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俺が睨むと京極は言う
「陸も同じ手を使ったでしょう。首輪を盾にしていた」
番にされないために命を張った俺と番になるために命を張っている京極だからこそわかる。
通じなければそれはそれでいいと思っているのだ。死んでもしょうがないと。賭けに負けただけだと割り切って命を天秤にかけている。
俺と過ごせない時間には意味がないと割り切っている。
でも俺は……同じ熱量を返せはしない。尊敬はしている。好きだとは思う。けれど、それだけだ。
唇を噛んだ。
「怪我しちゃうよ」
いいながら、俺の口に親指を捻り込んでくる。
「うゔ…」
「陸、君には選択肢がある。私を選べば君がずっと欲しかったものが死ぬまで手に入る」
「ほじがったもの……?」
顎を押さえつけられ口の中を京極の指が動き回ってうまく話せない
「君を一番に考える人。君だけしかいらない人。君が死ぬまでね」
…………
俺が死ぬまで。
今のままだと京極は俺を残して死ぬ。あと
10年したら、俺を一番に考える存在が消える?
ゾクリとした。
『君しかいらない』
この言葉に救われている自分がいる。あと10年もこの言葉を聞き続けてその後一人になったら、俺はどうなるのだろう。
一人で立てるのか。
30も近い男が幼い頃のネグレクトを言い訳にするなんてみっともないと思う。けれど、それでも幼い頃のトラウマは消えない。誰かの一番になりたい。そうでないと……棄てられる。
お腹が空く…
『お父さん、帰ってきて……』
『お腹減った……』
父は叔父とは異なり暴力は振るわなかった。ただ存在を無視しただけ。食事もお金も与えられなかった。兄さんは蓮兄さんの家にずっと泊まっていて……。
「陸、私に一番を返せない事を理由にしないで。だって、君はこの先君は誰にも一番を与える事は出来ないのだから。なぜなら君の一番は永遠に……あの女だ」
「……!」
京極を振りほどいた。久々に京極のコンちゃんに対する憎しみを見た。
「おっと…」
ボートが大きく揺れて立っていた京極がバランスを崩しかける。
「安心して?あの女は千葉の番だ。アレを見せられたら簡単には手を出さない」
「…………」
コンちゃんの結婚式。
俺も京極も参加した。俺はコンちゃん側京極は千葉さん側として。
千葉さん側の参列者の顔ぶれに、コンちゃん側の参列者の顔が引き攣っていた。当然だろう、石油王から経済マフィアと言われる人まで参列していたのだから。
コンちゃんサイドもそれなりに上位階級だ。だからこそ、一般人には知られていない彼らの顔に覚えがあったのだろう。俺が知っている顔は1割程度だったけれど、京極は『随分と脅してきたな。千葉も必死だ』と鼻を鳴らしていたから、全員の顔を知っていたのだ。
…………コンちゃん。
君を守るにはそれくらい必要だった。あの千葉さんですら、京極相手に単身では無理と踏んでコネクション作りに励んでいた。
俺は京極の脅威がどれほどなのか、コンちゃんの怯えを理解して無かった。だから千葉さんに負けたのだ。
いや、京極、千葉さん云々ではなくて……あの時…、そう、俺が帝都大を受験すると言った時点でもう俺に勝率は無かった。
『この世界は小説の世界なの!』
俺はコンちゃんの言葉を信じず、コンちゃんとの未来の生活を考えて帝都大を受験した。それが最善だと思っていたけれど、あの時、コンちゃんは……諦めたんだ、『私の頭が変なの』と…。あの時、他の大学を選んでいたら、コンちゃんは俺を選んでくれていた。
それでも、俺の受験勉強を応援し、入学後は俺を守ると決めて京極に怯えながらも孤軍奮闘してくれた。
そして……彼女と同レベルの、本質を理解する千葉さんに出会って甘える事をしった。披露宴、俺には見せない笑顔で千葉さんに話しかけていたコンちゃんに、俺は二度目の失恋をした。
~~~~~~~~~
お待たせしました~。
ラストまで書き終えたど~。
なので、この先は全て予約投稿になります。
本編はあと2話
よろしくお願いします
…………陸、ウジウジだなぁ。
「陸も同じ手を使ったでしょう。首輪を盾にしていた」
番にされないために命を張った俺と番になるために命を張っている京極だからこそわかる。
通じなければそれはそれでいいと思っているのだ。死んでもしょうがないと。賭けに負けただけだと割り切って命を天秤にかけている。
俺と過ごせない時間には意味がないと割り切っている。
でも俺は……同じ熱量を返せはしない。尊敬はしている。好きだとは思う。けれど、それだけだ。
唇を噛んだ。
「怪我しちゃうよ」
いいながら、俺の口に親指を捻り込んでくる。
「うゔ…」
「陸、君には選択肢がある。私を選べば君がずっと欲しかったものが死ぬまで手に入る」
「ほじがったもの……?」
顎を押さえつけられ口の中を京極の指が動き回ってうまく話せない
「君を一番に考える人。君だけしかいらない人。君が死ぬまでね」
…………
俺が死ぬまで。
今のままだと京極は俺を残して死ぬ。あと
10年したら、俺を一番に考える存在が消える?
ゾクリとした。
『君しかいらない』
この言葉に救われている自分がいる。あと10年もこの言葉を聞き続けてその後一人になったら、俺はどうなるのだろう。
一人で立てるのか。
30も近い男が幼い頃のネグレクトを言い訳にするなんてみっともないと思う。けれど、それでも幼い頃のトラウマは消えない。誰かの一番になりたい。そうでないと……棄てられる。
お腹が空く…
『お父さん、帰ってきて……』
『お腹減った……』
父は叔父とは異なり暴力は振るわなかった。ただ存在を無視しただけ。食事もお金も与えられなかった。兄さんは蓮兄さんの家にずっと泊まっていて……。
「陸、私に一番を返せない事を理由にしないで。だって、君はこの先君は誰にも一番を与える事は出来ないのだから。なぜなら君の一番は永遠に……あの女だ」
「……!」
京極を振りほどいた。久々に京極のコンちゃんに対する憎しみを見た。
「おっと…」
ボートが大きく揺れて立っていた京極がバランスを崩しかける。
「安心して?あの女は千葉の番だ。アレを見せられたら簡単には手を出さない」
「…………」
コンちゃんの結婚式。
俺も京極も参加した。俺はコンちゃん側京極は千葉さん側として。
千葉さん側の参列者の顔ぶれに、コンちゃん側の参列者の顔が引き攣っていた。当然だろう、石油王から経済マフィアと言われる人まで参列していたのだから。
コンちゃんサイドもそれなりに上位階級だ。だからこそ、一般人には知られていない彼らの顔に覚えがあったのだろう。俺が知っている顔は1割程度だったけれど、京極は『随分と脅してきたな。千葉も必死だ』と鼻を鳴らしていたから、全員の顔を知っていたのだ。
…………コンちゃん。
君を守るにはそれくらい必要だった。あの千葉さんですら、京極相手に単身では無理と踏んでコネクション作りに励んでいた。
俺は京極の脅威がどれほどなのか、コンちゃんの怯えを理解して無かった。だから千葉さんに負けたのだ。
いや、京極、千葉さん云々ではなくて……あの時…、そう、俺が帝都大を受験すると言った時点でもう俺に勝率は無かった。
『この世界は小説の世界なの!』
俺はコンちゃんの言葉を信じず、コンちゃんとの未来の生活を考えて帝都大を受験した。それが最善だと思っていたけれど、あの時、コンちゃんは……諦めたんだ、『私の頭が変なの』と…。あの時、他の大学を選んでいたら、コンちゃんは俺を選んでくれていた。
それでも、俺の受験勉強を応援し、入学後は俺を守ると決めて京極に怯えながらも孤軍奮闘してくれた。
そして……彼女と同レベルの、本質を理解する千葉さんに出会って甘える事をしった。披露宴、俺には見せない笑顔で千葉さんに話しかけていたコンちゃんに、俺は二度目の失恋をした。
~~~~~~~~~
お待たせしました~。
ラストまで書き終えたど~。
なので、この先は全て予約投稿になります。
本編はあと2話
よろしくお願いします
…………陸、ウジウジだなぁ。
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