Ωにうまれて

認認家族

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智則から連絡が入った。

『応援は大丈夫だから、ホテルに戻って試合が終わるのを待ってて下さい』

え?
いやいや、応援の為に飛行機でここまで来たんだよ?
予選は応援させてくれたのになんで。

『ヤダ』

『先輩、お願いいたします。ホテルで大人しくしてて。』

智則が折れないのは珍しい。
けれど、僕だって譲歩は出来ない。僕に残された時間は少ない。智則の応援を出来るのも、今回が最後になるのだから。

『絶対ヤダ。智則今どこ?向かうよ』
…………返信がない。
『いいよ、じゃあ虱潰しにあたっていく』

『そこから二ブロック先すいどう』

慌てて返信したんだろうな。くすりと笑いもれる。
智則は僕の場所をGPSで把握している。僕がお願いをしたんだ。

智則の所に行くと、何故か水浴びしていた。
適度に割れた腹筋が眩しい。髪の毛から滴り落ちる水滴がエロい。
「ど、どうしたの!?」
慌てて近づくと、手で制された。
「それ以上は近づかないで。先輩の香りが移る」
「え……」
智則がそんな事をいうのは初めてだ。
「何かあったの?」
「あったというか……用心です。何度も言うけど、今すぐホテルに戻って鍵をかけて待っててほしい。先輩の香りに反応したαがいる。」

何かと思えば……。
僕のニオイに反応するαなんてごまんといる。けれど僕のネックガードを見て諦めるヤツがほとんどだし、諦めない輩にはスタンガンをお見舞いする。避けられても智則が助けてくれるから、なんの問題もない。

「いつものことじゃん?僕は智則の応援をする。…………これが最後の応援になるから」

智則が痛ましそうに顔を歪める。そんな顔をさせたいわけじゃない

「先輩、最後なんかじゃないよ。試合終わったら話があるって言いましたよね。……でも取り敢えず、余裕のある男って見せたいから今回は折れます。抑制剤と防犯ブザーとスタンガン持って来てますよね?」

余裕のある男……。
笑ってしまう。
「先輩!」
顔を赤くして智則が抗議する
「いや、だって男というより男の子だし。それに、ホントに余裕のある人はそんな事言わないよ」
さらに智則が赤くなる。あぁカワイイなぁ。
…………あと一年。

「大丈夫、スプレーも持ってきているよ。……不安なら抑制剤も飲んでおくから、安心して試合に臨んで?」

目の前で抑制剤を飲んだ

智則は少しだけだけど安心したようだ。近づくと離れるけれど。


智則と分かれて、二階席に移動した。

智則があまりにも心配するので、防犯ブザーを首から下げている。集中して欲しいから。どうせ、僕がΩなのはネックガードとこの容姿でバレバレだしね。

順番待ちの智則を見つめた。
ピンと張った背筋。
僕の心配するより、自分の心配したほうがいいけどね。αどもが下卑た視線を投げかけているのに智則は気がついてない。己に集中し、纏う空気は静謐で、僕は智則が入学してきた頃を思い出していた。




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