【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向12

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「か~な」
下校途中、また、幸人《ゆきと》が俺に覆いかぶさった。
「この間のΩがいるよ」
またか。
また、あのΩがつけてきているのか。
覆いかぶさった猪瀬さんを思い出して吐き気がした。
「………こわいこわい怖い、架向それしまってくれよ」
思わず出てしまった俺の威圧に幸人《ゆきと》が涙目で訴える。
「わりぃ…」
親父ほどではないけれど、俺もかなりの上位αだ。幸人《ゆきと》も上位だがそれでも俺ほどではないからきついだろう

「で、あれ、どうする?おかえり願う?」
「……いいや、なんか話でもあるんだろう、聞くだけ聞くさ。そのあとは付きまとうなと警告する」
「りょ~~かい」
幸人がパッと身を翻してΩを拘束した。この脳筋

「なんか用ですか?」
こうやって正面から見てみると、父さんと似ているような似ていないような…先祖は同じサルでした、みたいな?

ただ…人によっては似ているというだろう、親父を知っている幸人がこのΩを見たときに『どっかで会ったような…』という程度には。
そして…『壊れてきている』そう言った千葉さん。
そう、猪瀬さんにまともな判断能力が残っていれば、父さんを連想させるようなΩをセフレにするはずがない。京極の足を引っ張りたい者は多い。腹心の部下が主の番に似たΩを…そんな醜聞、願ったりだろう。いや、もしかしたらこのΩが近づいてきた事すら猪瀬さんを貶める為の…

「この間の事を謝罪してもらおうと思って。」
「は?」
「君、猪瀬の何?なんでもないよね、ただの上司の息子。それが勝手に部屋の中にはいってきて邪魔してさ。恋人同士のいちゃつきの邪魔する権利なんてないよね」
……吐き気がする。セフレ風情が調子に乗りやがって
「猪瀬さんに恋人はいない。本人がそう言ってた」
「それは以前の話でしょ。あの家に招いたのは俺が初めてっていってた。俺は猪瀬の特別なの、わかった?」
…特別。確かにそう。今まで猪瀬さんが家に誰かを呼ぶことなんてなかった。けれど、このΩが呼ばれたのなんて…
「あの日、番えるかもって思っていたのに邪魔してくれちゃって。自分の居場所が奪われるって思った?でもさ、はじめから猪瀬の所に君の居場所なんてなくない?血縁でもない、単なるご近所さんなだけだよね?俺らの関係に割り込んで来ないでくれる?」
「寧ろ、あんたの方が異物だよ。俺が帰ったら猪瀬さんに追い出されたくせに。あんたはただのダミーだ。」
単なるご近所さん?俺と猪瀬さんが?そんな訳ない。猪瀬さんはこんなΩより俺を大事にしてくれる
Ωが俺を睨んできた。俺の苛立ちを感じ取りながらも言い返してくる気概は認める。
「俺が、俺がダミーだというなら、お前だって単なるレプリカだ!いや、お前は番う事すら叶わないのだからレプリカにもなれない!猪瀬の番はあお……!」
幸人が動いた。Ωの首をトンと手拳で打ち気絶させた
「おい……」
このΩは何を言いかけていたのか。非難するように見ると、幸人が肩をすくめた。
「ここで騒ぐ事でもないでしょ?それにもう要件もわかったしこれ以上話す必要無くない?」
「そうだけど……ソレどうするんだよ?」
我が家は駄目だし猪瀬さん家は論外だ。
「う~ん、おれん家で介抱するからいいよ」
「……」
幸人はαだ。……一瞬、一瞬だけど噛まれてしまえば良いのにと思ってしまった。けれど、セフレとはいえ猪瀬さんのお気に入りの地位にいるΩだ。万が一があったら猪瀬さんはどう思う。気を失った状態のΩを幸人に預けたと猪瀬さんが知ったら……。
「か~な、信じてよ?こんな年上には手を出したりしないって。」
……まぁ、幸人は女好きだし大丈夫か。流石にΩを道端に放置して置くわけにはいかないし。
暗い思いには気が付かなったことにした……。






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