【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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春休み、今日も今日とて出社する。
研修と名はついているが、何を持って研修というのだろうか。
部長の下につき仮の決済をしていく。優先順位を決め並べ替えて部長が確認しやすいようにする。
……演技ではなく、マジで辛い。
酔っ払って帰った翌日から、親父によって俺は部署移動させられた。
それまでとは比較にならない位、スパルタな人の下についた。親父の事は尊敬しているけれど世襲には反対のスタンスを取っている人だ。当然ながら、俺に対する風当たりは強い。なんの説明もなく決済をしろと言い、不備のあるものに関しては改善点すら提示されずに再提出を求められる。
俺、まだ高校生よ?
寝不足でクマも酷くて他の社員にはかなり同情されている。

残業しなきゃ全然追いつかない。
俺のせいで業務を滞らせるわけにはいかない
一人で残業していると信輝さんが来た。
「架向、大丈夫か?」
優しい言葉に半泣きで抱きついた。
「うう~辛いよ信輝さん」
信輝さんが頭をポンポンとした。……この人のこれは、俺の髪質とか関係無いんだろうな。ただの親戚の子供を宥めるってだけ
「分かった分かった、俺が処理してやるから……」
再提出をくらったもの達が高速で処理されていく。駄目だった箇所にコメントや代案が記入されていく。
あぁ、こういうことだったのかと自分の知識に偏りがある事を実感させられる。
「も~、信輝さん優秀すぎ。何やってんだか分からないけど、どんどん無くなってくの嬉しい。信輝さんが俺の代わりに全部やってくれればいいのに……」
「こらこら、次代の京極が何言ってんだ。半分とは言わないけど、1割でも理解しようと努力せんか!」
「え~?でも、俺京極なんてデッカイの要らない……。父さん規模位がいい。もしくは夢の配当生活!」
「…………まあ、不動産や株の配当だけで架向なら喰っていけるけどな……。」
軽口を叩きながら、未決済のファイルが処理されていくのを見守る。
1時間もすると、全てが終わった。
「ありがとう~信輝さん。明日も宜しくお願いします!」
「こら、全部人任せにするな」
軽くデコピンされた
「適材適所って熟語知らないの?」
信輝さんがため息をつきながらいう
「お前の適所はどこだよ?」
「そんなの決まってんじゃん?」
猪瀬さんの隣だよ。心の中で言うと更にため息をつかれた
「そうだな……」
外にいた気配が離れる。残業中、誰かしらが様子を見に来ているのは知っている。
さて、それが拓也の手の者なのか違うのかはまだ不明だ。
「さて、帰るか。家まで送るぞ」
「ありがと~」

日曜日の夜、またバーに行った。
そうしてまたぐでんぐでんになる。
「会社行きたくないよぉ~」
管を巻いていると信輝さんが迎えに来る
「架向、泣いたって始まらん。明日も早いんだから、帰るぞ」
「…………はい」
様子を見ていたマスターが言う
「まだまだ子供なのに大変だな。京極の次期って羨望のまとだろうに…実際は苦労してきてんだな…上位α様は違うねって思ってた自分を反省するわ。皆努力はしてんだな」
「まぁ、ね。京極はそれだけ重いから架向が逃げ出したくなる気持ちも分かる。……番様の関係で架向は庶民的に育てられたから余計に京極を重責に感じるんだろうな」
そう言いながら、俺の腕を取って信輝さんがまた車へと運んでくれた。
ネズミはいつ引っかかるのか…

昼休憩を終えてエレベーターを待っていると、たまたま親父と猪瀬さんがやってきた。
エレベーターは一般社員と役職持ちで分かれている。部長補佐?の俺も一応は役職用に乗れるから基本的にはそちらに並ぶ。AI管理がなされているから、混んでいる時は役員が優先されて俺のような下の役職は乗れない時もあるが今回は乗れそうだ。
親父達に列を譲りはするが、皆、一般社員用に並び直す事もない。親父は『私が乗る時は他の者の同乗を禁ずる』とかにはしていない。寧ろ『くだらん』と言い切っているんだろうな。まぁ、その同乗者側がどれだけ鉄の心臓を持っているかで次に乗る乗らないになるんだろうけど。
「久しぶりだね、架向」
「はい、お久しぶりです」
家が隣でも、生活スタイルが異なるから俺が猪瀬さん家に顔を出さなくなると全く合わなくなった。……久しぶりに会う猪瀬さんはやっぱりカッコイイ。自信に満ちた表情と余裕。大人の男性って感じだ。顔に喜色が浮ばない用に全神経を集中させる
「架向、顔色が悪い。寝不足か?」
親父に言われて頷いた。
「こなせないほどの業務量でもあるまいに。…お前に京極は荷が重いか」
「……」
「睡眠が足りないとΩのフェルモンを跳ね返せ無いぞ。ヒートレイプにあったらどうするつもりだ」
「ははは…それも良いかも。ウチの会社のΩなら優秀だし俺の代わりに決済とかしてもらおうかな」
「うちの会社で働くΩはそのようなことはしない。ヒートレイプを仕掛けてくるとしたらパラサイト目的の低俗なΩだろう。そんなのと番ったりしたらあとが面倒だ。お前が望むなら社内でも優秀なΩと見合いをさせるが?」
「……」

『自分で吐けるようになっておけ』
初めて酔いつぶれて帰った日、親父はそう言っていた。寝落ちして再び目を開けるとサイドテーブルには水と薬がおかれていた。そして、翌日には部署移動…
全てを俯瞰する目を持つ親父だ。
親父には、俺が何をしようとしているかバレているのだろう。
だから、これも援護射撃なのだろう。何で親父が協力するのかはわからない。わからないけど…猪瀬さんの前でそんな話をしないでよ。
嘘でも『嬉しい』『お願いします』なんて言えない。そう答えた方が物事が順調に進んでいくってことくらいわかっているけれど…
「まだまだだな。」
親父が、覚悟が足りないと目で言う。自分の感情を切り捨てることすらできないのか、と。
……覚悟はできているさ。でも、好きな人が俺の婚約話に無関心でいるのに冷静でいられるほど俺は自分の心をコントロールできはしない



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おかしいなぁ……短編のはずで、BL祭中には完結すると思っていたんだけどなぁ…

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