上 下
6 / 8

第6話 デートに事件はつきものだ

しおりを挟む
「ニワトリが! ニワトリが、襲ってきたんです!」

――ニワトリ? 空太は耳を疑った。ニワトリは比較的小さい生き物だ。そんな存在であるはずのニワトリが成人男性を倒すほどの力はないはずだ。
 空太は女性に問いかける。
「本当にニワトリが襲ってきたんですか?」
 女性は落ち着きを取り戻してきたのか、状況を説明してきた。
「ええ・・・・・・確かにニワトリだったわ、でもかなり大きくて凶暴だったわ。それに彼氏に何かを吐きつけて行ったの。そしたら彼氏が急に倒れて、今に至るわ」
「吐きつけて行った?」
「ええ。彼を見てみて、すぐに分かるわ」
 そう言われて、空太は倒れている男性のもとへ近寄る。よく見てみると、確かに紫色の液体が男性の身体に付着していた。空太はその液体を触ろうとして、手を伸ばそうとした時――
「空太、触らないほうがいい」
 焔に止められた。理由はすぐに告げられた。
「その液体は、毒だ。しかも猛毒だ」
「どうして毒って分かったの?」
「これを見ろ」
 そういうと、焔はいつの間にか手にしていた日本刀の先を液体に近づけた。日本刀の先が触れると、日本刀の先っちょが黒く変色した。うわ、触らなくてよかった。
「まだ近くにいるはずだ。探し出して、討伐するぞ」
 焔はいつの間にか持っていた日本刀を鞘に納めると、水族館の奥へと歩き出す。
「あっ、待ってよ焔!」
 空太は急いで焔の横に並ぶ。
「探すったって、どうやって探すの? 結構広いよ?」
「なに、デカい犬の次はデカいトリだ。トリは頭が悪い。向こうから居場所を教えてくれるさ」
「そんな簡単にいくわけない――」
 そう思ったその時。

 コケコッコー!!

 館内にニワトリの声が鳴り響いた。

「ほらな」
 焔は満足そうにしている。
「声は、クラゲのコーナーの方から聞こえた。いくぞ」
「分かった」
 焔に同意すると、空太は焔と共にクラゲコーナーの方へと向かうのであった。

 クラゲの展示スペースは全体的に暗い。その代わりに水槽の中から幻想的な光が投影されており、白いクラゲたちを引き立たせている。しかし、その幻想的な空間にふさわしくない存在がそこにはいた。

 ニワトリの顔をしているが、体が違う。ドラゴンのような翼と足。そして蛇のような尻尾を持っている。空太はその異様な存在に息を呑んだ。大きさは2~3メートルくらいに見える。
「なんだよ・・・・・・コイツは」
 そう思った空太だったが、ここで前回のジェヴォーダンの獣の襲撃を思い出した。スマホのカメラ機能を使えば、アンノウンが解析してくれるかもしれない。空太はスマホのメッセージアプリを起動し、アンノウンにメッセージを送る。

『アンノウン、頼みがある』
 返事はすぐに返ってきた。

『いかがなさいましたか? 空太様』

『目の前に異様な存在がいる、カメラで撮影するから解析を頼む』

『かしこまりました。対象を撮影してください。対象の解析が終わり次第音声案内に移行します』

『了解、頼んだぞ』
 メッセージアプリを閉じ、空太はカメラモードに切り替える。どうやらまだこちらに気づいていないらしい。撮影のチャンスだ。

――カシャ

 上手くいった。後はアンノウンが解析してくれるのを待つのみだ。
 解析はすぐに始まった。

『撮影データを確認・・・・・・ファイル照合中・・・・・・照合完了。データを共有致します。』
 空太はスマホに表示されたデータを確認する。そこに表示されていたのは――

『コカトリス』

 猛毒と魔眼を持つモンスターの名前だった・・・・・・

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128
ファンタジー
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王国でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を叶えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、学生時代に築いた唯一のつながり、王国第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、内容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の励みにしたいのでお気に入り登録や感想もお願いします! 話ごとのちょっとしたものでも構いませんので!

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-

星井柚乃(旧名:星里有乃)
ファンタジー
 旧タイトル『美少女ハーレムRPGの勇者に異世界転生したけど俺、女アレルギーなんだよね。』『アースプラネットクロニクル』  高校生の結崎イクトは、人気スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』のハーレム勇者として異世界転生してしまう。だが、イクトは女アレルギーという呪われし体質だ。しかも、与えられたチートスキルは女にモテまくる『モテチート』だった。 * 挿絵も作者本人が描いております。 * 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。 * 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。  この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。

ランク外の最弱職スマホマスターが実は最強だった話。

飛燕 つばさ
ファンタジー
この世界では、成人を迎えるとジョブを授かる。戦士や魔法使い。上位ジョブでは、剣聖や賢者も存在する。 主人公のヒビキは、これまで聞いたことのないジョブである『スマホマスター』のジョブを手にする。スマホマスターは謎が多いため、ランク外の最弱職と呼ばれていた。希望を持って王都までやって来たヒビキは、この事実に絶望する。 しかし、このスマホマスターは謎に包まれていただけで、実際には強力な能力を秘めていたのであった。ヒビキは、スマホマスターの能力で戦姫と呼ばれる強力なゲームキャラクターを顕現させて戦わせたり、それ以外の素晴らしい能力に目覚めていく…。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...