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救救いは意外な所から現れた。
国税庁だ。
市の監査が入った後も両親は働いてなかった。働いてないから、当然ながら税金なんて納めてない。無収入で子供が二人もいるのだ。むしろ、行政から色々な支援を貰っていた。
当然、近所にやっかまれる。再びチクられたのだろう。マルサとやらがやってきて、箪笥や屋根裏、畳の下まで調べられ、隠していた現金が見つかってしまったのだ。
両親はそれほど頭が良い部類ではなく、すぐにどうやって稼いでいたのかがバレた。
小学生の僕を好事家のもとに送り込んでいたということで両親は児童虐待で逮捕された。両親は僕をシッターさんお願いしただけで、シッターさんが自分たちに内緒で僕に無体な事をしていただけ、息子は私たちにそのことを言わなかったから気が付かなかったと、無罪を訴えていた。
けれど、却下された。僕と妹は児童相談所に保護された。
僕はホッとしていた。
なんで大人が僕に触ったり舐めたりしているのか当時の僕は意味が解らなかったけれど、とても不快で気持ち悪かったから、もうそんなことをしないで済むと言ってもらえて、両親と離れ離れになっても嬉しかった。
妹は違った。可愛い服を買ってもらえなくなって、その元凶の僕を恨んだ。田舎でブランド物のかわいい服を着ていた妹はピラミッドの頂点だったのだ。それが…今やお下がりを着ているのだ。
僕を恨んだのは両親もだ。マルサが入り、両親のメモ書きを発見した捜査官が警察と児相に通報したのだ。そして僕は児相のケアラーに訊かれるがままに答えた。その結果、両親は捕まったのだ。僕が正直に答えなければ両親は捕まることはなかったと妹にも両親にも責められ、当時の僕は自分が悪いのだ。。。と自分を責めた。
今なら、それが言いがかかりだとわかる。
両親は、馬鹿ではあるが商才はあった。僕という商品を効率よく高く回していくかをマネジメントしていた。斡旋業者はヤクザだけあって、そこから紹介される好事家もやはりまともではない者も多かった。つまり加虐趣味がある者もいたのだ。そのため、ディスカウントしてくる客には、傷跡がある状態での斡旋,太い客にはきれいな状態の僕を斡旋していた。そのスケジュール帳を捜査官に見られたのだ。僕が沈黙していたとしてもごまかしようがない状態だった。
スケジュール帳には客の連絡先も載っていた。斡旋業者の中抜き額を知った両親は直接客とやり取りをするようになっていた。そしてそれは当然ながら斡旋業者との契約違反でもあった。このため、客であった好事家のところにも操捜査が及んだ際も斡旋業者は見捨てるだけだった。
両親は契約違反ということで斡旋業者からペナルティーを科された。刑務所の中でなかなかハードな生活を強いられたらしい。それでも違反金の支払いの一割にも満たないため、このまま出所してからも大変なことになると、僕を再び売った。
両親のペナルティ金額は約一億だった。両親と妹の臓器を売ったところでそのような金額にはならない。ある程度肉体労働に従事させたのちに臓器を売る、とういう提案?をされたらしい。世の中にはいろいろな好事家かいるからと。僕の傷跡を見ていた両親は自分がそんな目に合うのは耐えられなかったらしい。
伝手を頼りに頼り、津守というお金持ちの高齢男性に行きつき、僕を売った。
そう、僕はまたも彼らに売られたのだ
津守は、気前よく一億円を前払いした。しかも僕の養育費も出した。けれど、引き取るのはまだ先…僕が成人してからといった。
何故、成人してからなのか…それは行方不明になっても然程問題がないから。体が出来上がっているからそう簡単にこわれないから。
津守の後妻は僕で12人目。以前の妻は行方不明だったり、心臓発作などでなくなっているのだ。十人以上もそんな事が続けば偶然で片づけるには無理がある。
ただ、後妻の家族が警察などに何かを訴えることはなかった。ウチと同じなのだろう。大金と沈黙の引き換えなのだ。
僕を紹介された現妻は自分のリミットを知って青ざめた。青ざめた妻を見て津守はご機嫌になった。嗜虐趣味だけで構成されている津守は恐怖を与えることが出来てご満悦だ。
そして僕は…安堵した。
自分のタイムリミットがあることに。
この先も、僕は客を取り続ける人生しか見えなかった。けれど、高校を卒業して津守に嫁ぎ数年でこの世を去れる。
そう思ったら、気分が楽になった。
自殺する勇気もなかった。気力もなかった僕に、津守は希望を与えてくれた。
タイムリミットがある、そう思ったら、全てが愛おしくなった。
津守は、僕に他者との性的接触を禁じた。感染症になっては困るから。同様に心身の健康を維持するための出費にはいくらでも援助をしてくれた。
僕はそれで弓道部に入ることにした。強いものを折るのが趣味の津守は僕が弓道部に入ったことを悦んだ。心を鍛える部活という点で。
ただ、僕はオメガで力はなかった。だから試合の成績はあまりよくはない。
それでも、この澄んだ空気、道場の静謐さに僕は嵌っていた。
国税庁だ。
市の監査が入った後も両親は働いてなかった。働いてないから、当然ながら税金なんて納めてない。無収入で子供が二人もいるのだ。むしろ、行政から色々な支援を貰っていた。
当然、近所にやっかまれる。再びチクられたのだろう。マルサとやらがやってきて、箪笥や屋根裏、畳の下まで調べられ、隠していた現金が見つかってしまったのだ。
両親はそれほど頭が良い部類ではなく、すぐにどうやって稼いでいたのかがバレた。
小学生の僕を好事家のもとに送り込んでいたということで両親は児童虐待で逮捕された。両親は僕をシッターさんお願いしただけで、シッターさんが自分たちに内緒で僕に無体な事をしていただけ、息子は私たちにそのことを言わなかったから気が付かなかったと、無罪を訴えていた。
けれど、却下された。僕と妹は児童相談所に保護された。
僕はホッとしていた。
なんで大人が僕に触ったり舐めたりしているのか当時の僕は意味が解らなかったけれど、とても不快で気持ち悪かったから、もうそんなことをしないで済むと言ってもらえて、両親と離れ離れになっても嬉しかった。
妹は違った。可愛い服を買ってもらえなくなって、その元凶の僕を恨んだ。田舎でブランド物のかわいい服を着ていた妹はピラミッドの頂点だったのだ。それが…今やお下がりを着ているのだ。
僕を恨んだのは両親もだ。マルサが入り、両親のメモ書きを発見した捜査官が警察と児相に通報したのだ。そして僕は児相のケアラーに訊かれるがままに答えた。その結果、両親は捕まったのだ。僕が正直に答えなければ両親は捕まることはなかったと妹にも両親にも責められ、当時の僕は自分が悪いのだ。。。と自分を責めた。
今なら、それが言いがかかりだとわかる。
両親は、馬鹿ではあるが商才はあった。僕という商品を効率よく高く回していくかをマネジメントしていた。斡旋業者はヤクザだけあって、そこから紹介される好事家もやはりまともではない者も多かった。つまり加虐趣味がある者もいたのだ。そのため、ディスカウントしてくる客には、傷跡がある状態での斡旋,太い客にはきれいな状態の僕を斡旋していた。そのスケジュール帳を捜査官に見られたのだ。僕が沈黙していたとしてもごまかしようがない状態だった。
スケジュール帳には客の連絡先も載っていた。斡旋業者の中抜き額を知った両親は直接客とやり取りをするようになっていた。そしてそれは当然ながら斡旋業者との契約違反でもあった。このため、客であった好事家のところにも操捜査が及んだ際も斡旋業者は見捨てるだけだった。
両親は契約違反ということで斡旋業者からペナルティーを科された。刑務所の中でなかなかハードな生活を強いられたらしい。それでも違反金の支払いの一割にも満たないため、このまま出所してからも大変なことになると、僕を再び売った。
両親のペナルティ金額は約一億だった。両親と妹の臓器を売ったところでそのような金額にはならない。ある程度肉体労働に従事させたのちに臓器を売る、とういう提案?をされたらしい。世の中にはいろいろな好事家かいるからと。僕の傷跡を見ていた両親は自分がそんな目に合うのは耐えられなかったらしい。
伝手を頼りに頼り、津守というお金持ちの高齢男性に行きつき、僕を売った。
そう、僕はまたも彼らに売られたのだ
津守は、気前よく一億円を前払いした。しかも僕の養育費も出した。けれど、引き取るのはまだ先…僕が成人してからといった。
何故、成人してからなのか…それは行方不明になっても然程問題がないから。体が出来上がっているからそう簡単にこわれないから。
津守の後妻は僕で12人目。以前の妻は行方不明だったり、心臓発作などでなくなっているのだ。十人以上もそんな事が続けば偶然で片づけるには無理がある。
ただ、後妻の家族が警察などに何かを訴えることはなかった。ウチと同じなのだろう。大金と沈黙の引き換えなのだ。
僕を紹介された現妻は自分のリミットを知って青ざめた。青ざめた妻を見て津守はご機嫌になった。嗜虐趣味だけで構成されている津守は恐怖を与えることが出来てご満悦だ。
そして僕は…安堵した。
自分のタイムリミットがあることに。
この先も、僕は客を取り続ける人生しか見えなかった。けれど、高校を卒業して津守に嫁ぎ数年でこの世を去れる。
そう思ったら、気分が楽になった。
自殺する勇気もなかった。気力もなかった僕に、津守は希望を与えてくれた。
タイムリミットがある、そう思ったら、全てが愛おしくなった。
津守は、僕に他者との性的接触を禁じた。感染症になっては困るから。同様に心身の健康を維持するための出費にはいくらでも援助をしてくれた。
僕はそれで弓道部に入ることにした。強いものを折るのが趣味の津守は僕が弓道部に入ったことを悦んだ。心を鍛える部活という点で。
ただ、僕はオメガで力はなかった。だから試合の成績はあまりよくはない。
それでも、この澄んだ空気、道場の静謐さに僕は嵌っていた。
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