【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

文字の大きさ
上 下
169 / 243

167

しおりを挟む
「幼稚園のころよ。私は複数の会社の社長としてやっていて、家に帰ることも少なかった。そんな時に貴嗣はほかの子家庭を見てうらやましかったみたい。地域柄アルファオメガの夫婦多かった。そして、オメガの方はみんな専業主婦で子供のそばにいつもいた。それで、貴嗣は母親がオメガだったら?家にいて自分と過ごしてくるのだろうか?そう思ったのよ。」
まさか、まさかそれだけで…
体が恐怖のあまりカタカタと震える。

「誤解のないように言っておくけれど、当時の貴嗣はビッチングなんて知らなかった。その能力は精通を終えた頃から発現するといわれていたから、夫も貴嗣に教えていなかった。」
「……」
「あの子は最上位アルファだわ。だからビッチング能力も高かった。私と手をつないで運動会。その程度の夢を見ただけなのに。本当になってしまった。」

…母親にそばにいてほしい。子供がそう思うのは罪なことだろうか?
一緒に晩御飯を食べる夢、それを見るななんて言えない。

「私も、夫の言葉で安心していたから自分がオメガになるなんて思ってもなかった。だから熱が出た時疲れが溜まっているだけだと思ったわ。そして自分がオメガになっているとも知らず外出してヒートになって夫以外のαに噛まれたのよ。」

……俺は、コンちゃんからその可能性を知らされていた。ただ、この女性は全く想定をしてないままに見ず知らずのアルファーに襲われ番にさせられた。優位な立場であるアルファが突然弱者になって襲われた。その恐怖はいかほどだったのだろう。

「自分の体力に対しての自惚れもあったから護衛もつけてなかった。だから私はそのままアルファーにさらわれて2週間ほど監禁されていたわ。ヒートが終わって頭が回って救出されるまで間、夫を裏切ってしまったという罪悪感に苛まれたわ。けれど、もっと辛かったのは貴嗣の方ね。やっと戻った家に貴嗣はいなかった。激怒した夫の暴行で入院していたの」
「……」
「幼い子供が母親と一緒に過ごす時間が欲しい。そう思うことがそんなに罪なことなのかしら?あの子はかなり位の高いアルファだったから回復力も凄まじいからなんとか生き残れた。それぐらい夫はあの子を痛めつけたらしいわ。病院には奇跡的だって言われたわ」

……
京極はピッチングの仕方を教わっていなかった。ただただただ母親恋しくて願ってしまっただけ。五歳の子供の母こいしい、そこに罪はあるのだろうか?

「夫を何とか説得して入院している貴嗣のもとにお見舞いに行った。あの子にはかなりの量の睡眠薬が処方されていた。眠るのを拒否してしまうから、成人並みの量を服用させないと体が抵抗してしまって効かなかったらしいわ。なぜ眠るのが嫌なの?と聞いたら、眠ってしまうと願いを夢に見てしまうからと。起きているうちはなんとか制御できるものも、眠ってしまうとそばにいて欲しいと思ってしまうもの、と。」

「五歳児が眠ることを拒否するのよ。夫に対して殺意が湧いたわね。」

「あなたは?あなたは息子さんを恨んではいないのか?」

「α女性の妊娠率は低いわ。貴嗣は不妊治療をすごく頑張ってやっとできた子なの。不妊治療がどれだけ大変かなんて若い男のコにはわからないわよね…二人目も不妊治療でと考えることすらできなかった。でもオメガになったらね、すぐに次の子を妊娠したの。バリキャリとか言われてもいるけれど、子供は3人欲しかったのよ。だから、貴嗣のおかげで理想の家庭をつくれたの。」

…強い強い女性だ。そんな簡単に割り切れることではなかったろうに。複数の会社の社長を任され、上に立たねばならない人のヒートに、一週間の休みに部下は寛容ではない。

「再度聞きます。息子さんではなくあなたの夫があなたをピッチングしたとは考えないのですか?息子さんに責任をなすりつけただけとかは?あなたに嫌われなくあなたを縛り付けることができたのだから、旦那さんが一番の受益者だ。」

本当に本当にビッチングの方法が思うだけなのだろうか?願うだけなのだろうか?身体的接触とか、そういうものを、自分のフェロモンを相手に浴びせるとか、そういうものを必要としないものなのだろうか?

「そうね、夫が一番の利益を得たわ。でもね、夫ではないの。私のα性が強すぎたのもあって、不妊治療はあまりのもきつかった。αでいられるからいう夫の言葉に安心して嫁いだはずだったのに、いっそΩになりたいと泣き言を言った時もあったわ。けれど、夫のΩに対する嫌悪は強すぎてビッチングは不可能で謝罪をされたわ。トラウマも克服できないαですまない、と。私も不妊治療でボロボロだったけど、そのボロボロの私をみて夫も傷ついていたのね、自分の不甲斐なさに。二人目が欲しいなんて言えなかったわ。夫にビッチングが可能だったら、もっと早く私をΩにしていたはずよ」

眉を寄せながら言う。番の弱さ、二人だけのやり取りを俺に言うのは抵抗もあったろう。
二人だけの秘密であったはずだ
ただ、俺が問い詰めたから、迷った末に答えた…







































~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チョロイン陸、
サンクスコストって知っているかなぁ?




しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

処理中です...