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「それがしは平将門」「わしは源為景(みなもとのためかげ)だ」
 互いに名乗り合いが済んだところで、
「御両所、よろしいか」
 と短躯の男が仰々しくたずねる。
「おう」と将門、為景は威勢よくこたえた。元より、準備の上でここに足を運んでいる。
「それでは、始め」
 とたん、男がさらに二歩ほど後ろに下がる。
 刹那、距離を詰めていたふたりは違いの右前腕の背部を強く打ちつけあった。
 直後、下脚の肉のある部分を両者は打ち合わせた。ふむ、悪くない――将門は胸のうちでつぶやいた。
 ここまではあくまでほんの腕試しだ。
 将門はすばやく拳を突き出す。これを為景は片手でそらし、もう一方の手の指先を顔に突き出してくる。電光石火、将門はもう一方の手で相手の腕を抑えることで攻撃を防ぎ、同時に歩を進め相手とすれ違うような位置に立つ。一瞬裡のうちに相手の襟首をつかみ、同時に足を払った。
 と思ったが、相手は重心を沈める身体操作、沈身を使って襟の手をはずし、重心を浮かせる浮身を使って距離を開けた。
早――将門は追撃によって距離を詰める。相手が拳を顔面に向かって突き出した。右腕で攻撃を捌きながら、左腕で相手の左腕を制する。左手で左下へ相手の左手を引きつつ、左足で相手の右の足を刈りにいく。
 相手は右足をあげて避けた。将門はすかさず左足を内側から相手の左足にかける。足を引いて相手を前のめりに倒す。左手はつかんだまま、左膝でとどめを刺す。ここまで一瞬裡の早業だった。
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