【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向22

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「あれ?」
 目を覚ますと家のベッドの上だった。
 あれ?
 いつのまに、家に帰ったのだろうか
 トイレに行く為に一階に降りる。
 ホントにこの造り何とかならないものだろうか。父さんが幼かった頃に憧れた家だから、ヒート隔離部屋を除いて水回りなんて二階にはない。
 リビングを抜けようとすると、父さんと親父がいた。ソファで親父の脚の間に嵌まって背中を預けて寝落ちしている父さん。親父が愛おしいそうに父さんの髪を撫でている。
 ……そういうのは寝室でやってくれ。
 親父が俺を見た。視線の冷たさに背筋が凍りつく。そのまま親父は目線だけで俺に用を済ませてくるように告げた。
 ………これはかなりヤバそうな気配だ。
 元々親父は俺に興味など無い。俺が父さんの息子だから、父さんを繋ぎ止める為の鎖なだけ、そんな親父が俺に指示を出してきた
 ……家出が父さんにショックを与えたからか?

 リビングに戻ると、父さん達はダイニングテーブルに移動していた
 ………
「架向、座って」
 厳しい表情をした父さんに促され着席した。
「架向、昨日の事は覚えいる?」
 頷く。
「……どこまで覚えている?」
「黒服が俺を止めにきたところまで」
 猪瀬さんに愛された体、こんな体壊れてしまえばいいのに。そう思っていたら抱いてる最中にラットになってた。なりそうだな、とは思った。今なら止まれる事もわかった。けれど、それになんの意義が?壊れるべきモノを壊すのにラットの方が都合が良い。
 監視カメラでもあったのだろう、しばらくして慌ててやってきた黒服に抑制剤を注射された。もう襤褸布を抱く気もなくなっていたからタイミングもいいしそのまま受け入れたっけ
「お前は!お前はそこまで覚えていながらなんで平然としている!あんな事をしておきながら罪悪感もないのか!」
「それがアイツの仕事です」
 ルカは俺に抱かれてボロボロになっていた。契約済みのΩが俺の上書きしようとするフェロモンを受け続ければ、そうもなろう。首を噛むという決定打もないまま、上書きしようとするαのフェロモンを受け続ければ、アナフィラキシーにも似た拒絶反応がずっと続く。番契約のα以外との単なるセックスよりもキツイはずだ。
「……お前はどうしてそんな……。……彼は保護した。今は猪瀬に彼に付き添っている」
「ふざけんな!」
『猪瀬に上書きしてもらうんだ!』
 ルカの言葉を思い出して慌てて席をたった。に保護を頼まれたΩ
 父さんが通せんぼをするように俺の前に立ち塞がる。
「どいて!猪瀬さんが番ってしまう!」
 突き飛ばす勢いで父さんに向かっていった。けれど、実際に転がったのは俺だった
「お前は反省もして無いのか、彼がどれだけ傷ついたか!どれだけ酷い事をお前がしたのか。お前も同じ目に合わないと分からないのか!」
 床に転がった俺の襟首を掴みあげて父さんが怒鳴る。けれど!
「そんな事より猪瀬さんだ。番うなんて許さない!」
 頬が痺れた。父さんに殴られた。父さんに暴力を振るわれるのは初めてだ。
「同じ苦しみを味合わなければ自分の行いを顧みれないのか!」
 ふたたび父さんの拳が動く。早い。
 だけど、痛みはなかった。親父が父さんの右腕を押さえていた。
「陸、駄目だよ。陸の手が傷ついてしまう」
 父さんが唖然として親父と俺を見る。
「お前ら……お前らどうかしている!今なんで俺の怪我の心配なんだ!猪瀬の番問題なんだ!ルカ君があれほどの状態で親の責任も加害者としての懺悔も無いのか!」
 何故?
 番が怪我を負うなど許されない事だ。
 猪瀬さんに俺以外の番ができることなど許されない事だ。
 …俺以外?
 ああ、そうか。俺は…猪瀬さんの番になりたかったのか。いや、なるんだ。こうしてはいられない
 俺が立ち上がると、息のあがった父さんが慌てて俺を止めようとした
「ま…」
「待て」
 親父が父さんを遮っていう。
 執着を自覚した俺を父さん程度、いや上位αでも抑える事は出来ない。そう、親父レベルの圧で初めて俺を止めれる。指一本動かすのにも全集中しなければならない程の圧がかかっている。
 けれど負けるわけにはいかない。睨む俺を見て一瞬、本当に一瞬だが親父の顔に喜色が浮かんだ。見間違いか?俺の猪瀬さんへの想いを親父は察した。けれど、それで親父の得になる事などないはずたが。
「架向、陸の話をきけ」
 親父の声にズレかけた思考が戻る。そうだ、こうしてはいられない。猪瀬さんを止めなければ。
「架向、自分がどれだけ非道な事をしたか、まだ分かってないのか。子供の我儘で許される範囲じゃない。いいか、番うかは猪瀬とルカ君次第だ。他人のお前が口出しする事じゃない」
「でも!猪瀬さんはものだ!」
「物じゃないだろう!猪瀬の未来は猪瀬が決める!誰を番にどんな将来を過ごすか決めるのは猪瀬自身だ!」
 それをそれをあんたが言うのか!
「猪瀬さんをレイプしたあんたにいわれる筋合いはない!ビッチが!」
 叫んだ直後に身体中の骨が砕けそうな程の圧を受けた。親父の威圧だ。
「やめろ!お前の息子だぞ!」
 父さんが俺を抱きしめるけれど圧は一向に弱まらない。身体が軋む。巨大なヘビに絞められるような……
「俺の息子だ!俺の命より大事な息子だ!わかれよ!貴嗣!」
 親父の圧が消滅した。
 そして俺はブラックアウトした。

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