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番が私の元に戻ってきた。
「陸、ついでくれるか」
グラスを傾けて言うと、にっこりと陸が笑った。
「はい」
ビールが注がれる。そしてそのまま陸は自分のグラスにも注いだ。私もついであげたかったのに。
「……乾杯」
一気に飲む。陸の喉仏が動く。ゴクリゴクリと、陸の喉が鳴る……。
空になったグラスにすかさずビールを注いであげる。陸が遠慮しようとしたが、無視だ無視。
「私も陸に……」
動く喉仏……。唇に液体を受け止めててらりと輝く…。昨夜私を受け入れた唇…
「陸に……注ぎたい」
猪瀬が目を見開いた。
『今!?何で今!?つい先程まで激怒してましたよね!?』内心でそう言ってるのが分かる。猪瀬は情緒に欠けるな、この風雅な時間を理解出来ないとは。憐憫の情を込めて猪瀬を見ると『理解出来なくて結構です!』と見返してきた。番の良さも分からないとは、猪瀬もまだまだ幼いな
さしつさされつ……私と陸はもう、新婚夫婦だ。
「このビール 本当に美味しいですね。知らないラベル……。」
「ああ、うちの契約農家で麦から作ってもらっている」
陸に褒められた。
番のいるαどもが、番の為に稼ごうとするする行為を理解出来なかった。だが、陸に出会った今、共感するものがある。番に最上の物を与えたい、それがαの本能だ。そしてそれが受け入れられた時、最上の喜びを感じるのだ
「……陸、どうした?」
陸がテーブルの上の料理を見たあと、スマートウォッチを擦った。
ここに並ぶ料理の何処に、コンちゃんとやらを思い出すきっかけがあったのか。
君はなぜこんなにも私の感情を翻弄するのか
陸が首を振った。誤魔化すように、猪瀬に声をかけた
「このビール、ホント美味いっすね。猪瀬さんもどうですか?」
「「「「「………………」」」」」
猪瀬が恐る恐る私を見た。
私と陸の間に入った異物。だが……
「猪瀬も飲むといい」
猪瀬が注がれたビールを疑わしそうに見つめる
安心しろ、それは単なる高アルコールビールなだけだ。陸がしているスマートウオッチを奪い取る為にも、適度に酔わせなければ。
このスマートウォッチは取り外しに暗証番号が必要だ。無理矢理奪い取られると回路をショートさせる機能もある。
猪瀬がアルコールを一気飲みした。そして、味を確認して安堵のため息を着いた。お前なんぞに飲ませる訳が無かろう
陸と猪瀬が酌をしあう
……本来、そこは私の場所だったのに……
猪瀬を見ると、ヤツは私を恨めしそうに見てきた。『貴方が言ったんです!』
……分かって入るが不快なんだよ。
ため息をつく。
目的は陸に気付かれないようにスマートウォッチを差し替える事だ。その為には陸から暗証番号を聞き出さなけらばならない。
アルコールが回っても陸は私には吐かないだろう。可能性があるのは宮下、次点で猪瀬だ。これ以上、宮下に懐かせるわけにはいかない。ならば猪瀬に任せるしかないのだ
さしつさされつつ……陸がだいぶ酔ってきたようだ。
「アルコールフリーとなっていても完全にゼロという訳ではないから、少し回ったかな?気をつけるように。陸はアルコールに弱いんだな。私がいない所では飲むなよ」
「んぁ?」
……んぁ
んぁ
んぁ
私の肩にもたれかかる番が、『んぁ』
深呼吸して理性を総動員させて言う
「分かった?」
「は~い」
………………いや、可愛すぎだ。
警戒心がかなり薄れている。
なのに……酔いつぶれてもなお、スマートウオッチを撫でるの、君は。
「そのスマートウオッチがそんなに大事か?」
妬心のあまり、尋ねる声も低くなる。
「うん、繋がってるって感じる……」
………
「陸」
威圧の籠もった声に皆がビクりとするが、陸には届かない。
「あ、青島?」
「コンちゃん……ひどいよ…………」
フォローしようとした宮下の声に陸が答えた
酷い?
喧嘩でもしたのか?
僅かに心がすく。けれど、その一言を引き出したのは宮下で。
「……宮下」
「はははははい!」
「陸から聞き出せ。私は先に部屋に戻る」
陸がコンちゃんとやらの話をすることはほぼない。ガードが緩くなっている今が絶好の機会なのだ。
託す相手が宮下だと思うと苛立ちを殺しきれないが、それでも……ソイツよりはマシだ
スマートウォッチを睨んだあと、拳を握り部屋を出た。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「陸、ついでくれるか」
グラスを傾けて言うと、にっこりと陸が笑った。
「はい」
ビールが注がれる。そしてそのまま陸は自分のグラスにも注いだ。私もついであげたかったのに。
「……乾杯」
一気に飲む。陸の喉仏が動く。ゴクリゴクリと、陸の喉が鳴る……。
空になったグラスにすかさずビールを注いであげる。陸が遠慮しようとしたが、無視だ無視。
「私も陸に……」
動く喉仏……。唇に液体を受け止めててらりと輝く…。昨夜私を受け入れた唇…
「陸に……注ぎたい」
猪瀬が目を見開いた。
『今!?何で今!?つい先程まで激怒してましたよね!?』内心でそう言ってるのが分かる。猪瀬は情緒に欠けるな、この風雅な時間を理解出来ないとは。憐憫の情を込めて猪瀬を見ると『理解出来なくて結構です!』と見返してきた。番の良さも分からないとは、猪瀬もまだまだ幼いな
さしつさされつ……私と陸はもう、新婚夫婦だ。
「このビール 本当に美味しいですね。知らないラベル……。」
「ああ、うちの契約農家で麦から作ってもらっている」
陸に褒められた。
番のいるαどもが、番の為に稼ごうとするする行為を理解出来なかった。だが、陸に出会った今、共感するものがある。番に最上の物を与えたい、それがαの本能だ。そしてそれが受け入れられた時、最上の喜びを感じるのだ
「……陸、どうした?」
陸がテーブルの上の料理を見たあと、スマートウォッチを擦った。
ここに並ぶ料理の何処に、コンちゃんとやらを思い出すきっかけがあったのか。
君はなぜこんなにも私の感情を翻弄するのか
陸が首を振った。誤魔化すように、猪瀬に声をかけた
「このビール、ホント美味いっすね。猪瀬さんもどうですか?」
「「「「「………………」」」」」
猪瀬が恐る恐る私を見た。
私と陸の間に入った異物。だが……
「猪瀬も飲むといい」
猪瀬が注がれたビールを疑わしそうに見つめる
安心しろ、それは単なる高アルコールビールなだけだ。陸がしているスマートウオッチを奪い取る為にも、適度に酔わせなければ。
このスマートウォッチは取り外しに暗証番号が必要だ。無理矢理奪い取られると回路をショートさせる機能もある。
猪瀬がアルコールを一気飲みした。そして、味を確認して安堵のため息を着いた。お前なんぞに飲ませる訳が無かろう
陸と猪瀬が酌をしあう
……本来、そこは私の場所だったのに……
猪瀬を見ると、ヤツは私を恨めしそうに見てきた。『貴方が言ったんです!』
……分かって入るが不快なんだよ。
ため息をつく。
目的は陸に気付かれないようにスマートウォッチを差し替える事だ。その為には陸から暗証番号を聞き出さなけらばならない。
アルコールが回っても陸は私には吐かないだろう。可能性があるのは宮下、次点で猪瀬だ。これ以上、宮下に懐かせるわけにはいかない。ならば猪瀬に任せるしかないのだ
さしつさされつつ……陸がだいぶ酔ってきたようだ。
「アルコールフリーとなっていても完全にゼロという訳ではないから、少し回ったかな?気をつけるように。陸はアルコールに弱いんだな。私がいない所では飲むなよ」
「んぁ?」
……んぁ
んぁ
んぁ
私の肩にもたれかかる番が、『んぁ』
深呼吸して理性を総動員させて言う
「分かった?」
「は~い」
………………いや、可愛すぎだ。
警戒心がかなり薄れている。
なのに……酔いつぶれてもなお、スマートウオッチを撫でるの、君は。
「そのスマートウオッチがそんなに大事か?」
妬心のあまり、尋ねる声も低くなる。
「うん、繋がってるって感じる……」
………
「陸」
威圧の籠もった声に皆がビクりとするが、陸には届かない。
「あ、青島?」
「コンちゃん……ひどいよ…………」
フォローしようとした宮下の声に陸が答えた
酷い?
喧嘩でもしたのか?
僅かに心がすく。けれど、その一言を引き出したのは宮下で。
「……宮下」
「はははははい!」
「陸から聞き出せ。私は先に部屋に戻る」
陸がコンちゃんとやらの話をすることはほぼない。ガードが緩くなっている今が絶好の機会なのだ。
託す相手が宮下だと思うと苛立ちを殺しきれないが、それでも……ソイツよりはマシだ
スマートウォッチを睨んだあと、拳を握り部屋を出た。
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