【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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わかっている。
ボートが転覆する?そんなわけはない。
京極のバランス能力なら俺がヤツの腕の中では暴れた程度でボートが転覆するわけがない。
コイツはただ、俺が、抵抗出来なかっただけだと言い訳する余地を残してくれたのだ。
フェロモンもそう。結婚式の後も今も本気でそれを弾こうとすれば弾けた。以前の様な問答無用で屈伏させるような強さではなかった。
京極は俺を脅す、孤独になりたくなければ自分のものになれと。けれど、今の京極の脅しは……一番を返せないからと動けない俺に『京極を選ぶしか無かったんだ』という免罪符を与えるだけのものだ。
…………ここまで見透かされて、俺に罪悪感を抱かせないように大人な対応をされたら
自分が子供のように思えて、悪態もつきたくなる。
…………まあ、外堀はどんどん埋められたし、俺に選択肢はほぼ残してはくれなかったけれど。
コンちゃんの事、京極の事がある俺は、コイツが恋愛禁止を言ってこなくても自分から動くなんて出来なくて、新しい恋愛が発生するとすれば、台風なみに強引な人間……つまりはα位しかいない。
けれど、α界隈には『青島陸はいづれ私と番う』と公言したし、そういう情報に疎い下位αに対しては俺にマーキング済みの首輪をさせる事でしのいだし。…………詰めがあまくて蓮兄さんがマーキングした首輪になったのはコイツの自業自得、いい気味だったけど。

じっと京極を見る。
「返品不可」
笑いながら俺のネックガードを外して新しい首輪を俺につけた。こいつは俺のネックガードの暗証番号を知っていたのだ。それでもヒート中外すことなく耐えてくれていた。いつから知っていたのだろう、番えるという誘惑との戦いだっただろうに。
べったべったにマーキングがなされた新しい首輪を触りながら京極に聞く
「 暗証番号は?」
「陸と私が初めて会った日」
「…………」
京極は昔と違って、俺を追い詰めているようでありながら、俺に選択権を残してくれている。こうして、所有者の証を外したければ外していいよと暗証番号を教えてくる。
…後天性Ωのおれがビッチングされたと誤解していわれなき復讐をしてきたのに、それには触れない。その復讐で巻き添えにしてしまったΩだちへの贖罪も俺の分も含めて行ってくれた。……京極だけの謝罪であれば、金とゲスαの消滅で済ませたはずだ。それを……コイツがどれだけ忙しいかなんてわかっている。それでも、俺の贖罪を肩代わりした。

『貴方も被害者なのよ』
そうだね。
あおり運転は確かに悪い。
けれど、煽られ屋がいるのも事実で、事故った時、その煽られ屋に非がないと言い切れるのか。
そして俺はそれに気がつかないふりして。京極の用意した道を行くのだ。
ちらりと京極をみる
…………痩せたな。
俺しかいらない、自分の命より俺がほしい、態度も体もそういっている
…こいつなら俺を見捨てる事はないと、恐怖におびえる必要はないのだと確信できる…

ボートお店に返却すると再び京極が去っていく。
「陸、ちょっと待っててくれ。諸用を済ませてくるから」
………………さっきまでの俺の感謝と尊敬を返せ。
ため息をついた。公共の場でナニを。
けれど、まあ……あの結婚式の後のヒートの時、あんな風に体をつなげた以上、また俺に挿入してくるかとも思ったが、奴はそれをしなかった。
一度結ばれる快感を知ったαが、ヒート状態のΩを前に入れることもなく耐えていたのだから、同じ男としても尊敬はする。
………………それともよほど強烈な抑制剤だったのだろうか。

戻ってきた京極は、やはり壮絶な色香を漂わせていた。
これが表を出歩くのは問題なんじゃないか?
ふらりと失神する女子やらΩやらが続出したから流石に帰ることを提案する。京極が嬉しそうに同意した。
あれ??
コイツなら、『まだ陸といたい』とか返答に困る事を言いそうなもんなのに
そのまま家まで送ってもらった……はずが知らないマンションの駐車場へと入って行く。
え?
「新居はここなんだ」
え?
「今日から陸はここに住むんだよ。」
え?
「ここから君の勤めている会社までは徒歩で行ける。」
ええ?
「とりあえず明後日から一週間のハネムーン休暇の申請はしておいたから。」
え?
いや、急にそんな長期休めないだろ
「フォローするように伝えてある」
え?誰?誰がお前の子飼いだったの?
「よろしくね、陸」
え?

1週間後、満身創痍の俺が流された事を後悔したかどうかは……神のみぞ知る



お、わ、り。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『陸と京極のラブラブエチエチは無いのか!』
読者様のお怒りが聞こえそうですが、ラブラブ?エチエチは京極編か番外編で。

自爆機能付首輪は途中でノーマルな首輪に変わっています。このネタを膨らませたかったのですが、うまく入れられなかった。
ちなみにノーマルな首輪をしたのは、累兄さんに自爆機能がバレて泣かれたから。そして累兄さんがその機能を知ったのは京極が密告したからです。結果、ネックカードは新調されましたが、ただしそのネックガードには蓮兄さんのフェロモンがつきまくっていたというオチがあります。この辺をうまく入れたかったのですが、難しかった。累兄さんシリーズの中か、京極編かに入れたいと思っております。

お読みいただきありがとうございました。
と言いたいところですが、あと3話、蛇足話にお付き合いください。一応、本編としてはこれが簡潔になりますが、作者の中では蛇足の3話で陸編の完結となります。

なお、
京極、見返したぞ!
いいヤツになったな!
祝!卒(恋愛)童貞!
で、終わりたい方はここで完結で。

希望する展開ではなかった方もいらっしゃったかもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

京極編はまた後日。
それまで、ブクマ、解除しないでいただければ幸いです

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