【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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パチっと目をあけると、見慣れた天井……自分の部屋だった
「水、飲むか」
幸人が冷蔵庫から瓶を取り出してくれた。
「ん……」
冷たい……
ごくごくと飲んでいく
「架向、体力測定の結果でてるよ」
スマホを開くと、前回データとともに表になっていた。
……全ての項目で前回数値を下回っている、けれどこれでは……
「αのままだ。俺より肉体的にも上位のαだ」
首を振る。
「いづれ!いづれは変わる!身体能力はちゃんと下がっている!ずっと続けていけば……!」
現にこうやって叫ぶだけでも息が乱れているじゃないか!父さんの変化だって加速度的だった。
だから……!
「かな、お前は偽Ω状態なだけだよ」
偽Ω状態……Ωやβの一部の児童がなる症状だ。Ω化していないのに大人のΩような身体的・心理的症状が現れる状態。αの番になりたいという強い願望が成熟したΩでも無いのに似たような現象をおこさせる。ただ…実際には少しムラムラしたという程度で、ヒートのソレとは比べようもないのだがまだまだ幼い子供には比較も出来ないのだ。……一言で言えば、厨二病。幸人はそう言って、近づいてくる偽Ω状態の女子を撃沈させていた

「……足りないの、か」
「え?」
ヤツのアレをもっと取り入れなければならないのか。それとも十分に取り入れてもなお、俺の抵抗力が強いのか。それはつまり
「足りないのか!?俺の覚悟が足りないのか!だからか!拓也は本気で俺を変えようとしている!なら、俺が受け入れて無いから変わっていかないだけじゃないか!」
奴を受け入れてヤツの番になりたい、それを願わないと駄目なのか!
Ωになりたいという目標なだけだからか!ヤツが気まぐれに何人もビッチングしてきたのに。何で俺だけ!
「かな…」
「……ごめん。取り乱してる。今日は帰ってくれないか。八つ当たりしそうになる」
「……分かった」
部屋を出る幸人の後ろ姿を見つめた。αらしい恵まれた体躯、高校生とも思えない風格……でも、それでも俺に体力でも劣るのだ。俺はどこまでもαで、拓也のフェロモンを取り入れてもなおも上位のαで……


一眠りしてからリビングに行くと父さんと猪瀬さんの笑い声が聞こえた。
………猪瀬さんは、Ωになりかけていた。父さんに近づくために好きでもない俺のフェロモンを飲み続けて、Ωになろうとしていた。
俺の想いは猪瀬さんの想いより劣るのか。こんなにも好きだというのに……

「架向、目が覚めたのか。具合は?」
父さんが心配そうに俺に呼びかける。
「うん、大丈夫」
笑って応えるけれど、父さんは憂い顔だ。……そうだろうな。視界はグラグラするし動くだけで息だって上がっている気がするのにまだ……前年を下回っただけ。身体を書き換えていくというのはこれほど体調が悪くなるのか、これを父さんと猪瀬さんはは耐えたのか、猪瀬さんはこれ程の不調を隠して俺を取り入れ続けたのか。
「架向、余り無理はするな。お前はまだ若い。いづれは……」
猪瀬さんが俺を困ったように見つめる。俺が何をしているか知っていて、大人になれば消える想いだからと、俺をたしなめる
でも……

「猪瀬さん、俺は貴方が好きです」
目を見てはっきりと言った。曖昧になんてさせない。
父さんが、え、いや、とか呟いている。俺が猪瀬さんを好きな事も知っている。けれど、あの一件で諦めたと思っていたのだろう。αの執着がそんなに簡単に消える訳無いのに。
「……架向、俺は……」
「貴方の側にいられる様に、その資格を得る為に何でもする。返事はその時に下さい。」
それまで誰とも番わないで……
言いたかったけれど、その権利はない。だから急ぐしかないんだ。




~~~~~~~~~
更新が遅れていてすみません。作者の中ですでに完結してしまったので気合いが……
継続出来ない人の典型ですね…。

厨二病…
架向、ロミオメールとか打つようになるなよ……。

    
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