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2-私の番に婚約者がいる?
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「あれは……」
美しい声でキャラキャラと笑う。私の番へとふらふらと吸い寄せられていく。
私の細い声を聞き取った猪瀬が答える。
「青島陸です。経済学部一年」
「陸……」
ああ何て君にふさわしい名前だ。 大らかで寛大な心を持つものになってほしいという親の想い、だから君は私を癒してくれたのか。だから君は私を癒せるのか
私の声に番が振り向いた。驚いたその顔も愛らしい。そのまま手を伸ばそうとして猪瀬が邪魔をした。
「貴嗣様!」
はっとする。そうだね。私は君が私の運命だとわかっているけれど、君はまだ気がついていないようだ。すこし寂しいけれど、君の速度に合わせてあげる。
「青島陸さん、今、私達は仕事の補佐をしてくれる人を求めています。あなたをリクルートしにきました」
猪瀬が周囲に聞こえるように声をはらして言う。
番の顔が曇る。なぜ?私のそばにいたいと思わないの?仕事の依頼と言ったから?番と言えばよかったのか?
「俺……私程度の能力では皆様にご迷惑をかけてしまうのがオチかと。どのような経緯かは存じませんが、もっと相応しい方にご依頼されては?」
陸は私が運命だと気が付いていない。それどころか、私から離れたいと言っている。なぜ?いや、今はそんなことを言っている場合ではない。陸をなんとか引き留めなくてはいけない。
「辞退されるのは珍しくて、余計に陸にお願いしたくなったな。」
番がピクリと震えた。
「光栄です。お…私でお役に立つならば……」
なんだ。やはり私のそばにいたいのではないか?陸は小悪魔だな。私を翻弄するのだから
「陸のこの後の予定は?」
「このままここでフランス語の受講ですね」
私の傍にいたがってくれた陸のために、私もフランス語の講義を受けるとしようか。
「そう、では私も受けていこう」
「貴嗣様。それは…」
猪瀬がまた私を止めた。ため息をつきたくなる。お前はまだ運命に出会ってないから、だからそんな風に止めてくるのだ。
それでも猪瀬が目で訴えてくる。今はおやめくださいと。
猪瀬は常に私の利益を考える。私を止めるなら何かがあるのだろう。仕方がない。ため息が出た。
「分かった。陸、授業が終ったらA1においで。それとそこの……」
「はいっ西野と申します!」
先ほどまで私の番の笑顔独占していたオス。私の番に対して好意を示している憎らしいオス、私よりも長く陸と過ごしてきたオス
「西野は陸と親しいのか」
そう問い質すと西野が答えた。
「陸とは…いえ、青島とは友人として親しくしております。学内では現時点では私が一番親しいかと」
友人としてを強調してくるか?私のライバルではないと言いたいのだな。まあ当然だ。私の番がこのような男に興味を示すはずがない。とは言え私よりもこの男のほうが私の番に詳しいのは確かだ。仕方あるまい。
「西野は授業はないな。このまま私達と……その弁当を食べ終えたら、私達が借り上げているA1に来なさい」
「はいっ」
借り上げているA1に戻ると猪瀬が陸についての情報を報告してきた。
「まだ多くは分かっておりませんが。現在一人暮らし。両親は存命ですが、離婚し、母方に引き取られました。現在、その母は再婚をしておりますが、青島は旧姓…実父の姓を名乗っています。5歳差の兄が一人います。両親兄義父共にβです。兄の青島累はβですが、鷹司家の長男に番認定されているようです。現時点で判明していることは以上です。」
「そうか。ご苦労」
青島、は、旧姓か。実父に対して思い入れがあるのかもしれない。
数分して西野がやってきた。
「陸について教えてくれ。」
私の番について他の男から聞かねばならないのは癪ではある。しかし、これは必要なことなのだ。屈辱感はあるが、致し方あるまい。今後巻き返せばいいのだ。
陸、待たせてしまった私を許してくれるよね?
「青島は現在一人暮らしです。母親と義理の父の話は時々出るので仲悪くないと思います。実父の話は一切聞いたことがありません。もしかしたら何がしかの軋轢があるのかもしれません。」
しかし、陸は実父と何があったのだろう。わざわざ旧姓を名乗り続けているのに…
なんてかわいそうなんだ。あんなに柔らかい笑顔を浮かべる子に。
「それと、り、青島には婚約者がいるみたいです。」
「私の番に婚約者だと!?政略結婚か!?」
ならば陸の親とはいえ許しはしない
「いいえ、違うようです。青島がその婚約者に惚れていて将来を誓い合っているようです。」
ぐ…苦しげな声が聞こえた。西野と猪瀬が床に伏している。私が咄嗟に怒りのあまりに威圧を放ってしまった為だ。
私の番が私以外の者と婚約している。さらに私の番がソレに惚れている、だと?
「婚約者についての情報は?」
「それが青島は…それについては答えてくれないんです。他のことに関しては結構答えてくれるのですが。」
「西野は陸について調べているのか?」
「一般的にな範囲までです。」
「そうか」
その一言で少し安堵した。西野は陸に邪な思いをいだいてはいない。地位を有するαは友人となるものの身辺調査はするが、利害関係の有無を調べる程度で深堀はしない。ただ番となるものに対しては別だ。番をすべての脅威から守るために周囲の人物の過去まで調べるのがアルファだ。『もしかしたら何がしかの軋轢が…』その程度で留めて調べていないのであれば西野にとって陸は本当に単なる友達なのだ。
「ただ、あまりにもコンちゃんに関しては情報婚約者に関してはあまりにも情報をくれないので、興味本位で調べようとしたことがあります。ですが、全く痕跡がつかめなかった。」
西野建設の長男。それなりには知られている会社。それが興味本位とはいえ調べても何も出なかった相手…。
「そうか。報告、感謝する。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ただし、イケメンに限る!
この言葉は真実だ!
ふつ~に考えて、初対面の人に勝手に付き合ってる設定?(番認識とはそういう意味になります)されたら怖い……し、キモい。
陸はふつ~にガハハと笑っていたのにフィルターがかかって可憐に笑っているになる。
……やべーヤツ
が京極様は最上位α、眉目秀麗、文武両道の上流階級
『ただし、イケメンに限る!』
世の真理なり……
美しい声でキャラキャラと笑う。私の番へとふらふらと吸い寄せられていく。
私の細い声を聞き取った猪瀬が答える。
「青島陸です。経済学部一年」
「陸……」
ああ何て君にふさわしい名前だ。 大らかで寛大な心を持つものになってほしいという親の想い、だから君は私を癒してくれたのか。だから君は私を癒せるのか
私の声に番が振り向いた。驚いたその顔も愛らしい。そのまま手を伸ばそうとして猪瀬が邪魔をした。
「貴嗣様!」
はっとする。そうだね。私は君が私の運命だとわかっているけれど、君はまだ気がついていないようだ。すこし寂しいけれど、君の速度に合わせてあげる。
「青島陸さん、今、私達は仕事の補佐をしてくれる人を求めています。あなたをリクルートしにきました」
猪瀬が周囲に聞こえるように声をはらして言う。
番の顔が曇る。なぜ?私のそばにいたいと思わないの?仕事の依頼と言ったから?番と言えばよかったのか?
「俺……私程度の能力では皆様にご迷惑をかけてしまうのがオチかと。どのような経緯かは存じませんが、もっと相応しい方にご依頼されては?」
陸は私が運命だと気が付いていない。それどころか、私から離れたいと言っている。なぜ?いや、今はそんなことを言っている場合ではない。陸をなんとか引き留めなくてはいけない。
「辞退されるのは珍しくて、余計に陸にお願いしたくなったな。」
番がピクリと震えた。
「光栄です。お…私でお役に立つならば……」
なんだ。やはり私のそばにいたいのではないか?陸は小悪魔だな。私を翻弄するのだから
「陸のこの後の予定は?」
「このままここでフランス語の受講ですね」
私の傍にいたがってくれた陸のために、私もフランス語の講義を受けるとしようか。
「そう、では私も受けていこう」
「貴嗣様。それは…」
猪瀬がまた私を止めた。ため息をつきたくなる。お前はまだ運命に出会ってないから、だからそんな風に止めてくるのだ。
それでも猪瀬が目で訴えてくる。今はおやめくださいと。
猪瀬は常に私の利益を考える。私を止めるなら何かがあるのだろう。仕方がない。ため息が出た。
「分かった。陸、授業が終ったらA1においで。それとそこの……」
「はいっ西野と申します!」
先ほどまで私の番の笑顔独占していたオス。私の番に対して好意を示している憎らしいオス、私よりも長く陸と過ごしてきたオス
「西野は陸と親しいのか」
そう問い質すと西野が答えた。
「陸とは…いえ、青島とは友人として親しくしております。学内では現時点では私が一番親しいかと」
友人としてを強調してくるか?私のライバルではないと言いたいのだな。まあ当然だ。私の番がこのような男に興味を示すはずがない。とは言え私よりもこの男のほうが私の番に詳しいのは確かだ。仕方あるまい。
「西野は授業はないな。このまま私達と……その弁当を食べ終えたら、私達が借り上げているA1に来なさい」
「はいっ」
借り上げているA1に戻ると猪瀬が陸についての情報を報告してきた。
「まだ多くは分かっておりませんが。現在一人暮らし。両親は存命ですが、離婚し、母方に引き取られました。現在、その母は再婚をしておりますが、青島は旧姓…実父の姓を名乗っています。5歳差の兄が一人います。両親兄義父共にβです。兄の青島累はβですが、鷹司家の長男に番認定されているようです。現時点で判明していることは以上です。」
「そうか。ご苦労」
青島、は、旧姓か。実父に対して思い入れがあるのかもしれない。
数分して西野がやってきた。
「陸について教えてくれ。」
私の番について他の男から聞かねばならないのは癪ではある。しかし、これは必要なことなのだ。屈辱感はあるが、致し方あるまい。今後巻き返せばいいのだ。
陸、待たせてしまった私を許してくれるよね?
「青島は現在一人暮らしです。母親と義理の父の話は時々出るので仲悪くないと思います。実父の話は一切聞いたことがありません。もしかしたら何がしかの軋轢があるのかもしれません。」
しかし、陸は実父と何があったのだろう。わざわざ旧姓を名乗り続けているのに…
なんてかわいそうなんだ。あんなに柔らかい笑顔を浮かべる子に。
「それと、り、青島には婚約者がいるみたいです。」
「私の番に婚約者だと!?政略結婚か!?」
ならば陸の親とはいえ許しはしない
「いいえ、違うようです。青島がその婚約者に惚れていて将来を誓い合っているようです。」
ぐ…苦しげな声が聞こえた。西野と猪瀬が床に伏している。私が咄嗟に怒りのあまりに威圧を放ってしまった為だ。
私の番が私以外の者と婚約している。さらに私の番がソレに惚れている、だと?
「婚約者についての情報は?」
「それが青島は…それについては答えてくれないんです。他のことに関しては結構答えてくれるのですが。」
「西野は陸について調べているのか?」
「一般的にな範囲までです。」
「そうか」
その一言で少し安堵した。西野は陸に邪な思いをいだいてはいない。地位を有するαは友人となるものの身辺調査はするが、利害関係の有無を調べる程度で深堀はしない。ただ番となるものに対しては別だ。番をすべての脅威から守るために周囲の人物の過去まで調べるのがアルファだ。『もしかしたら何がしかの軋轢が…』その程度で留めて調べていないのであれば西野にとって陸は本当に単なる友達なのだ。
「ただ、あまりにもコンちゃんに関しては情報婚約者に関してはあまりにも情報をくれないので、興味本位で調べようとしたことがあります。ですが、全く痕跡がつかめなかった。」
西野建設の長男。それなりには知られている会社。それが興味本位とはいえ調べても何も出なかった相手…。
「そうか。報告、感謝する。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ただし、イケメンに限る!
この言葉は真実だ!
ふつ~に考えて、初対面の人に勝手に付き合ってる設定?(番認識とはそういう意味になります)されたら怖い……し、キモい。
陸はふつ~にガハハと笑っていたのにフィルターがかかって可憐に笑っているになる。
……やべーヤツ
が京極様は最上位α、眉目秀麗、文武両道の上流階級
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