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歳をとること
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早朝の散歩を夫と始めて20年ほどになる。よく続いているものだ。
もっとも、夫の定年と同時期に二代目の犬を買ったので、犬との散歩の習慣がそのまま続けられているのかもしれない。だとすると、それほど感心することでもないのだが。
4時半に家を出る。散歩のコースも今まで通りなのに、夫の歩くスピードが遅くなったため、この頃は倍以上の時間がかかってしまう。当然、出会う人も違ってくる。夫は気軽に声をかけて話すので、"まぁこれはこれでいいのかも"と思うようにしてはいるが……。
この間夫が『腹が痛いから歩きは休む』と言い出した
サボリだな、とは思ったけれど、"まあたまにはいいか"と私一人で行くことにした。そうしたら、すごい久しぶりに以前の仲間達と会えた。
でも、皆一様に歩く速度が遅くなっていたのには驚いた。
出会いを喜んだ後
「○○さんは?」と聞いたら
「入院して、もうどれくらいになるかなあ。同じ病院には3ヶ月しかいられないみたいで、とにかくたらい回しらしいよ」
「△△さんは?」
「介護施設に入ったよ」
「□□さんは?」
「2年前に亡くなったんだよ」
「そう……」としか言えず、もう何も聞かずに私はみんなと歩いた。
デパートの壁面のような鏡に、丸まった背中に、前かがみで歩く年寄りの姿が映った。
思わず立ち止まった
「え、私?これが私?」
一年一年、みんな年を取っていく。
私の足の運びにしても、当然遅くなっているのだ。気がつかなかった自分が恥ずかしい。
でも、これも自分。今を見つめつつ、しかし、それを無闇に落胆せず、気持ちは常に立ち止まらず、前を向いて歩いて行こう
もっとも、夫の定年と同時期に二代目の犬を買ったので、犬との散歩の習慣がそのまま続けられているのかもしれない。だとすると、それほど感心することでもないのだが。
4時半に家を出る。散歩のコースも今まで通りなのに、夫の歩くスピードが遅くなったため、この頃は倍以上の時間がかかってしまう。当然、出会う人も違ってくる。夫は気軽に声をかけて話すので、"まぁこれはこれでいいのかも"と思うようにしてはいるが……。
この間夫が『腹が痛いから歩きは休む』と言い出した
サボリだな、とは思ったけれど、"まあたまにはいいか"と私一人で行くことにした。そうしたら、すごい久しぶりに以前の仲間達と会えた。
でも、皆一様に歩く速度が遅くなっていたのには驚いた。
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「入院して、もうどれくらいになるかなあ。同じ病院には3ヶ月しかいられないみたいで、とにかくたらい回しらしいよ」
「△△さんは?」
「介護施設に入ったよ」
「□□さんは?」
「2年前に亡くなったんだよ」
「そう……」としか言えず、もう何も聞かずに私はみんなと歩いた。
デパートの壁面のような鏡に、丸まった背中に、前かがみで歩く年寄りの姿が映った。
思わず立ち止まった
「え、私?これが私?」
一年一年、みんな年を取っていく。
私の足の運びにしても、当然遅くなっているのだ。気がつかなかった自分が恥ずかしい。
でも、これも自分。今を見つめつつ、しかし、それを無闇に落胆せず、気持ちは常に立ち止まらず、前を向いて歩いて行こう
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