最上位αの初恋

認認家族

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「青島の叔父、青島圭吾が青島に接触しようとしています」
「……そうか」
 実父にネグレクトされた陸。叔父に殴られて骨を折った幼い陸。それにも気が付かず数日放置した家族。
痛い、それすら言えない環境だったのか、それとも痛いと言っても黙殺されてしまう環境だったのか
 ねぇ、陸。
 何故君はなの?
 義父の会社を継ぎたいというくらいだ。二人の仲は悪く無い。けれど義父の戸籍に入らなかった。
 ねぇ、君がA1で寝落ちしている時、時折魘されていることを知っているよ。
『ごめんなさいごめんなさい』そう謝っている。相手は陸の兄、累だったり実父だったり。累の時は只只謝るだけだけど、実父の時はまるで身を守るように自分を抱きしめて謝罪する。
 なのに、何故青島の姓なの。

『大丈夫、 一人じゃないよ、そばにいるよ。』
 陸、それは君が言われたかった言葉ではないの?
 何もない関係よりも血が繋がっていたほうがまだ確かな関係だと思っているの
 確実な鎖…
 だから、青島でいるの

 ブブブ、ブブブブブブブ、ブブ

 陸が魘されると、スマホが特殊な振動をする。そして陸が穏やかな顔になる。
 ねぇ、陸。
 ソレはコンちゃんとやらが君を思ってインストールしたアプリ。『いつでも寄り添っているから。』そんなメッセージでも込められているのか
 君は……番という鎖を得たらそれを手放せない。番という鎖を誰よりも望んでいる。そばにいるしかない関係。
 ……陸、やっぱり君はΩになるべきだ。私のΩに。

「いかがなさいますか」
 猪瀬の声で、回想を終える。
「陸と同じ目にあわせろ。壊れるまで繰り返せ。」
 必要なのは青島の血、血縁。だから見逃してやっていたのに、害虫の分際で陸に接触しようとするとは。ならば、陸の痛みを体験するがいい、永遠に。虫けらなど、私と番うまで存在していればいい。

「…………実父はどうなっている?」
「青島には興味がないようです。青島累には時折面会していますが……」
「…………」
妻に離婚された原因が陸にあると逆恨みする父親。自分の兄に我が子が殴られていても守らなかった男など、妻からしたら見捨てて当然だ。陸が責任を感じる必要などない。けれど、恨み節を聞かされ続け、累には愛情を注ぐ実父をみて陸は何を思ったか。おそらく、それすらも実父の復讐なのだろう。『お前が累のような子であれば可愛がったのに。俺は子供に愛情を注げる。俺がお前の存在を無視するのはお前に欠陥があるせいだ』
屑だ、実父も叔父も。自分にとっての価値だけで要不要を線引きする
 陸、君がしがみついている血縁なんてそんなものだ。
 なんの意味もない。
 もっと確実なモノを君にあげるから……


「青島の叔父ですが、壊れました。現在精神科病棟に入院しています」
 日常生活を送っている最中に突然暴行を受ける、骨折が治り次第また予告なく暴行を受けるのだ。通勤時間や競馬場、はてや自宅や職場内でも。心休まる時は骨折の痛みに呻いている時位なのだ。疲弊もするだろう。
「そうか。早かったな…」
 もう少し 味わわせたかったが、そんなものなのかもしれない。弱きに強く強きに弱い人物など、自分が 狩られる立場になった途端 壊れるものなのかもしれない。
 加減をミスったか。強いものばかり しか知らない我々ではなく、千葉あたりに頼めば良かったのかもしれない。やつの部下ならば 弱きものを生かさず殺さず、 真綿で首を絞めるように苦しめることが可能だったろう
 あの男は幼い陸の恐怖を少しでも味わうべきだ。倍以上の体躯のものに殴られる恐怖を。
 そのような者の養子縁組をされそうになる恐怖を。
 …………今までやつが無事だったということはコンちゃん とやらはそういったことに興味がないのだ。私の方が、私の方が陸を大事にしている。
ヤツが二度と陸の前に現れないようにしてあげたのだから。
ねぇ、陸
だから、私を選んで。
そんなΩなんかよりももっと強固な契約を結んであげるから。
無関心……
君が最も恐れるソレを、最も遠ざけてあげれるのは私だから。

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