【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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仔虎を見る為にマンションを出るとすでに京極がいた。
国産のSUV、運転してみたいが万が一傷でもつけたらと思うともっぱら助手席にいるしかない。
さんきゅ、と言いながら車に乗る。
ご丁寧にドリンクフォルダーには俺の好きなカフェのコーヒーがおかれていた。
……。
はぁ…

ため息を聞き取った京極がブランケットを後部座席から取って俺にかける。

「疲れているなら、少し眠って?朝早くなっちゃったから」
「……」

ため息の理由はそれじゃないんだが、気にしても無駄だろう…
この車に乗るのは何度目か。もう手慣れたものだ。

オープンカーからこの車に変えたとき、こいつは不安そうに俺を見た。
『雨だから…ホロをかけるなら同じかと思って…』
だったら、同じ密室ならば、俺がいつか乗ってみたいと言っていた車にしようと思ったのだろう。何年も前、京極に出会った頃の話だ。…よく覚えていたな
『……やっぱカッコイイ車だな』
日本車の頂点。
その車のお披露目をここまで怯えた表情でするのか。
俺の反応がそこまで怖いか。だいたい今更だろう。
こいつはいつでも俺を拉致れる。いまさら車が密室も何もあったもんじゃない。

……何度もヒートをコイツと過ごした。

社会人になって二年目、Ω差別も多くてまだまだ敵ばかりで気が張っていた。
ヒートの薬にも耐性ができてきて、ストレスもあってか効きが悪くなってきていた。
『陸…私をつかってくれ。』
年々ヒートは重くなり、一回のヒートで体重は激減して体力もだんだん落ちていく。番のいないΩが、特に男性Ωが短命というのは納得がいく。
見かねた京極がそんな提案をしてきたが、そんなことはできないと拒否した。

京極は…俺に新しい恋愛をするなとはいわなかった。…多少の妨害はしても。
もちろん、αが俺に声をかけてくることはなかった。自殺行為とでも思っているのだろう。
俺がΩである事を知らないβ女性がナンパしてくることはある。取引先から好意を寄せられることもある。あるけれど…気軽に、試しになんて俺は付き合えなかった。諦めたけれど、それでもまだ、俺はまだコンちゃんを引きずっている。その状態でなんて相手に失礼だ。
一人で過ごすヒートは体への負担が大きい。栄養補給や体を清潔にといった身の回りの事もヒート中は自分でできやしない。体は不調になっていき、周期も乱れがちになった

『陸…私をつかってくれ。単なる…単なる棒だと思えばいい。』
ヒートには慣れざる得なかった。でも後ろを慰めるにはまだ抵抗があった。何より俺に執着しているαに俺のヒートの世話をさせるなんて、危機感が皆無だろう。

『治療行為だと思えばいい。私は自分の快楽を追ったりしない、約束する』
信じられないし、もしも本当に自制をするというなら、それはそれで嫌だ。俺がこいつを利用しているようじゃないか

『αの精液はオメガの妙薬 って聞いたことない?』
『な!?ば、バカ!場所をわきまえろ!』
いくら芸術ばりの容姿をしていても通りで言っていいセリフと言ってはいけない単語があるだろ!
……
俺だって男だし以前はαだった。その状態がどれだけきついかってわかる。猪瀬に至っては手術をしようとしたくらいだ。
あらゆる意味で京極の申し出は却下した






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