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「幼稚園のころよ。私は複数の会社の社長としてやっていて、家に帰ることも少なかった。そんな時に貴嗣はほかの子家庭を見てうらやましかったみたい。地域柄アルファオメガの夫婦多かった。そして、オメガの方はみんな専業主婦で子供のそばにいつもいた。それで、貴嗣は母親がオメガだったら?家にいて自分と過ごしてくるのだろうか?そう思ったのよ。」
まさか、まさかそれだけで…
体が恐怖のあまりカタカタと震える。
「誤解のないように言っておくけれど、当時の貴嗣はビッチングなんて知らなかった。その能力は精通を終えた頃から発現するといわれていたから、夫も貴嗣に教えていなかった。」
「……」
「あの子は最上位アルファだわ。だからビッチング能力も高かった。私と手をつないで運動会。その程度の夢を見ただけなのに。本当になってしまった。」
…母親にそばにいてほしい。子供がそう思うのは罪なことだろうか?
一緒に晩御飯を食べる夢、それを見るななんて言えない。
「私も、夫の言葉で安心していたから自分がオメガになるなんて思ってもなかった。だから熱が出た時疲れが溜まっているだけだと思ったわ。そして自分がオメガになっているとも知らず外出してヒートになって夫以外のαに噛まれたのよ。」
……俺は、コンちゃんからその可能性を知らされていた。ただ、この女性は全く想定をしてないままに見ず知らずのアルファーに襲われ番にさせられた。優位な立場であるアルファが突然弱者になって襲われた。その恐怖はいかほどだったのだろう。
「自分の体力に対しての自惚れもあったから護衛もつけてなかった。だから私はそのままアルファーにさらわれて2週間ほど監禁されていたわ。ヒートが終わって頭が回って救出されるまで間、夫を裏切ってしまったという罪悪感に苛まれたわ。けれど、もっと辛かったのは貴嗣の方ね。やっと戻った家に貴嗣はいなかった。激怒した夫の暴行で入院していたの」
「……」
「幼い子供が母親と一緒に過ごす時間が欲しい。そう思うことがそんなに罪なことなのかしら?あの子はかなり位の高いアルファだったから回復力も凄まじいからなんとか生き残れた。それぐらい夫はあの子を痛めつけたらしいわ。病院には奇跡的だって言われたわ」
……
京極はピッチングの仕方を教わっていなかった。ただただただ母親恋しくて願ってしまっただけ。五歳の子供の母こいしい、そこに罪はあるのだろうか?
「夫を何とか説得して入院している貴嗣のもとにお見舞いに行った。あの子にはかなりの量の睡眠薬が処方されていた。眠るのを拒否してしまうから、成人並みの量を服用させないと体が抵抗してしまって効かなかったらしいわ。なぜ眠るのが嫌なの?と聞いたら、眠ってしまうと願いを夢に見てしまうからと。起きているうちはなんとか制御できるものも、眠ってしまうとそばにいて欲しいと思ってしまうもの、と。」
「五歳児が眠ることを拒否するのよ。夫に対して殺意が湧いたわね。」
「あなたは?あなたは息子さんを恨んではいないのか?」
「α女性の妊娠率は低いわ。貴嗣は不妊治療をすごく頑張ってやっとできた子なの。不妊治療がどれだけ大変かなんて若い男のコにはわからないわよね…二人目も不妊治療でと考えることすらできなかった。でもオメガになったらね、すぐに次の子を妊娠したの。バリキャリとか言われてもいるけれど、子供は3人欲しかったのよ。だから、貴嗣のおかげで理想の家庭をつくれたの。」
…強い強い女性だ。そんな簡単に割り切れることではなかったろうに。複数の会社の社長を任され、上に立たねばならない人のヒートに、一週間の休みに部下は寛容ではない。
「再度聞きます。息子さんではなくあなたの夫があなたをピッチングしたとは考えないのですか?息子さんに責任をなすりつけただけとかは?あなたに嫌われなくあなたを縛り付けることができたのだから、旦那さんが一番の受益者だ。」
本当に本当にビッチングの方法が思うだけなのだろうか?願うだけなのだろうか?身体的接触とか、そういうものを、自分のフェロモンを相手に浴びせるとか、そういうものを必要としないものなのだろうか?
「そうね、夫が一番の利益を得たわ。でもね、夫ではないの。私のα性が強すぎたのもあって、不妊治療はあまりのもきつかった。αでいられるからいう夫の言葉に安心して嫁いだはずだったのに、いっそΩになりたいと泣き言を言った時もあったわ。けれど、夫のΩに対する嫌悪は強すぎてビッチングは不可能で謝罪をされたわ。トラウマも克服できないαですまない、と。私も不妊治療でボロボロだったけど、そのボロボロの私をみて夫も傷ついていたのね、自分の不甲斐なさに。二人目が欲しいなんて言えなかったわ。夫にビッチングが可能だったら、もっと早く私をΩにしていたはずよ」
眉を寄せながら言う。番の弱さ、二人だけのやり取りを俺に言うのは抵抗もあったろう。
二人だけの秘密であったはずだ
ただ、俺が問い詰めたから、迷った末に答えた…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チョロイン陸、
サンクスコストって知っているかなぁ?
まさか、まさかそれだけで…
体が恐怖のあまりカタカタと震える。
「誤解のないように言っておくけれど、当時の貴嗣はビッチングなんて知らなかった。その能力は精通を終えた頃から発現するといわれていたから、夫も貴嗣に教えていなかった。」
「……」
「あの子は最上位アルファだわ。だからビッチング能力も高かった。私と手をつないで運動会。その程度の夢を見ただけなのに。本当になってしまった。」
…母親にそばにいてほしい。子供がそう思うのは罪なことだろうか?
一緒に晩御飯を食べる夢、それを見るななんて言えない。
「私も、夫の言葉で安心していたから自分がオメガになるなんて思ってもなかった。だから熱が出た時疲れが溜まっているだけだと思ったわ。そして自分がオメガになっているとも知らず外出してヒートになって夫以外のαに噛まれたのよ。」
……俺は、コンちゃんからその可能性を知らされていた。ただ、この女性は全く想定をしてないままに見ず知らずのアルファーに襲われ番にさせられた。優位な立場であるアルファが突然弱者になって襲われた。その恐怖はいかほどだったのだろう。
「自分の体力に対しての自惚れもあったから護衛もつけてなかった。だから私はそのままアルファーにさらわれて2週間ほど監禁されていたわ。ヒートが終わって頭が回って救出されるまで間、夫を裏切ってしまったという罪悪感に苛まれたわ。けれど、もっと辛かったのは貴嗣の方ね。やっと戻った家に貴嗣はいなかった。激怒した夫の暴行で入院していたの」
「……」
「幼い子供が母親と一緒に過ごす時間が欲しい。そう思うことがそんなに罪なことなのかしら?あの子はかなり位の高いアルファだったから回復力も凄まじいからなんとか生き残れた。それぐらい夫はあの子を痛めつけたらしいわ。病院には奇跡的だって言われたわ」
……
京極はピッチングの仕方を教わっていなかった。ただただただ母親恋しくて願ってしまっただけ。五歳の子供の母こいしい、そこに罪はあるのだろうか?
「夫を何とか説得して入院している貴嗣のもとにお見舞いに行った。あの子にはかなりの量の睡眠薬が処方されていた。眠るのを拒否してしまうから、成人並みの量を服用させないと体が抵抗してしまって効かなかったらしいわ。なぜ眠るのが嫌なの?と聞いたら、眠ってしまうと願いを夢に見てしまうからと。起きているうちはなんとか制御できるものも、眠ってしまうとそばにいて欲しいと思ってしまうもの、と。」
「五歳児が眠ることを拒否するのよ。夫に対して殺意が湧いたわね。」
「あなたは?あなたは息子さんを恨んではいないのか?」
「α女性の妊娠率は低いわ。貴嗣は不妊治療をすごく頑張ってやっとできた子なの。不妊治療がどれだけ大変かなんて若い男のコにはわからないわよね…二人目も不妊治療でと考えることすらできなかった。でもオメガになったらね、すぐに次の子を妊娠したの。バリキャリとか言われてもいるけれど、子供は3人欲しかったのよ。だから、貴嗣のおかげで理想の家庭をつくれたの。」
…強い強い女性だ。そんな簡単に割り切れることではなかったろうに。複数の会社の社長を任され、上に立たねばならない人のヒートに、一週間の休みに部下は寛容ではない。
「再度聞きます。息子さんではなくあなたの夫があなたをピッチングしたとは考えないのですか?息子さんに責任をなすりつけただけとかは?あなたに嫌われなくあなたを縛り付けることができたのだから、旦那さんが一番の受益者だ。」
本当に本当にビッチングの方法が思うだけなのだろうか?願うだけなのだろうか?身体的接触とか、そういうものを、自分のフェロモンを相手に浴びせるとか、そういうものを必要としないものなのだろうか?
「そうね、夫が一番の利益を得たわ。でもね、夫ではないの。私のα性が強すぎたのもあって、不妊治療はあまりのもきつかった。αでいられるからいう夫の言葉に安心して嫁いだはずだったのに、いっそΩになりたいと泣き言を言った時もあったわ。けれど、夫のΩに対する嫌悪は強すぎてビッチングは不可能で謝罪をされたわ。トラウマも克服できないαですまない、と。私も不妊治療でボロボロだったけど、そのボロボロの私をみて夫も傷ついていたのね、自分の不甲斐なさに。二人目が欲しいなんて言えなかったわ。夫にビッチングが可能だったら、もっと早く私をΩにしていたはずよ」
眉を寄せながら言う。番の弱さ、二人だけのやり取りを俺に言うのは抵抗もあったろう。
二人だけの秘密であったはずだ
ただ、俺が問い詰めたから、迷った末に答えた…
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チョロイン陸、
サンクスコストって知っているかなぁ?
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