Ωにうまれて

認認家族

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なんだろうか、
今日は異常に気分が高揚している。
何かが起こる気がしている。

弓道が好きだ。
『オリンピック競技でもないし、極めても意味がないのでは?』
他のαに遠回しに言われることがある。

だが、将来会社を継ぐことが決まっている俺には箔は必要ない。好きだけを追いかけられる。

団体戦には向かない性格なので、個人での出場だ。
会場にはβがひしめき合っていた。オリンピック競技でもないものに興味を示すαなど、あまりいない。だから、βでも活躍できるのだ。最も、俺のようにもの好きなαはどこにでも存在するから、大会の上位はαで埋め尽くされるだろう。

会場は自然とβとαに分かれていた。
というより、αが一か所にまとまっていたといった方が正しいか。
αはなんだかんだ言って、階級社会の群れ社会。
上位種の俺に挨拶に来て、そのまま周辺にいる。
俺を中心としたいくえかの輪ができる。輪は俺から離れるにしたがって上位中位下位となっていく。
下位にもなると俺から距離があるから気も抜けて、処理相手になりそうなβを物色している。
下位は気楽でいいねぇ、ニヤニヤしながら茂樹がいう。
まぁ、下位がどれを持ち帰ろうとかまわないが、下位同士のマウンティングは見苦しくていただけない。明確な差がないため、威圧の出し合いが長くなるのだ。
俺や茂樹からするとコバエが飛んでいる程度だが、コバエが飛び続けるのは不快だ。
茂樹が、どうもあの男を取り合っているらしいよ、と指をさした。
……ピンとした背筋。立ち姿が美しい男だった。静謐な空気を纏っているというか。。下位たちが食指をのばすのもわかる気がした。
αは所詮獣。性欲に負ける。閉会後ならば問題ないが、開会前からαたちが揉める事態は避けたい。

仕方ない。
神聖な道場を試合を台無しにされては困るので、そのβ男に話しかけた。
「こんにちは」
「……こんにちは」
胡乱げな目を向けられた。だろうね。
俺もお前には全く興味ないんだが……
??
βのくせに、甘い香りがする。心臓をつかまれそうな香りだ。
どういうことだ…?
「君はβだよな?」
「それがなにか?」
「いや、いい香りが…」
痺れた脳でついつい正直にいってしまった言葉に男が反応する。警戒するように離れた。
しまった。
「あ、いや、その…」
まいった、酩酊状態になっている。
男が儀礼的に頭をさげて離れていく。

「博人、どうした?」
「あの男は…?」
ろれつが回らないままに茂樹に尋ねる。
「うん?ああ、個人予選通過した秋葉智則。東京代表…どうした?βに惚れたとかはやめてくれよ、お願いだから」
心配そうにいわれた。
βとαの恋愛はうまくいかない。特に上位種のαともなると、伴侶に多大な執着を持つ。βにはそれが狂気のように見え逃げ出し、αはそれを赦せず監禁などといった過激な行動に出る。行きつく先は無理心中…といったケースが多いい。その点、Ωはある程度αの執着を理解しそして悦ぶ傾向にある。

「アレは無いから安心しろ。」
「いや、その状態で言われても説得力がない」
茂樹が俺の下半身を指指した。
「ああ…これは違うよ。あの男に付いていた残り香だ。」
残り香でこれか。ならば、本体は俺の運命だろう。
「調べる」
茂樹が緊張した面持ちで言った。
嗤いが止まらない。
運命の番に出会った最高位α。
自分がどう変化するのか、愉しみだ。








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