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第一章

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智則を知って、俺の世界はかわった。

世界に色がついた
智則に出会う前までこの世界がカラーだということすら俺は知らなかった。
B 級映画をテレビ画面越しに見ている、そんな感じだった。それが普通なのだと思っていた。
食べ物ですら自分にとっては少し離れたところにあって、しょっぱいとかそういうものは分かってもまずいとは思わなかったし、適正な塩分を取っても別に美味しいとも思わなかった。
けれど今は違う。やはり三ツ星シェフの料理は美味しいと思うしジャンクフードは美味しくない。使用している肉の違い、そういったことが分かるようになった


智則と会ってから俺は心を入れ替えた。勉学に励むようになった。だって、安心できる巣を用意するためには金はいくらあっても足りない。
智則には美味しいものを食べて欲しいから、一流のものを身につけさせてあげたいからそうなってくるとお金は大切だ

稼ぐ為に貪欲に貪欲に色々なものを学んだ。
時々本家に赴き、会社の色々な資料を見せてもらった。分からない所は、当主の秘書から説明も受ける。時には当主も同席をしていた。
事なかれ主義だった俺が本家に訪れているのだ。その変化に分家本家親戚筋は戦々恐々としていた。陰湿な嫌がらせも受け始めた。当主の目のかけ方から次代は俺だと認識し始めていた。
俺は正直唐澤家に興味はない
この家を継ぐのが智則にとって一番安全ならば継ぐが、そうでないならこんなにゴタゴタした親戚関係にあの純粋な智則を巻きこむべきではない。
そう思っているのが当主にも伝わったのだろう。
一休み、と当主と共に縁側に移動すると尋かれた

「番ができたか」
「まだ小一だよ、俺は」
「上位αはな、執着先を見つけると変わるんだよ。それまでつまらない世界だったのが、一転する」
「……当主も?」
「私の場合は人ではなかったがな。この家だ」
「……」

それで納得をする。家を世襲にせず、優秀なαに継がせたいというのはそういうことなのだ。
俺が智則を守るために何でもしたいと思うように、当主は唐澤家を存続させるために息子より優秀な者がいればそちらを優先するのだ

「早く大人になってくれよ」

当主はもう60だ。その息子は40。

「…………俺が継ぐとは限らなくない?」

「そうだな継がせたくなるような家にしておくよ。お前の番が安心できる場所にしておけばいいんだろう」

「一族皆殺しにでもしないと無理じゃない?」

「だったらそうしようか。少なくともお前の番を軽視する輩には全て制裁を加えてやろう」

…………
俺も厄介だとは思う。智則への執着はかなりひどいと自覚はある。
だが、当主ほどではない。
家の繁栄の為に、分家を粛清する?

「俺が異常だと思うか?それはまだお前が執着をし切ってないんだよ。お前の執着は俺よりひどくなるだろう。まだ出会ったばかりだろう。番との時の経過と共に執着はどんどん強くなるからな。俺の歳にもなれば、お前が番を失う時には関係者全てを殺戮するだろう」

「……まるで予言だね」

「歴史は物語る、だ。番の為に国を滅ぼしたαなんて列挙に暇がないさ。ところで相手は?いつ番契約するんだ」

「……まだ、3才児だよ」

当主が眉を潜めた。

「?」

理由が分かるのは、その数年後。智則が小学校に入学するときだった。
あの時、当主に理由を聞いていたら、未来は違っていたのだろうか。












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