最上位αの初恋

認認家族

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別荘の中は大幅にリノベーションされていた。
 もともと大半がツインルームで構成されていたのだが、壁が取り払われ、皆が一室で寝れるようなっていた。陸と同室で眠りたかったのだが、それが実現した際自分が陸を襲わずにいられるか自信はあまり無い。かと言って私以外の誰かが陸と同室になれば私はそのオスを許す事が出来ない。
 この間取りは猪瀬がその辺りを考慮した結果だな。これならば、浴室も安心だろう。
 荷物だけをおき、そのままリビングへと移動した。
 陸(の手づくりジャム)を味わいたい

 陸は生真面目な性格だ。
 猪瀬に脅され渋々参加する事になったとはいえ、今回の旅行にも給料は発生している以上給仕係を全うしようと陸はオススメの菓子類をもってきていた。
 チラリと見ると、猪瀬や千葉、参加者の好む茶葉を何種類も持ってきている。

 陸が他のオスなんかにサーブする姿は見たくない。メイドもいるのだからと思う一方でいそいそと従事するかわいい陸を見ると止める事も出来ない。

 陸が私の前にスコーンとイチゴジャムをおいた。
 他のものはブルーベリー、陸は不思議な色のジャム。……私だけ特別に私の好物のイチゴジャム。私だけ。手作りのイチゴジャム。
 ……美味しい。これ程旨い食べ物がこの世に存在しようとは。

 感謝を込めて陸を見つめれば、陸は懸命に
 スコーンにジャムを塗りつけているところだった。

「陸のジャム、面白い色してるな」

「カボチャで作ったんです。好き嫌いあると思うので、小皿にも用意しました。皆さんもおためしください」

 ソレも陸の手作りか。パクリと陸の指ごとスコーンを食べた。

「わ!」

 歯を指先にあてると、陸がぴくんと反応する。
「どうした、陸?」
 素知らぬ顔で尋ねてみる
「いえ…………」
 うん、かわいい。

「美味いな………」
 ジャムも陸の指も。舌先で陸の指を舐め取りたい衝動を押さえて言うと陸が嬉しそうに言う

「ありがとうございます。皆様もどうぞ」

 猪瀬が恐る恐る私を見る。
 一般的に番のいるΩの手料理を食べる愚かαはいない。だが、Ωがホストとして招いたゲストをもてなす時などは別で、食べない事が番のαに対する非礼になる。

「ああ、陸の手作りだ。遠慮なく
「「「「…………」」」」
 食べなさい、ではなく、喰えと言った事で私が込めた意味を感じ取ったのだろう

「お、俺、ブルーベリーが好きなので。」
「そうそう、なんか、今日のは格別に美味しいなぁ」

 皆、ブルーベリーに手を伸ばしていく。
 それが正解だ。
 私の番の手料理を食べようなんて百万年早い。
「嬉しそうだな、陸」
 やはり、私にしか食べて欲しく無かったのだ。それなのに空気を読んで…番の健気さに涙する。

「はい。ブルーベリーがいつものと違う事に気がついて貰えて光栄です。作ってきた甲斐がありました!」
「………………」
「「「「…………」」」」

 …………りく。
 君は本当に私を翻弄するね。

 猪瀬達は私をチラチラを盗み見ながら食べ続ける。今更食べるのを止めてしまえば陸が凹む。陸を傷つけるわけにはいかないのだ。だから叱責は出来ない。
 だが…………ああ不愉快だ。他のオスが陸を食べている…。

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