最上位αの初恋

認認家族

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陸と時間差で風呂から戻ってきた私の顔を見て、千葉があからさまに顔を顰めている。
 ベンチで耽っていたのが分かっているのだろう

 お前も運命と出会ってみればいい。私の事を笑ったりなど出来なくなる。

「俺は運命には出会いたくないな……」
 察した千葉がポツリと呟いた。

 ……まあ、な。
 現象だけで言うなら、
 冷酷、感情が無いとまで言われた私をここまで変えたのだから番というものに恐慌してもおかしくはない。

 だが、この多幸感……体験しなければわかるまい。そして、体験してしまえばこの麻薬から逃げる事は不可能だ。

 幸せな気分のまま陸を見つめ…舌打ちしてしまった。
 陸はぼんやりと窓の外を見て、時折、スマートウオッチを撫でてる。無意識のようだ。
「陸」
 またもコンちゃんとやらに思いを馳せているのだ。咎める様な声が出てしまい陸に警戒されてしまった。なんとか声を和らげて続ける


「陸、どうかしたのか」

「あ、いえ……。海がきれいだな、と。」

「そうだな。一週間あるし、堪能しろ」

「…………はい」

 まただ、また、スマートウオッチを触る。私といるのに
 運命の私といるのに、そんなΩに気を取られるなんて。イケズだね。そんな陸には罰を与えよう。
 たった一瞬で私を天上から地獄に落としたのだから。
 そんなΩの事なんて考える余裕、奪ってあげる

「陸、すぐ夕飯だ。ここは海鮮が美味しい。楽しみにしていろ。酒がすすむぞ」

「はい」

 陸に言いながらも千葉に視線をやる。陸だけではなく千葉へのメッセージも込めていた。『陸を潰すから、その間にスマートウオッチをさしかえろ』
 千葉が目で了解と伝えてきた。


陸が着用しているスマートウオッチはΩの首輪同様、暗証番号でしか外れない仕様だ。
コンちゃんからのプレゼントかは不明だが、私が与えた物以外に愛おしそうに触れてはならない。差し替える、それ一択だ。
私は暗示能力が高い。千葉や猪瀬などの上位αは難しいが、下位αであれば軽くアルコールを飲ませた上で暗示をかける事は容易である。暗証番号を聞き出して陸のスマートウォッチを奪うことくらい問題ない。
だがそれでは罰にはならない。
 陸にはそのΩのことなど考えられないくらいになってもらう
 そうだな。強引に飲ませるならベク杯が向いているだろう。
 陸には天狗杯。
 陸はどう、天狗杯の鼻に触れるのだろうか。少しだけ骨ばった男の子の手でどう……アレを…………

 千葉が『え?今?』という顔で私を見た。
『今のやり取りの中の何処にそんな要素が?マジか?』

 そんな目で見てくる。

 うるさい。 お前もさっさと運命と出会え。そうすれば私の気持ちがわかる。運命が隣にいればいつでもスタンバイ状態になるということを。

「少し私は席を外す」
「「「「「「…………………………………………」」」」」」
 陸以外には通じたようだ。
 なんとも言えない目を向けられた
 …………………………………………
 うっさい。貴様ら全員さっさと運命に出会え。


夕飯は予定より早くスタートさせた。
 乾杯はベク杯で行った。あの飲み切らないと卓上におけないぐい呑だ。
 湯上がり空腹の陸に一気飲みはかなりくるはずだ。ちょこは天狗だ。容量がもっとも大きい。
 警戒されないように、ちょこはアミダクジで陸自身に引かせるようにした。
 皆で車座になって、紙に線を適当にかいて、線の下端にお猪口の種類を書いて折り返して隠して、各自、線の上端に適当に記名した後に各々ニ本ずつ線を更に加えていった。
 先ずは陸。
「宮下は何処に記名するの?」
「俺はここ」
「じゃあ、俺は宮下の隣にする」
「「「「…………」」」」
 陸、君は宮下の隣がいいの。私では無く他のオスの隣に名前を並べるの
「きょ、京極さま」
宮下がひきつった笑いを浮かべる。
「いいから書きなさい」
腸が煮えくり返るとはこの事か。
震えながら宮下が書いた字を見て陸がけらけらと笑った。
「きったねぇ字~」
私にはめったに見せてくれない 屈託ない笑顔を 宮下には向けるの。
酷いね、陸………………




~~~~~~~~
ブーメラン、ブーメラン♪
千葉さん
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