【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向15

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木曜日になった。父さんはまた道場に行っている。
ここ数日、 俺と父さんの関係は微妙だ。 真正面から父さんを見ることはできない。父さんを見るとイライラしてしまうのだ。
猪瀬さんと、猪瀬さんに、猪瀬さんが
……!

俺の態度を親父が叱ってきた。
「陸を悲しませるな。陸は、第二次反抗期なんて俺は出来なかったから、俺はある意味架向に信頼されているって事だろう、などと言ってはいるが、傷ついているのは確かだ。そんな事の為にお前を産ませた訳ではない」
信頼?
そんなものする訳がない。猪瀬さんから親父に乗り換えた父さんなんて!
怒りが親父に伝わったのだろう。
「自分の価値を正しく評価出来ないとは情けない。誰のお陰で生きてられているのか自覚がないとは。……陸も猪瀬も甘やかしすぎだな」
陸も、そういった時に親父の顔が一瞬だが緩んだ。
失望した。親父も所詮αか。上位Ωのフェロモンなんかに惑わされた愚かなα。
穢らわしいΩに狂ったα。
そう、父さんは汚い。
婚約者がいたのに、Ωになったからと別れて。
猪瀬さんと事故番って、それでは満足せずに上位の親父に上書きさせたのだろう。あの猪瀬さんが、まともな状態で親父が狙っているΩに手を出すとは思えない。上位Ωのフェロモンとはそれ程までに……ああ、穢らわしい。

「……そんな顔を陸に見せるくらいなら、この家を、京極の敷地から出ていけ」
「わかりました」
リビングを出ていこうとする俺に親父が言う
「幸人の家も京極の敷地だ。」

……どこまでも、どこまでも京極で。親父の父さんへの執着がわかる。
幸人以外の友達の処へ行っても、ソコもまだ京極の範囲内の可能性もある。
タールのように纏わりついて離れない親父の想い。
コレを振り切ってよくもまぁ猪瀬さんと。
軽蔑と苛立ち。

目的地もなく家を出ると道場に明かりが着いているのが分かった。
窓からのぞくと父さんと千葉さんがいた。 猪瀬さんはいない。猪瀬さんのいない道場はまるで今まで来たこともない場所のように感じた。
ピリピリとした空気。指導内容も気迫も全然違う。千葉さんは手加減など一切せず父さんを転がしている。受け身を取れなかった方が悪いと言った感じだ。父さんはまた 傷だらけになるだろう。それでも教えを請いている。
……

見ていたくなくて、道場を離れた。
このまま見ていたら、父さんに騙される。
こんな姿と淫売と言われている父さんの姿が一致しない。

気の抜けた馬鹿っぽい笑顔を浮かべている父さん。
けれど、猪瀬さんをヒートレイプした。
証拠なんてない
けれど、父さんは俺に言った

『与し易いと思って架向にフェロモンレイプを仕掛けてくるΩもいるかもしれない。だから、抑制剤を持ち歩いて』
猪瀬さんを与し易いと思ったの

『いやいや、俺、京極だし。そんな勇気あるΩなんていないよ。ソレに万が一番ったとしても解除すれば良いだけじゃん』
自己防衛完璧デス、は、自意識過剰感とか色々あって抵抗がある。
『より強いΩだったら架向の意思での解除はできない。架向はそのΩが憎いのに発情期のたびにそのΩとしたくなるんだよ?』
そんな思いを猪瀬さんにさせたの、させているの。なのになんで笑っていられる……!
『誰かに惹かれてもその番Ωより相性のいいセックスは出来ない。』
それはつまりオ……

バン
大きな音でハッとした。父さんがマットに叩きつけられた音だ。

いやいや、俺、今何を考えかけた。
猪瀬さんも俺もαだっての!
……でも、俺なら、京極なら……

俺の存在に気がついた千葉さんに手招きされる。仕方ない…
「コレ、運んどいて」
ぐったりした父さんを指さして言う。
「……千葉さんが運んだ方が早くない?」
俺と父さんの身長は似通ったりだ。いや、これだけ鍛えているから体重的には父さんの方が重いだろう。
「青島をボロボロにしたから京極ににらまれる。アイツの為に鍛えてやってるのに理不尽すぎるだろう?」
「……わかったよ」
父さんを鍛えることが親父の為になるとは思えないけど、千葉さんが言うならそうなんだろう。
意識の無い父さんの腕を肩に回そうとした時、ゾワりとした。父さんの微かなΩ臭に吐き気がして腕を放り出した。
「どうした?」
「………親父を呼ぶよ。俺だと引き摺るしかないからさ」
「そうか。じゃあ俺は帰るわ」
じゃあな、片手をあげて去っていく。その姿は余裕のある男感があって、千葉さんみたいなのをいい男と言うんだろう。
そう思っていたから千葉さんが舌打ちしていた事にも気が付かなかった

千葉さんを見送ったあと、いやいや親父に電話した。
思うところはいろいろある。
けれど、この状態を放置したら、家を追い出される程度では済まされないから。





~~~~~~~~~~~~~~~~~
『贖罪…』という作品をアップしました。
この作品は『底辺α…』の続編?パラレルワールド?に近い感じになります。
『底辺α…』に載せようかとも思いましたが、架向かなた編を書いている今、同時にアップすると、栞の位置がややこしい事になるため、別作品にしました。
メインは陸視点です。架向かなた編のパラレルワールドと思ってください。
ネタバレ要素がふんだんに入っているため、閲覧は読者様のご判断で行ってください。
そちらの作品は一言で言うと…陸、不憫やわぁ…






    




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