【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向30

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家に帰ると、親父がいた
「あれ?今日から出張って聞いていたけれど?」 
「中止した」
親父が嗤った。ゾクリとして後ずさった。
「お前も今日は遅くなるんじゃなかったのか」
「あ…いや、顧問が急用とかで……父さんは?」
こんなに殺気立ってる親父と二人きりなんて冗談じゃない
「陸?陸は猪瀬の所に行ってる。これから迎えに行くところだ」
ギクリとした。親父のこの怒気の向かう先は……。咄嗟に親父の行く手を阻む。自分に向けられているわけでもないのに恐怖でへたり込みそうになる。圧倒的優位者。それでも指を咥えているわけにも腰を抜かしているわけにも行かない。猪瀬さんを守る
「い、猪瀬さんに何をするの?猪瀬さんは……」
親父が俺をみた。
「お前は陸に似たな」
親父が苦笑しながら言った。
え?
一瞬だけ親父の雰囲気が緩まった、気がした。いや、気のせいか。
「……お前も陸も猪瀬がαだという事を忘れ過ぎだ。アイツは上位αだ」
忘れた事なんてない。猪瀬さんがαじゃなければ、そんな想像いつだってしている。
猪瀬さんがβだったら?そしたら、誰かと番って俺の前から去るなんて事もなくなる。
猪瀬さんが生粋のΩだったら?そしたら、俺が噛んでる
「どきなさい」
親父の、最上位αの怒気に足が震える。それでも首をふる。
親父が俺を避けるように方向転換をする。
慌てて移動しようとしたがガタガタの足は思うように動かず、縺れて転んだ。
親父が倒れ込んだ俺をチラリと見たが、それだけで、俺の脇をすり抜けてドアの方に進んでいく。
こんな、この程度の俺じゃ親父を止められない。なら……!
「待って!とめない!だからついて行かせて!」
置いて行かれるよりもましだ。現場にいれば何かの役に立つかもしれない。親父のズボンの裾を掴む。
親父が俺に威圧を放つ。それでも手は離さない。
倒れ込んで良かったのかもしれない。全ての力をこの右腕に集められるのだから。
「………離しなさい」
「嫌だ。俺も一緒に行く。邪魔はしない」
しても、かないはしない。だけど、むざむざ猪瀬さんを傷つけさせたり、傷ついた猪瀬さんを放置させたりはしない
「邪魔されるとは思っていない。ただお前には……」
珍しく親父が言い淀んだ。躊躇い、目を瞑って…そして再度目を開いた時は無表情になっていた。
「ならば、ついて来るといい。だが、物音ひとつたてるな」

猪瀬さんの玄関を音もなく親父が開ける
気配を殺してリビングの扉へと近づくと父さんの声がした。

「今すぐ東京を出よう、猪瀬」
思わず息をのんだ。
「第一、私は貴嗣様から離れたら死んでしまいますよ?」
「守るから。俺も一緒に行くから、だからここから逃げてくれないか」
親父と猪瀬さんの関係は特別だ。まるで呪いや呪縛のように、親父が切るだけで猪瀬さんの脳は生命活動を放棄させる。でも、父さんはそれ以上に強く猪瀬さんを縛って生き延びさせると言っているのだ。
「架向のため、ですか」
「……そうだ。お前と架向の為に、一緒に東京を出よう」

…俺のため?
猪瀬さんのためだけではなくて?
俺のためなら寧ろ猪瀬さんを奪うようなことはしないで!
でも……こういうってことは、父さんは勿論だけど、猪瀬さんんもやっぱり気が付いていたんだ。俺が猪瀬さんをΩに変えようとしていたということを。けれど、猪瀬さんは俺を責めることもなかった。ただ父さんは…

「一緒に逃げてくれ、猪瀬」
哀願するように父さんがいう
「お願いだ猪瀬……俺が耐えられない。」

ビッチングされた父さん。レイプされて産んだ子供が、自分の被害者にビッチングを仕掛けて無理矢理番おうとしている。

『お前らは異常だ!』
ルカの件で俺と親父を責めた父さんだから…そう、猪瀬さんの傷を思うと両親の呵責に耐えきれないだろう。
でも、父さん
それは悪手すぎる……



























~~~~~~~~~~~~~
そうして、陸視点は『贖罪ーヒートレイプを仕掛けてしまった男Ωの悔恨の話-』をご参照下さい。
なお、あちらはあちらで単品でも話が通じるようにしているので、架向編とは差異が生じていますが、その辺はご了承下さい。陸の心情はあってます。











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