【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向9

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父さんが家に戻ってきた

「今日は猪瀬は家でご飯を食べるって」
「そう。……取り敢えず風呂入ってきたら?すっげぇ……臭う」
思わず顔を歪めた。父さんから漂ってくる…猪瀬さんの無意識のマーキング臭。父さんの香りと混じって吐き気がする。
「ああ、悪い悪い。汗臭いよな。先に食っててくれ」

違う、そうじゃない
親父に、そう、親父に見つかったらまずいから、だから風呂を進めただけだ。

ハッとする。
……そうだ、こんなことを、自分の番にマーキングしたなんて親父にばれたら……!それが分からない猪瀬さんじゃないのに…!
『壊れてきているんだよ…』
猪瀬さんが?何故?


父さんが風呂から出てきた。
…石鹸とシップの匂いのみで、少しほっとした。
「架向、後で背中にシップ貼ってくれよ」
「いいよ、今貼るよ」
背中と肩は赤くなっていた。腕、腹にはすでにシップが貼られている。満身創痍とはこういう事だ。
「ジジイなのに、頑張りすぎ」
「負けられない戦いがあるんだよ。」
父さんがおちゃらけたように言う。けれどその目だけは真剣だった。
「ふうぅん」
「あ、信じてないな。」
「はいはい。とりあえず食べたら?」
「おう!」

父さんはそこまでして何を守ろうとしているの?
猪瀬さんの思いには気がついているの?
いつから猪瀬さんは父さんに…?
聞いても教えてくれないだろう。

ため息が出た
「どうした?」
俺に聞いてくる無邪気なその顔に苛立ちがこみ上げる。
「何でもないよ。ごちそうさま」
猪瀬さんはどうしているのだろう。
今頃、自己嫌悪に苦しんでいるのではないだろうか
「ちょっと出かけてくる」
席を立ちながら言うと、父さんがジッと俺の首をみた
「外出するなら抑制剤を持って行きなさい」
精通して以来、抑制剤を首からかけさせられている。
『架向は京極でまだ幼い。与し易いと思ってフェロモンレイプを仕掛けてくるΩもいるかもしれない。だから、外に出る時は必ず抑制剤の入ってるこのネックレスをしていて』
そう言って注射器内蔵のネックレスを渡された。
『いやいや、俺、京極だし。そんな勇気あるΩなんていないよ。ソレに万が一番ったとしても解除すれば良いだけじゃん』
自己防衛完璧デス、は、自意識過剰感とか色々あって抵抗がある。
『解除できない相手だったら?より強いΩだったら架向の意思での解除はできないよ?』

『俺より強いΩ?父さんクラスなんて中々いなくない?そんな心配しなくても……』
父さんが遮って言う
『架向はそのΩが憎いのに発情期のたびにそのΩとしたくなるんだよ?そして…誰かに惹かれてもその番Ωより相性のいいセックスは出来ない。俺は…架向にまでそんな経験ささせたくない。』
……架向にまで。父さんは上位Ωにレイプされたαを知っているのだろうか。
高位Ωの中を体験したら忘れられない。他の者を相手にしても満たされる事はない…
そんな都市伝説まである。
チリ…
うなじがざわつく。これ以上考えてはいけないヤツなのだろう。

「……猪瀬さんとこだし、いいよ」
「駄目だ。猪瀬も例外じゃない。習慣づけないと。」
「大丈夫だよ!」
父さんの猪瀬呼びに理由は分からないけれどイラついた。そのまま出ようとしたら、肘を掴まれた。強い力でもないのに肘関節にハマって振りほどけない。
「持って行きなさい、全ての物事に備えるべきだ。甘やかしすぎたかな……」
父さんが俺にこんな事を言うのはめずらしい。
『平和ボケしてんじゃねぇ!』
千葉さんの言葉が蘇る。父さんがピリついている…。
「分かったよ…」
渋々つけると父さんはあからさまに安堵した。
「いってらっしゃい」
「……うん」





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