【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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今日はホワイトタイガーの赤ちゃんを見に行く
……成長したなぁ、あいつも。
『私の都合に合わせろ、嫌だ?ならば要らん』
そんな俺様だった京極も、人の都合を考えるようになった。
動物園にミルクの時間を確認し、それに合わせて6時に出発するのだ。
…ほんとに変わった…あの狂った宴から

あれから数年がたった。その間に何人ものΩに言われた
『京極にお礼は言わない、だってアレは犯罪だから。けれど、あの事件の前日に戻れたとしても、私は回避しない。あのマンションに行くわ』

『今の私はあの時の自分よりも幸せ』
『いかなかった未来と行った今、残念ながら、今の方が自分が満たされている』
『『『だから……あなたはそんなに自分を責めないで』』』



あの宴へと拉致られたΩたち。最初の笑顔は、運命と出会う事で得られた。
『運命と番えて幸せ』
嬉しそうに笑っていたのをみて安堵した。
けれど、あの同時に思ったのだ。
運命の番を見つけるのは難しい。
けれど、みんながみんな、運命と出会う事を望んでいるわけではない。
なのに、京極はそれでおしまいにするつもりなのか。そんなのでは赦せない。俺はそう思ったのだ。彼女たちの傷はそんなんじゃ癒えやしない

だが…
ヤツはあの彼女に運命を探し出しただけだった。

働きたいと、何があっても自分で立てる基盤が欲しいといったΩには就職先を用意した。
Ωの就職は難しい。受かるのは工場などで軽作業を低時給で短時間する仕事位だ。簡単に代えがきく仕事。それだけで生活を立てようとすれば、長時間労働しかない。
若しくは性産業か…どちらにしろ若いときにしか稼げない。
だから、キャリアを作れる環境を用意した。彼女の心が折れない環境を。

あいつは自分の会社の社内コンプラを徹底させた
Ω差別は許さない、その一方で区別もしっかりした
3ヶ月に1回、おおよそ10日Ωはヒートで休んでしまう
それらは年次休暇、もしくは欠勤という形で休ませた。
そして当人が休むことによって仕事量が増えた人にはその分の手当を出した。

それによって周囲のモチベーションが下がることも無く、寧ろ収入が増えることでヒート休暇に対して不満を持つ者は少なかった。
いまでは、その取り組みが世の中に評価されて他社も真似るようになったが、特に先駆者である京極グループは評価されて優秀なΩが集まるようになった。
そして、自立したΩを求めるαも集まるようになった。
今の時代、よほどの高給取りでない限り専業主フは難しい。中の下~下位αの稼ぎで一馬力だと、都心のマンションに住んだらその他の生活費は抑えないとやっていけないのだ。
伴侶にある程度の稼ぎを求めるαも入社する様になった。
下位でも一般的なβよりも優れたαは多く、それを求めたβが就職を希望し……京極グループの入社試験のレベルは毎年あがっていく。そして、優秀な人材が増えた京極グループの成長は凄まじい。
企業利益があがり、結果、給料も福利厚生も良くなり更に人気の企業になっていく。良循環というやつだろう。

ヒート休にも理解を示す会社で働きだした彼女は緊張した面持ちのまま俺に言った。
『京極に感謝はしない。示談金みたいなもんだもの。でも……Ωでも働ける職場をくれた。区別はあっても差別はない、そんな職場に勤める機会を得たわ。無駄にしない』
ああ、京極は個人をみて真摯に贖罪をしているのだ。
もしも、もしも、彼女が笑顔になれたのなら…彼女たちの真の希望を叶えられたなら、一人残らず心から笑える日が来たなら俺は。。。

順調にキャリアを積んでいった彼女は俺に言った。

『私が、係長よ?Ωの私が役職を得たのよ?…番に頼らなくたって生きていける。対等でいられる、その自信を得たから、彼と番えるわ。あの件がなければ、不安なまま番うしかなかった。彼に運命が現れて、捨てられたら私は母のようにボロボロになってしまうのではないかって未来におびえながら。だから…今の私が好き』
あの頃、マンションに拉致られた彼女には番うの保留にしていたαがいた。自身の母親がαに捨てられ違法な性産業に従事し病気になったというトラウマがあって、彼女はαを信じたい一方で信じ切れず動けずにいた。そんな最中のマンションでのレイプ…。
二人の間にいろいろなことがあっただろうに…
『京極に感謝はしない。だってレイプされた事実はなくならないしその後も苦しんだし、出世できたのも私が努力したからだわ。でも…職場をくれた。それがなければ………。だから……青島君はもう自分を責めないで』
番ったαと笑顔で去っていった彼女。

…Ωでも係長。けれど彼女はもっと上にいけるだろうと猪瀬が言っていた。
そうそう、猪瀬は、彼女が入社する前から職場環境を整えたり、OJT担当を選定したりと正当に部下を評価できるものを上司に選んだりと東奔西走していたとらしい。マネジメント能力の有無の見極めは猪瀬をもってしても難しかったらしく、かのΩが働くようになってからも抜き打ちで上司である部長たちを監査していたらしい。
『猪瀬自身が自分に自信がなかっただけだ。…失敗はできないと気負っていたからな』
そう、千葉さんがいっていたな。

…Ωでも係長。あれほどの巨大企業で、Ωでも役職もちになれる、のか……



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