【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「陸様……」
猪瀬に声をかけられて首を振った。今は、コンちゃんに思いを馳せている場合ではない。
守り守られる相手と出会ったコンちゃんへの痛みより、陸と態度を変えた猪瀬だ。

「どちらの病院でしょうか」
誰が言うか、ボケ。青島陸、この名前はバース科のある病院にはブラックリストとして周知されていて、どこの病院も名乗っただけで出禁になっている。そんな中、やっと見つけた病院なのだ。言えば京極達に手を打たれてしまう。

「行けばわかる」
「陸様……。怪しい病院に陸様をお連れするわけには行きません」
……連れていかれるのはお前だけどな。
言いたい事はわかる。病院だって営利企業だ、京極の名に媚びないなんて、生贄願望でもあるヤツか度を過ぎた野心家かマッドサイエンティストか、とにかく碌でもない事は確かだ。

「自分で首を掻っ捌けと?」
「いいえ。こちらで信頼出来る病院を手配します。そちらで処置をしてもらいましょう。お止めしても無駄な事は存じておりますから」
「分かった。ただ二三日中には治療を開始しないと間に合わないからな。」
暗にそれより遅くなれば、見つけた病院に行くと脅す。
「…………はい」

猪瀬の渋面に笑ってしまう。元々俺は猪瀬達が用意する病院での治療が希望だった。誰だってイカれた病院で診てほしくない。けれど、ヤバイ病院でもイイという覚悟を見せないとコイツは動かない。それが猪瀬も分かっているからこその表情だ。
まぁ実際、ヤツが病院を提示しなければヤバイ病院に行くつもりだしな。

「貴嗣様がお見舞いに行くのは許可していただけますか?」
「口調。いいよ」
「かし……分かった」

京極の息のかかった病院と言うことは、猪瀬との解除がされた直後に京極が噛む、その可能性もある。それを考えなかったわけではない。ただ……今の京極ならば、そんな事はしないと思ったのだ。甘いと言えば甘いのかもしれない。けれど、今の京極ならば…。

…………謝罪行脚。
詳しくは知らない。
けれど、Ω達は例のゲスαから番解消はされている。解除というよりは解消、Ωに、より後遺症が残りにくいと言われているのが、結びつきの弱い番のαの死亡による契約の消滅。多分、ゲスα達は…………死亡している。

千葉さんの手配で、あの場にいたΩのうちの一人とあった。解消後、運命のαと出会ったらしい、京極の紹介だったと……。
レイプされた事実は変わらない。けれど、今、幸せだと彼女は言った。
フラッシュバックはする、けれど、番のαとなら乗り越えていける、いずれ瘡蓋になり、傷跡も薄くなっていくだろうと。
『だから……貴方は自分を責めすぎないで。貴方も被害者なの。そんな人を恨むほど、私は落ちぶれてはいないわ』
彼女は朗らかに笑った。
ああ…と思った。
おれが納得できる解決……。

千葉さんは、京極の監視を巻いてから来いと言った。京極にはこの会合は秘密ということなのだ。
京極は俺にこのΩの事をまだ言うつもりはなかった。あの場にいたΩ全員がちゃんと笑えるようになって初めて、俺の赦しを請い、関係を新たに築き直そうとしているのだと思った。
その時、おれがどう応えるかは分からない。けれど、ヤツの覚悟を見た気がした。
だから……

「ただし、美味いスコーン持って来いよ?」

「必ず、お伝えします」

………………口調、直らねぇなぁ

























~~~~~~~~~~~~~~~~~~

君は甘いではなく、
チョロインなのだ!
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