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第二章

1ー智則

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大学に入るにあたり、俺は一人暮らしという選択をした
通えない距離ではないが 通学時間がもったいないのだ。
帝都大学には 優秀な学生が集まってる。 主にαだ 。その中で βの俺が上位に食い込むためにはα達の倍は 勉強をしなければならない。
上位に入らなければ 山下教授のゼミに入れない。ゼミに入れないのであれば帝都大に入学した 意味もないのだ。
首席入学はかなったが、その後も上位をキープしたい。

引っ越し当日、兄が偶々家にいて、話しかけてきた。余り兄弟仲は良くないから、珍しいこともあるんだなと、思ってしまった。
「帝都大には、唐澤もいるよ。楽しみだろ」
ニヤニヤしてながら言う。この人もまた、バースの被害者なのだとは思うが、それでも余り好きにはなれない。俺がβと判明したことで生活が変わってしまった。最も、一番生活が変わったのは俺だけど。

「唐澤?」
「薄情だなぁ。由希だよ由希。唐澤由希。由希にぃってお前は呼んでいたな……。」
「…………」

俺がβだと知って態度を変えた人。兄のように、否、兄より慕っていた人。俺がβと判明する前までは優しくて、3歳も下の俺の遊び相手をしてくれた。たかが3歳、されど3歳差。小学生が幼稚園児と遊ぶなんてつまらないだろうに、膝の上に乗せて絵本を読み聞かせてくれた。
一馬の所に遊びにきたのに、俺が纏わりついたから遊んでくれてた。

けれど……
いつの間にかウチに遊びに来なくなった。何でって一馬に泣きながらきいたら、一馬に、お前がβだからだよって怒鳴られた。

信じたくなかった。でも、一馬が言ってることが正しいと分かった。小学校で由希にぃとすれ違っても由希にぃはこちらを一顧だにしなかった。
あの時はショックだった。優しく話しかけてくれる由希にぃしかしらなかったから

兄のせいで、α恐怖症になったものの、由希にぃは大丈夫だった。相手にもされて無かったけど。だけど、いつの間にか由希にぃですら、怖くなった。怯え過ぎて由希にぃを傷つけた。あんなに遊んでくれた兄のような人を!
そして気がついた時には、由希にぃはいなくなってた。

再会したら、俺はちゃんとあの時の事を謝れるのだろうか。
由希にぃは許してくれるのだろうか?

あの小学校でβは異質だった。高級住宅街にある小学校。当然ながらαΩやααの夫婦ばかりで、子供もほぼαで少しのΩ、βは皆無、一二年は数名いても、高学年にもなると皆転校した。当たり前だ、ポテンシャルの高いαが標準装備、それにはβやΩじゃ並大抵のことでは追いつけない。
ただ、Ωは、αにとって宝αの為に存在するものだと両親から教えられるのに対してβは使役物と教えられる。この差は大きい。特に無邪気と紙一重な残酷さをもつ子供時代に、同級生のβへの扱いがどうなるかなんてわかりきっている。下僕や家畜レベルだ。

由希にぃは、それをすることは無かったけれど、αで無かった俺に幻滅して距離をとったのだ。あの環境ならば、そうなってもおかしくはなかったと今なら思う。

色々モヤモヤしていたのに、再会は何ら問題無かった。
10年以上会ってなかったのに、一目で分かった。柔らかい優しい雰囲気。癒やし系。甘やかし系
懐かしさでいっぱいになって、昔に戻ったみたいだった。
「由希にぃ!」





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