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しおりを挟む「青島は無事だ、生命の危機とかではない」
千葉さんが宥める様に言う
「じゃあ何が……あのケダモノがなんかしたのね!?陸は!?またレイプされたの!?アイツを殺す!」
「菫、落ち着つけ!」
「許すんじゃなかった!ケモノなんて何時までたってもケモノなのよ!牙と爪を隠していただけでケダモノはケダモノだわ!」
「菫!架向の前だ!」
菫さんが息を飲んで俺を見る。
「あ、架、架向、違うの違うの……」
弱々しく首を振る。菫さんは千葉さんから何も聞いて無いのか。俺が父さんと親父の関係を知っている事を。
「…菫、架向は既に知っている。俺が話た」
「……そう。でも、ごめんなさい。自分の父親をそんなふうに言われたくないわよね」
泣きながら菫さんが手を伸ばしてきた。俺の頭を撫でる手が震えている……。
「ごめんね。」
ケダモノ、か。
菫さん、ごめんなさい
俺もケダモノだ。
猪瀬さんを傷つけようとしていた。
番契約という檻をかして、それだけでは飽き足らずに子供という鎖まで用意した親父と俺は同じ穴の狢だ
踵を返す菫さんの腕を千葉さんが掴む
「彰、離して。陸の所を迎えに行く。事情は後で聞くわ。一刻も早く陸を…」
「無駄だ。もう半日は経ってる。今更菫が行ったところで…アイツが余計に暴れて青島が更に傷つくだけだ。」
「何を言っているの!今もまだ陸は…!」
俺がいるからだろう、菫さんが口を噤む。続けようとした言葉もわかっている。父さんはいまだに親父に…犯されている
「ああ、今、青島は京極にレイプされている。けれど、菫が行ったところで事態はかわらない。俺にも京極を止める力はない。だから……今の最善は何もしないことだ」
容赦のない千葉さんの言葉に、菫さんが頬をひっぱたいた。
「最低だわ!」
千葉さんが強引に菫さんに口づけをした。誘引フェロモンをわずかに含ませたのだろう、菫さんの目が、わずかにトロンする。
「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて…」
背中をさすられて力が抜けた菫さんは千葉さんに寄りかかった。
多分…そう、この二日間、親父に対して何かをできる者なんていない。ならば、菫さんは夢うつつのままに過ごした方がいい。救い出せない己の無力を嘆き続けるよりも、番の腕の中で曖昧な意識のまま…。千葉さんは恨まれるだろうけど、それだって時がたてば菫さんのためだったって菫さんも認める、それだけの信頼関係があるから。
俺は…
俺は…
二日間、千葉さんの家で過ごした。
千葉さんはずっと菫さんといて、俺を非難するどころか俺にかまう事もなかった。
「こんな事をするなんて最低だわ!」
ここを出る前に挨拶しようと、千葉さんたちの部屋の前に行くと菫さんの金切り声が聞こえた。
「菫のためだったんだ!」
菫さんの同意なく、軽めのヒートに誘導したことだろう
「そんなの望んでない!陸が人身御供になっている時に惰眠を享受していたなんて!私を最低な人間にしないで!せめて気持ちだけでも寄り添っていたかった!同じように苦しんでいたかった!!」
菫さんが泣いている…。
千葉さんが菫菫…と慰めている。本来、番を泣かせた輩を上位αが許すことなどない。
けれど…京極は、親父は千葉さんですら抵抗できないほどの絶対的王者だったんんだ。
ノックもせず、何も挨拶もせず、千葉さんの家を出た。
俺のしでかした事の罪の大きさを思い知る…。
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