最上位αの初恋

認認家族

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1-番との出会い

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「貴嗣様、どちらへ?」
幼馴染兼部下の猪瀬が尋ねた。
「図書館だ」
「は?」
「図書館だ。残りはお前達で回せ」
理解出来ないといった顔をした猪瀬をおいて出ていく。
αが多いこの大学では希望者に有料で部屋を貸し出している。αは優秀だ。学生ではあるが、事業を起こして働く者や家業の一部を担っている者もおり、講座の合間合間も無駄にせずに働くために部屋の貸し出しが行われている。京極グループの長男である私もまた役職持ちで決裁しなければならない事が多々ある。今どき書籍のほとんどは電子で手に入る。仮に電子化されていない希少本でも、側近達に命ずれば良いだけだ。返却が必要などと時間を奪われる図書館に私が赴く必要など本来はあり得ない。
だが、なぜだかわからないが、図書館に行かねばと思ったのだ。
αは獣の特性が強い。第六感は無視すべきことではないのだ

 だが図書館についても何も起きてはいなかった。
借り上げている部屋に戻る気にもならず、でぼんやりと過ごしていると日頃の疲れが出たのか、そのまま寝落ちしてしまった
 母の夢を見た
 αである母親が私の目の前で突然ヒートを起こし、そして見知らぬα男に連れ去られて行った
 行かないで、側にいてよ!
 手を伸ばした記憶はある
 その手は見知らぬ男によって弾かれ、そして……
 そして数日後、虚ろな表情をした母が帰ってきた。
 震えながら伸ばした俺の手を父が叩きを落とす。
 お前などに触れる権利はない、と
 全身が痛い。父が、母が帰って来ない事に苛立った父が俺を殴ったから。『お前のせいだ。お前のせいであいつは奪われた!お前がバースを書き換えたから!』

 そうだ、俺に手を伸ばす権利はない
 俺がこの家を壊したのだから
 伸ばしかけた手をぐっと握る。
 するとその手の上を暖かい誰かの手が包んでくれた
 誰?
 大丈夫、 一人じゃないよ、そばにいるよ。夢現の中、その声がずっと私を支えてくれた。痛みが引いていく…


目が覚めると私のそばには誰もいなかった。でもあれは夢ではない。
 久々にすっきりした寝覚め
 気分が高揚している
 誰かが、優しい誰かが私のそばにいてくれたのだ。
 この充足感、私は出会ったのだ、番に。
 猪瀬に捜索を頼む
 私も浮き足立っていたのだろう、猪瀬への説明が不足していた。そのせいで彼は Ω限定で探していたようだ。そう、バースなど些細な事だが、猪瀬からすれば違ったのだろう
 猪瀬に依頼しつつも私も図書館にずっと通っていた。番との少しでも早い再会を願って。
 私が図書館に通っているのはΩやα界隈にはすぐ知れ渡った。私と、いや京極家と縁を結びたいものは多い
 群がる小物ども、 再会できない私の番。
 苛立ちが限界に達しそうな頃になって、猪瀬が顔写真の一覧を持ってきた
 私は番の顔を見ていない、けれど会えば絶対わかる。そんな自信がある
 猪瀬が多数に渡るので パーティーを開こうと言ってきた。全員を一同に集めればすぐに済みます、と。私もそれに賛成したけれど私の番は現れなかった 
 なぜ?
 君も私と出会った時に感じたはずだ、特別な思いを
 ならば本来ここに来るべきではないのか


 落ち込む私に猪瀬が名簿を見せた。
「本日参加しなかった者たちのリストです。 このリストを順番にあたっていきましょう」
頷く。

 講堂を順番にあたっていく
 3人目だった
 柔らかい日差しを受けて 穏やかに微笑む、私の番がいた
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