いつまで公庭(朝廷)の世がつづくであろうな」
「なに」
頼慶の言葉に将門は眉をひそめる。
「公庭は万姓(民衆)から兵(へい)を取ることを止めて久しい。貴種は荒事に兵(つわもの)をもちいることが常となっておる。つまりは、武を司るのは兵(つわもの)だ」
「なれど、貴種は広大な所領を治めておるぞ」
「米で人を殺せるか?」
将門の言葉に頼慶が声を立てて笑った。
確かに――頼慶の言葉には一理ある。源平というのは皇族の子孫だ。将門にも五代の苗裔(びょうえい)としての誇りがある。だからこそ余計に忠平に仕えていることが苦痛だった。
「物騒なことをもうすな、頼慶」
誰か余人にでも聞かれればことの発言を将門は笑い飛ばす。
それに合わせて頼慶も笑声をあげた。
「なに、おまえが不満そうだからちと焚きつけてみたのだ」
「笑えん冗談をもうすな」
頼慶の言葉に将門は微苦笑を浮かべる。
「どうだ、京は」
「当代の帝になってからは、菅公の祟りは影をひそめ総じては平穏だな」
「そして、公庭は一の人が牛耳るようになっている、か」
「さようだ」
他愛も話題に話は移った。
「なに」
頼慶の言葉に将門は眉をひそめる。
「公庭は万姓(民衆)から兵(へい)を取ることを止めて久しい。貴種は荒事に兵(つわもの)をもちいることが常となっておる。つまりは、武を司るのは兵(つわもの)だ」
「なれど、貴種は広大な所領を治めておるぞ」
「米で人を殺せるか?」
将門の言葉に頼慶が声を立てて笑った。
確かに――頼慶の言葉には一理ある。源平というのは皇族の子孫だ。将門にも五代の苗裔(びょうえい)としての誇りがある。だからこそ余計に忠平に仕えていることが苦痛だった。
「物騒なことをもうすな、頼慶」
誰か余人にでも聞かれればことの発言を将門は笑い飛ばす。
それに合わせて頼慶も笑声をあげた。
「なに、おまえが不満そうだからちと焚きつけてみたのだ」
「笑えん冗談をもうすな」
頼慶の言葉に将門は微苦笑を浮かべる。
「どうだ、京は」
「当代の帝になってからは、菅公の祟りは影をひそめ総じては平穏だな」
「そして、公庭は一の人が牛耳るようになっている、か」
「さようだ」
他愛も話題に話は移った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

国殤(こくしょう)
松井暁彦
歴史・時代
目前まで迫る秦の天下統一。
秦王政は最大の難敵である強国楚の侵攻を開始する。
楚征伐の指揮を任されたのは若き勇猛な将軍李信。
疾風の如く楚の城郭を次々に降していく李信だったが、彼の前に楚最強の将軍項燕が立ちはだかる。
項燕の出現によって狂い始める秦王政の計画。項燕に対抗するために、秦王政は隠棲した王翦の元へと向かう。
今、項燕と王翦の国の存亡をかけた戦いが幕を開ける。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
枢軸国
よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年
第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。
主人公はソフィア シュナイダー
彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。
生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う
偉大なる第三帝国に栄光あれ!
Sieg Heil(勝利万歳!)

『影武者・粟井義道』
粟井義道
歴史・時代
📜 ジャンル:歴史時代小説 / 戦国 / 武士の生き様
📜 主人公:粟井義道(明智光秀の家臣)
📜 テーマ:忠義と裏切り、武士の誇り、戦乱を生き抜く者の選択
プロローグ:裏切られた忠義
天正十年——本能寺の変。
明智光秀が主君・織田信長を討ち果たしたとき、京の片隅で一人の男が剣を握りしめていた。
粟井義道。
彼は、光秀の家臣でありながら、その野望には賛同しなかった。
「殿……なぜ、信長公を討ったのですか?」
光秀の野望に忠義を尽くすか、それとも己の信念を貫くか——
彼の運命を決める戦いが、今始まろうとしていた。
東へ征(ゆ)け ―神武東征記ー
長髄彦ファン
歴史・時代
日向の皇子・磐余彦(のちの神武天皇)は、出雲王の長髄彦からもらった弓矢を武器に人喰い熊の黒鬼を倒す。磐余彦は三人の兄と仲間とともに東の国ヤマトを目指して出航するが、上陸した河内で待ち構えていたのは、ヤマトの将軍となった長髄彦だった。激しい戦闘の末に長兄を喪い、熊野灘では嵐に遭遇して二人の兄も喪う。その後数々の苦難を乗り越え、ヤマト進撃を目前にした磐余彦は長髄彦と対面するが――。
『日本書紀』&『古事記』をベースにして日本の建国物語を紡ぎました。
※この作品はNOVEL DAYSとnoteでバージョン違いを公開しています。
リュサンドロス伝―プルターク英雄伝より―
N2
歴史・時代
古代ギリシアの著述家プルタルコス(プルターク)の代表作『対比列伝(英雄伝)』は、ギリシアとローマの指導者たちの伝記集です。
そのなかには、マンガ『ヒストリエ』で紹介されるまでわが国ではほとんど知るひとのなかったエウメネスなど、有名ではなくとも魅力的な生涯を送った人物のものがたりが収録されています。
いままでに4回ほど完全邦訳されたものが出版されましたが、現在流通しているのは西洋古典叢書版のみ。名著の訳がこれだけというのは少しさみしい気がします。
そこで英文から重訳するかたちで翻訳を試みることにしました。
底本はJohn Dryden(1859)のものと、Bernadotte Perrin(1919)を用いました。
沢山いる人物のなかで、まずエウメネス、つぎにニキアスの伝記を取り上げました。この「リュサンドロス伝」は第3弾です。
リュサンドロスは軍事大国スパルタの将軍で、ペロポネソス戦争を終わらせた人物です。ということは平和を愛する有徳者かといえばそうではありません。策謀を好み性格は苛烈、しかし現場の人気は高いという、いわば“悪のカリスマ”です。シチリア遠征の後からお話しがはじまるので、ちょうどニキアス伝の続きとして読むこともできます。どうぞ最後までお付き合いください。
※区切りの良いところまで翻訳するたびに投稿していくので、ぜんぶで何項目になるかわかりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる