【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向6

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1週間ぶりに家に帰ってきた。
「おかえり」
父さんが、ハグをしようと腕を伸ばしてきた。
ふわりと香る覚えのあるニオイ。思わず腕をはたき落とした。
「え」
「あ、ご、ごめ……!う…」
威圧、まるで重力が何倍にもなったかのようなべジャンと俺を潰す威圧。親父だ。
親父が、番を傷つけた俺を容赦無く攻撃してきている。
『陸を傷つけるモノなど不要だ。』
「貴嗣!」
父さんが怒鳴る。名前呼びは珍しくて親父に一瞬だが隙がうまれた。それを逃さず父さんが回し蹴りをいれて、親父が吹っ飛んでいった。
威圧が途切れる。
…………いや、親父を最高位αを吹っ飛ばすΩってどうなんだよ。
「突然暴力ふるうな!」
あ、いや、父さんもじゃん
「俺はいいんだよ、俺とアイツは対等だからな」
あ、名前呼びからコイツアイツに戻った。けど、親父と父さんは対等ではないと思う。父さんに手を挙げるなんて親父にはできないはずだ。親父から逃げ出したりしない限りは。
「ただ、架向は違う。最高位αからの威圧なんて一方的な暴力だ。事情も聞かずにイヤイヤ期に入った息子にする事じゃない。」
い、いやいや期ってなんだよ!
「大きくなったなあ……」
そう言いながら、再びハグをしようとして思い留まったようだ。思春期の息子にハグはないな、拒絶されたし、とブツブツ言っている
ふわり
第2次反抗期とかで照れくさいとかではなくて、父さんから漂ってくるこのニオイだ。
これを煮詰めて煮詰めて煮詰めてドロドロにして何かを足したらあのオメガ男の香りに近くなる。吐き気がしそうだ。
ふと視線を感じて 顔を上げると親父が 俺 を観察するように見ていた
いけない。咄嗟にそう思った。ばれてはいけない。でも親父を誤魔化すことなんて……
「おい息子を怯えさせるな。…… 架向、荷物はそれだけか?とりあえず それを持ってこんな男は置いて出て行こう。叔父さん家に行くか」
「「……え?」」
俺の怯えを勘違いした父さんがいう。
「こんなDV野郎がいる家になんかいる必要ない」
「陸!ごめん!陸!謝るから!出ていくな!」
親父が土下座するけど、無視している。
「ここが君の家なんだよ……」
親父が父さんに縋り付く
……番に捨てられそうなαってこんなにも情けなくなるのか。威厳なんて皆無だ。
「…………そうか、確かに。ここは俺の家だ。俺の名義だったな。」
親父の顔が一気に明るくなる
「じゃあ、お前が出ていけ」
「「………………」」
上げて下げる。
けれど、妥当な所だ。
父さんに暴力は振るえない親父だけど、父さんが親父から逃げるなら別だ。
最高位αの執着は凄まじい。番が逃げるなら、人質を取る、それでも効果がないなら番の脚の腱を切る、番がハンストするなら、胃瘻でも何でもする。
この家は、この住宅街は親父が父さんの為に作った巣だ。主が不在でも、番が巣にいる分には耐えられるだろう。
計算なのか無自覚なのか分からないけれど、この辺を上手く切り抜ける父さんを尊敬する。
「陸……」
それでも親父は往生際悪く説得を試みている
「私が悪かったから……」
「………」
こうなると、父さんは全く折れないだろう
架向かなた、私が悪かった。だから……」
取り成してくれ、と頭を下げられた。

…………不要だと言い切った息子にすら頭を下げる、あの京極ホールディングスのCEOが。
父さんは最凶だ、親父の部下にとっては。
父さんを質に取られたら親父は何でも投げ出すだろう。それこそ靴底だって舐めるのではないだろうか。
番に手を出すのはご法度と言われていても、京極を手に入れられるという誘惑を、京極貴嗣をかしずかせるという誘惑を吊り下げられて耐えるのは中々の忍耐力が必要だろう。
そりゃあ、皆が過保護になる訳だ。…………猪瀬さんも……

架向かなた…」
親父が懇願するように俺に言う。ため息をついた
「父さん。俺がびっくりして父さんをぶってしまったからだよ。親父は悪くない。父さんごめんなさい。」
「…………架向かなた…………大人になったなあ!」

ガバリと父さんがおれをハグした。いや、だから、ソレもヤバイんだって!

「お前も架向かなたを見習え!」
「……」

ふわり、またも香ってきたニオイ。けれど、ちゃんと嗅ぐと違うモノだとわかる。そう認識したら、大丈夫だった。
そう、父さんのソレから清涼感を無くしてドロドロに煮詰めて変性したモノ、それがあのΩの香りだった。
………けれど、俺が今まで合ってきたΩの中で最も父さんの香りに近い。

架向かなたに感謝しろよ!取り敢えずはここにおいてやる!」
ビシッ。
指を刺す父さんからは、そんな擬音がきこえた気がした。
…………いや、名義は父さんかもしれないけど、父さんの給料じゃこの家は買えて無いから!






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