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架向23
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「架向、丁度良かった。俺の番を紹介するよ」
猪瀬さんの家に行ったら、猪瀬さんの隣にルカがいた。
甘ったるいニオイ。
家具も変わっている。
スタイリッシュだったものたちがアンティーク調に。
出されたコーヒーは俺のマグカップではなく客用のものだった。
ここはここは俺の家なのに!
「ルカの淹れたコーヒーは美味しいだろう?」
デレデレした猪瀬さんが言う。
コーヒーマシーンのボタンをオスだけじゃないかよ!
マグカップをとりに行くと、食器棚が一変していた。ヘレンドなんて猪瀬さんらしくないのに!猪瀬さんにはもっとふさわしいブランドがあるのに。
放り出すと、気持ち良い音を立てて破れていく。もっともっと…!全部壊れてしまえ。
ルカが音を聞いてやってきた。
「痛い!」
割れた陶器で怪我をしたのか。いい気味だ。
「ルカ!架向、何をしてるんだ!」
猪瀬さんが俺を非難するように見る。なんで!なんで!
猪瀬さんの一番は俺だろう!
なんでそんなヤツを抱き寄せてるんだよ!
「なんで!」
………夢、か。
怒鳴った衝撃で目が覚めた。
嫌な夢。
猪瀬さんが俺より他のヤツを優先するなんてありえない
でも…番を得たら?
Ωによるヒートレイプが無くならないのも、これが原因だ。番ってしまえばその契約に心が引きづられる事がある。
ましてや、父さんが紹介するマッチング率の良いΩやルカだったら?猪瀬さんでも変わってしまうかもしれない。
駄目だ駄目だ。
防ぐ為には……
……
そう、猪瀬さんがαでなくなればいいんだ。そしたら、番契約なんて成立しないのだから。
そう、αフェロモンを受け止める器を壊せばいい
そうだ、猪瀬さんを……変えてしまえ、Ωに。
そうして俺と番えば、俺が猪瀬さんの一番のままだ
以前よりも頻繁に猪瀬さんの家に顔を出した。
器が壊れるように念じるとそのフェロモンがでる。そのフェロモンを猪瀬さんが吸引する。
無臭だから猪瀬さんに気が付かれる事もない。
問題点は猪瀬さんのαフェロモン受容体が大きいことだ。上位αだけあって一部を壊しても自然治癒力が高くて8割がた修復されてしまう。繰り返していけばいずれ完全に壊せるけれど…。
けれど、父さんが紹介したΩとまた会うようだ。
急がないと。急いでΩにしないと間に合わなくなる。
失うわけにはいかないのだ。
より効果的なのは直接投与だ。
フェロモンをたっぷりと含んだ……新鮮な……
いや、流石にソレはバレてしまうだろう。
加熱処理すれば効能は消滅してしまう。
ため息しか出ない……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
深夜、喉が乾いてミネラルウォーターを取りに台所へ行くと、父さんがいた。
「…………」
「あ、あの、さ…」
父さんが俺に話しかけてくるけれど、無視した。
父さんは敵だ。
高位Ωという身体を使って猪瀬さんを籠絡し、その曲、親父と番って捨てて。そのあとも利用しておくために放置していたくせに、番狂いになった途端に相性のいいΩをあてがうのだから。
…………しかし、酷いニオイだ。父さんが飲んでいるプロテインからだ。
無言で換気扇を強にした。
「あ、ご、ごめん。臭かったよな。コレ独特なニオイがするんだけど、吸収率がいいからさ」
身体を鍛える為だ。猪瀬さんにレイプされない為に。嗤える。自分がレイプしておきながら、今度はレイプされる方になって慌てて鍛えているのだから。
こんなプロテイン飲むより、親父とヤる方が効果的だけどな。αの、最高位αの精液なんて妙薬だ。どうせ似たようなニオイだ
……そういえば、最近父さんはヒートになってないな。年齢か。あの精力お化けな親父がよく耐えてるもんだな。
しかしホントに臭い。
けど、ニオイがこんなに強くても必要に迫られれば飲むものなんだ、人間。
…………猪瀬さんも滋養強壮の為の薬だと言ったら騙されて飲んでくれるのだろうか。祖父の家にそのレシピがあった。「そういう」関係ではない相手のαフェロモン受容体を壊す秘薬。随分昔にたまたま読んだ書物に載っていて、俺は幼過ぎて意味を理解できなかった。ただ、恐ろしい顔をした親父に見つかり口止めされた。『この事を口にしたら殺す』と。
「あの時、俺が単なる楔に過ぎないってわからされたんだよな…猪瀬さんが……」
親父は俺の授業参観にも運動会にも父さんと参加していた。両親揃っての、しかも地位の高いα親の参加は珍しい。友人には羨ましがられた。だから、愛されていると思っていた。
恐怖の余り失禁した俺に寄り添ってくれたのは猪瀬さんだった。『大丈夫だよ架向』
強烈な恐怖を植え付けられて、俺はあの書物の存在を消していた。けれど、幼いなりにもαな俺は、レシピを画像として完全に覚えていた。
…………時間がない。
猪瀬さんを騙すのは抵抗があるけれど、失うよりはましだ。
疲れているみたいだから、そう言えば猪瀬さんは飲んでくれる。
笑いが込み上げる。
アレを飲ませる。そうしてバースを書き換えて番ってしまえば、もう猪瀬さんはこんなビッチを想うこともなくなる。噛みさえすれば猪瀬さんは……
「…………架向?」
不審そうに父さんが俺を見た。
「架向、お前まさか……」
無視して台所をでる。
「架向!?」
追い掛けてくる父さんの目の前で自室のドアを閉めて鍵をかける。
急いだ方が良さそうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カエルの子はカエル(笑)
~~~~~~~~~~~~~~~~~
昨夜、告知せずにひっそりと京極様視点をアップしたら、今朝にはブクマがなされてました。
え?え?
皆さん、ソレっぽいので検索かけてくれたのですか?
それか、私のページまで飛んで頂けたとか?んで、この題名はアレだろ~とか?
どちらにしろ、感謝です!
ありがとうございます!
ブクマとか感想とかエールとかイイねとか、継続のモチベーションになるんでありがたいッス。
更新は亀ですが、
今後とも、よろしくお願いします
猪瀬さんの家に行ったら、猪瀬さんの隣にルカがいた。
甘ったるいニオイ。
家具も変わっている。
スタイリッシュだったものたちがアンティーク調に。
出されたコーヒーは俺のマグカップではなく客用のものだった。
ここはここは俺の家なのに!
「ルカの淹れたコーヒーは美味しいだろう?」
デレデレした猪瀬さんが言う。
コーヒーマシーンのボタンをオスだけじゃないかよ!
マグカップをとりに行くと、食器棚が一変していた。ヘレンドなんて猪瀬さんらしくないのに!猪瀬さんにはもっとふさわしいブランドがあるのに。
放り出すと、気持ち良い音を立てて破れていく。もっともっと…!全部壊れてしまえ。
ルカが音を聞いてやってきた。
「痛い!」
割れた陶器で怪我をしたのか。いい気味だ。
「ルカ!架向、何をしてるんだ!」
猪瀬さんが俺を非難するように見る。なんで!なんで!
猪瀬さんの一番は俺だろう!
なんでそんなヤツを抱き寄せてるんだよ!
「なんで!」
………夢、か。
怒鳴った衝撃で目が覚めた。
嫌な夢。
猪瀬さんが俺より他のヤツを優先するなんてありえない
でも…番を得たら?
Ωによるヒートレイプが無くならないのも、これが原因だ。番ってしまえばその契約に心が引きづられる事がある。
ましてや、父さんが紹介するマッチング率の良いΩやルカだったら?猪瀬さんでも変わってしまうかもしれない。
駄目だ駄目だ。
防ぐ為には……
……
そう、猪瀬さんがαでなくなればいいんだ。そしたら、番契約なんて成立しないのだから。
そう、αフェロモンを受け止める器を壊せばいい
そうだ、猪瀬さんを……変えてしまえ、Ωに。
そうして俺と番えば、俺が猪瀬さんの一番のままだ
以前よりも頻繁に猪瀬さんの家に顔を出した。
器が壊れるように念じるとそのフェロモンがでる。そのフェロモンを猪瀬さんが吸引する。
無臭だから猪瀬さんに気が付かれる事もない。
問題点は猪瀬さんのαフェロモン受容体が大きいことだ。上位αだけあって一部を壊しても自然治癒力が高くて8割がた修復されてしまう。繰り返していけばいずれ完全に壊せるけれど…。
けれど、父さんが紹介したΩとまた会うようだ。
急がないと。急いでΩにしないと間に合わなくなる。
失うわけにはいかないのだ。
より効果的なのは直接投与だ。
フェロモンをたっぷりと含んだ……新鮮な……
いや、流石にソレはバレてしまうだろう。
加熱処理すれば効能は消滅してしまう。
ため息しか出ない……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
深夜、喉が乾いてミネラルウォーターを取りに台所へ行くと、父さんがいた。
「…………」
「あ、あの、さ…」
父さんが俺に話しかけてくるけれど、無視した。
父さんは敵だ。
高位Ωという身体を使って猪瀬さんを籠絡し、その曲、親父と番って捨てて。そのあとも利用しておくために放置していたくせに、番狂いになった途端に相性のいいΩをあてがうのだから。
…………しかし、酷いニオイだ。父さんが飲んでいるプロテインからだ。
無言で換気扇を強にした。
「あ、ご、ごめん。臭かったよな。コレ独特なニオイがするんだけど、吸収率がいいからさ」
身体を鍛える為だ。猪瀬さんにレイプされない為に。嗤える。自分がレイプしておきながら、今度はレイプされる方になって慌てて鍛えているのだから。
こんなプロテイン飲むより、親父とヤる方が効果的だけどな。αの、最高位αの精液なんて妙薬だ。どうせ似たようなニオイだ
……そういえば、最近父さんはヒートになってないな。年齢か。あの精力お化けな親父がよく耐えてるもんだな。
しかしホントに臭い。
けど、ニオイがこんなに強くても必要に迫られれば飲むものなんだ、人間。
…………猪瀬さんも滋養強壮の為の薬だと言ったら騙されて飲んでくれるのだろうか。祖父の家にそのレシピがあった。「そういう」関係ではない相手のαフェロモン受容体を壊す秘薬。随分昔にたまたま読んだ書物に載っていて、俺は幼過ぎて意味を理解できなかった。ただ、恐ろしい顔をした親父に見つかり口止めされた。『この事を口にしたら殺す』と。
「あの時、俺が単なる楔に過ぎないってわからされたんだよな…猪瀬さんが……」
親父は俺の授業参観にも運動会にも父さんと参加していた。両親揃っての、しかも地位の高いα親の参加は珍しい。友人には羨ましがられた。だから、愛されていると思っていた。
恐怖の余り失禁した俺に寄り添ってくれたのは猪瀬さんだった。『大丈夫だよ架向』
強烈な恐怖を植え付けられて、俺はあの書物の存在を消していた。けれど、幼いなりにもαな俺は、レシピを画像として完全に覚えていた。
…………時間がない。
猪瀬さんを騙すのは抵抗があるけれど、失うよりはましだ。
疲れているみたいだから、そう言えば猪瀬さんは飲んでくれる。
笑いが込み上げる。
アレを飲ませる。そうしてバースを書き換えて番ってしまえば、もう猪瀬さんはこんなビッチを想うこともなくなる。噛みさえすれば猪瀬さんは……
「…………架向?」
不審そうに父さんが俺を見た。
「架向、お前まさか……」
無視して台所をでる。
「架向!?」
追い掛けてくる父さんの目の前で自室のドアを閉めて鍵をかける。
急いだ方が良さそうだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カエルの子はカエル(笑)
~~~~~~~~~~~~~~~~~
昨夜、告知せずにひっそりと京極様視点をアップしたら、今朝にはブクマがなされてました。
え?え?
皆さん、ソレっぽいので検索かけてくれたのですか?
それか、私のページまで飛んで頂けたとか?んで、この題名はアレだろ~とか?
どちらにしろ、感謝です!
ありがとうございます!
ブクマとか感想とかエールとかイイねとか、継続のモチベーションになるんでありがたいッス。
更新は亀ですが、
今後とも、よろしくお願いします
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