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そして、次のヒート
自分でも やばいというのは感じた
救急車を呼ぶか……半分意識が飛ぶ中、ヤツが鍵を壊して入ってきた。
え、いや、αのセキュリティぶち破り能力どうなっての。ここ防犯対策が整ったマンション……
裸でボーゼンとする俺のもとに駆け寄ってくる。
咄嗟に手をうなじに伸ばす。……あとで振り返ってもこの時の俺が何を思って手を伸ばしたのか分からない。ネックガードの存在を確認しようとしたのか、それとも自爆目的だったのか…。
ただ、京極はそれより早く俺の手を押さえつけた。そして俺をひっくり返し、俺の後ろにヤツが自分の先っちょを推し当てた。
身をよじって何とか逃げ出そうとした
『抵抗するな。処方みたいなもんだ』
そういって、ヤツがイった。
挿入もせず、それだけだった。
俺の中がヤツのそれを求めて蠢き、そして苦しみから開放された。
『少し眠れ』
言われなくても、意識が闇に引きづられていく。
目が覚めると、シーツが取り替えられたベッドの上だった。
いつもに比べ体の調子が良いことがわかる。
………………多分、アレのお陰だろう。
『食べれるか?』
京極がアイスを持ってきた。後退りした俺に『何もしないよ.だから逃げないで』と寂しそうに笑った。
…………鍵を壊して入ってきた京極。いつでも俺を拉致る事はできたのだ。ヒートの今だって俺を自分の巣に連れ帰る事もできた。
けれどしなかった…
『陸、今自分が小康状態なだけだってことはわかる?』
『……』
頷けは、良かったと笑う
『もう暫くすればまた、効果が薄れて発散したくなる。私を利用して?いつもより楽でしょ?陸が寝てる間、私が何もしなかったのも分ってるよね』
『……』
『そろそろ体力の限界だよ。会社員を続けたいなら、私の手をとって。あれ以上、陸の中に入ったりしないから、約束するから。痩せていく君を見ていられない。…………お義父さんの会社、継ぎたいんだね?』
結局、ヤツの手をとった。
ハンドルを握る手を見る。
…………腕の噛み跡が薄くなっている。注意して見なければ分からない程度にはなっているけれど。
ヒートの度に、コイツに頼った。
コイツは無認可ラット防止薬を飲んできていた。それが副作用がかなり強いものだという事も後で知った。
それでも、噛む欲望は消しきれないようで、コイツの腕には俺の項代わりに噛みついて対処した跡がいつもついていた。
「陸?」
「ごめん、……ちょっと寝落ちさせて」
「うん。着いたら起こすよ」
「……ごめん」
先っちよだけ、それが男にとってどれだけ辛いかなんて分かっている。ましてやヒートのフェロモンに毒されて理性は弱くなっていたはずだ。さらに俺は性衝動で前後不覚になっている状態……。
よくもまぁ……
京極の腕の噛み跡は酷くて数日はでっかい傷バンが貼られていた。
いたたまれなかった。
でも俺は……
「ごめん」
「うん?気にしないで眠っていいよ」
でも、俺は、彼女達のように…オメガというだけで諦めざる諦めざるを得なかった夢をそれでも追った彼女たちのように、ヒートを割り切れない。その行為をビジネスライクに割り切れないのだ。
ヒートがあるΩだからって夢を諦める必要はないのだ。俺はアルファだった時、義父の会社を継ごうと頑張ってきた。けれどオメガになってしまって、俺は即、諦めた。
けれど彼女たちを見ていたら、もしかしたら…と思った。『オメガだから』それは言い訳に過ぎない。確かにオメガに社長は難しい。けれど美容室のオーナーになった彼女。京極グループで既に係長にまで出世した彼女。そして、医者になり今度は開業まで目指している彼女。彼女たちはヒートを乗り越えている……
男Ωの方がヒートはきついと言われる。
だからと言って、彼女たちのヒートが楽なわけがない。目的を明確にして…対策をとっているのだ。国は希望すれば、ヒート中のΩを相手するαをアテンドしてくれる。薬の効かないΩをヒート中のみ相手をしてくれる国が認めたα…
俺もまた、覚悟を決めなければならないとは思っていた。
俺を想っている京極を利用するよりは…
一方で、俺の相手をしたαに京極が復讐しないか、いや、相手が俺とわかった時点で皆逃げ出すのでは…と思って動けなかった
そして、自分はそれを言い訳に動かないだけじゃ…αだった矜持。後ろを使うという事への抵抗。思考がぐるぐると回っていた。
番契約の解除、アレに比べたらヒートの苦しさは大分ましなのに、繰り返し繰り返しのせいで体重は減っていく。番契約の解除、苦しかったけれどそれは俺の価値観に合致していた。けれど、ヒートは…αだった矜持を叩き折る。精神的に苦しい、そんな状態でマッチングなんて…
自分でも やばいというのは感じた
救急車を呼ぶか……半分意識が飛ぶ中、ヤツが鍵を壊して入ってきた。
え、いや、αのセキュリティぶち破り能力どうなっての。ここ防犯対策が整ったマンション……
裸でボーゼンとする俺のもとに駆け寄ってくる。
咄嗟に手をうなじに伸ばす。……あとで振り返ってもこの時の俺が何を思って手を伸ばしたのか分からない。ネックガードの存在を確認しようとしたのか、それとも自爆目的だったのか…。
ただ、京極はそれより早く俺の手を押さえつけた。そして俺をひっくり返し、俺の後ろにヤツが自分の先っちょを推し当てた。
身をよじって何とか逃げ出そうとした
『抵抗するな。処方みたいなもんだ』
そういって、ヤツがイった。
挿入もせず、それだけだった。
俺の中がヤツのそれを求めて蠢き、そして苦しみから開放された。
『少し眠れ』
言われなくても、意識が闇に引きづられていく。
目が覚めると、シーツが取り替えられたベッドの上だった。
いつもに比べ体の調子が良いことがわかる。
………………多分、アレのお陰だろう。
『食べれるか?』
京極がアイスを持ってきた。後退りした俺に『何もしないよ.だから逃げないで』と寂しそうに笑った。
…………鍵を壊して入ってきた京極。いつでも俺を拉致る事はできたのだ。ヒートの今だって俺を自分の巣に連れ帰る事もできた。
けれどしなかった…
『陸、今自分が小康状態なだけだってことはわかる?』
『……』
頷けは、良かったと笑う
『もう暫くすればまた、効果が薄れて発散したくなる。私を利用して?いつもより楽でしょ?陸が寝てる間、私が何もしなかったのも分ってるよね』
『……』
『そろそろ体力の限界だよ。会社員を続けたいなら、私の手をとって。あれ以上、陸の中に入ったりしないから、約束するから。痩せていく君を見ていられない。…………お義父さんの会社、継ぎたいんだね?』
結局、ヤツの手をとった。
ハンドルを握る手を見る。
…………腕の噛み跡が薄くなっている。注意して見なければ分からない程度にはなっているけれど。
ヒートの度に、コイツに頼った。
コイツは無認可ラット防止薬を飲んできていた。それが副作用がかなり強いものだという事も後で知った。
それでも、噛む欲望は消しきれないようで、コイツの腕には俺の項代わりに噛みついて対処した跡がいつもついていた。
「陸?」
「ごめん、……ちょっと寝落ちさせて」
「うん。着いたら起こすよ」
「……ごめん」
先っちよだけ、それが男にとってどれだけ辛いかなんて分かっている。ましてやヒートのフェロモンに毒されて理性は弱くなっていたはずだ。さらに俺は性衝動で前後不覚になっている状態……。
よくもまぁ……
京極の腕の噛み跡は酷くて数日はでっかい傷バンが貼られていた。
いたたまれなかった。
でも俺は……
「ごめん」
「うん?気にしないで眠っていいよ」
でも、俺は、彼女達のように…オメガというだけで諦めざる諦めざるを得なかった夢をそれでも追った彼女たちのように、ヒートを割り切れない。その行為をビジネスライクに割り切れないのだ。
ヒートがあるΩだからって夢を諦める必要はないのだ。俺はアルファだった時、義父の会社を継ごうと頑張ってきた。けれどオメガになってしまって、俺は即、諦めた。
けれど彼女たちを見ていたら、もしかしたら…と思った。『オメガだから』それは言い訳に過ぎない。確かにオメガに社長は難しい。けれど美容室のオーナーになった彼女。京極グループで既に係長にまで出世した彼女。そして、医者になり今度は開業まで目指している彼女。彼女たちはヒートを乗り越えている……
男Ωの方がヒートはきついと言われる。
だからと言って、彼女たちのヒートが楽なわけがない。目的を明確にして…対策をとっているのだ。国は希望すれば、ヒート中のΩを相手するαをアテンドしてくれる。薬の効かないΩをヒート中のみ相手をしてくれる国が認めたα…
俺もまた、覚悟を決めなければならないとは思っていた。
俺を想っている京極を利用するよりは…
一方で、俺の相手をしたαに京極が復讐しないか、いや、相手が俺とわかった時点で皆逃げ出すのでは…と思って動けなかった
そして、自分はそれを言い訳に動かないだけじゃ…αだった矜持。後ろを使うという事への抵抗。思考がぐるぐると回っていた。
番契約の解除、アレに比べたらヒートの苦しさは大分ましなのに、繰り返し繰り返しのせいで体重は減っていく。番契約の解除、苦しかったけれどそれは俺の価値観に合致していた。けれど、ヒートは…αだった矜持を叩き折る。精神的に苦しい、そんな状態でマッチングなんて…
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