【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向17

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カシャン
食器にナイフが当たってしまった。
「す、すみません」
「いえいえ」
幸人の母親がにっこり笑う。

今日は幸人の家で晩御飯を食べてから帰る。

父さんの帰りが遅くて猪瀬さんも遅い日は幸人の家で晩御飯をもらう。
テーブルマナーは幸人の家で覚えた。
家だと大皿料理が多いしハンバーグだって箸で食べるから、猪瀬さんが『陸様が不在の日は幸人の家で食事しろ』と
話をつけてくれたのだ。次代の京極のテーブルマナーがなってないなど問題だと言って。
父さんはそういうのに気が付いていない。親父は分かってはいるんだろうけれど『陸の理想の家庭』の像から離れるから何も言わないのだ。
……猪瀬さんだけだ。俺の将来を考えてくれるのは。
そんな猪瀬さんが…猪瀬さんを、失う???
悪寒がした。

「かな??…母さん、俺とかなはもういいや。かな、俺の部屋で少し休もう?顔色が悪い」
「いや…スミマセン。今日は体調が悪くて、これで失礼させていただきます。」
挨拶もそこそこに幸人の家を出た。

明日は、木曜日。
また、千葉さんが父さんを指導する。
また父さんはボロボロになり、親父が吠える。
けれど…父さんはそれでもなお修練するのだ、猪瀬さんを守るために。万が一、猪瀬さんにレイプされたとしたら、親父は猪瀬さんを許しはしない。だから父さんは猪瀬さんに対抗できる護身術を身に着けようとしている
正直、父さんがビッチかどうかとかは今はどうでもいい。
ただ…俺も猪瀬さんを失いたくない、けれど、何もできない俺と、対策を取ろうとしている父さん。
…情けない
全身がカタカタ震えている、
猪瀬さんを失う恐怖にどうにかなってしまいそうなのに。なのに、何もできない
ずっと一緒にいた。
父さんがヒートの時は猪瀬さんの家に泊まった。
『架向』
『陸様がおっしゃることも分かるが、お前は京極だ。学んでおけ』
厳しく躾けられた。けれど俺を思っての言動だと分かっていたから、注意される事すら嬉しかった。

壊れ始めた猪瀬さん。
どうすれば猪瀬さんを守れるのか……。


猪瀬さんの家に明かりがついていた。
今日は遅いと聞いていたから幸人の家で食べたのに。
また、あのΩだろうか
………ムカムカする。
ここは俺の家なんだよっ
鍵を開けると、土間には父さんと千葉さんの靴があった。
…珍しい。父さんが猪瀬さんの家にくる事はほとんどない。俺を迎えに来た父さんが猪瀬さんの家にあがった事はない。小さい頃はそれが不思議だった
けれど、今なら分かる。一応は猪瀬さんを警戒していたのだ。
そんな父さんが千葉さんという最強の護衛を連れて猪瀬さんの家にあがったんだ。

気配を殺してリビングを目指す。
大丈夫、俺はあの親父の息子だ。
距離をとり集中していれば千葉さんもごまかせる

「猪瀬、コンちゃんが見つけてくれた。お前の運命のΩだ。会ってみてくれないか」

運命。
昔はそう言われていたけれど、今は違う。
遺伝子の相性が良い相手、子を成すのに適した相手。αとΩはβよりも動物的で。生殖にベストマッチな相手と出会えばその場で発情する。番っている者であってもだ。心さえ置き去りにして発情する。
けれど、そんな相手に出会う確率なんて天文学的な値だ。
菫さんが職権やらコネやらを駆使して見つけ出したのか。

「番えと言っているわけじゃない。とりあえずその二人に会ってみないか」

二人も見つけたのか。
所詮は遺伝子のマッチング、それが80%を超えるた場合に運命と呼んでいるだけ。だから、運命とやらが一人とは限らない。

「気に入ったら交際を続けていけばいい。香りの相性がいいから隣にいるだけで癒されるはずだ」

「……陸様がそうおっしゃるのであれば」

「……うん、そうして欲しい。」

番!?
ふざけんな、それを父さんが猪瀬さんに言うのか!
猪瀬さんをゲスい手で絡めとった賤しいΩが!
ギリっ
俺の奥歯のこすれる微かな音に千葉さんが反応した。
リビングの扉が突然開かれ、俺はたたらをふんだ

「架向。来ていたのか」

父さんが俺を見て笑顔になる。

「うん、幸人の体調がよくないから早々に帰ってきたんだ。父さんたちがここに来るなんて珍しいね。なんの話をしていたの?」

素知らぬ顔で言ってやる。父さんは中学生の俺に聞かせたくないはず、こんな話空中分解すればいい。

「あ~~、いや、うん。大した事じゃぁない。猪瀬、またな。」

そう言って、リビングを出た。

……でも、俺にできるのはこんな時間稼ぎだけだ。
早晩、猪瀬さんはその運命とやらと会う。
の願いだから。

番ってしまったら?
この家は?俺の居場所は?
性で猪瀬さんを貶めたΩが、猪瀬さんを新たなるΩを当てがってまた性で縛り付けようする。
最低なとうさんΩだ。






~~~~~~~~~~~~
間が開いてすみません
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