【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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ヒートを終えて、猪瀬と俺の関係は変わった。
何がどうとかうまくは言えないが、確かに変わった。

細かい所ならば、猪瀬が盗っていく下着の量が減った。今は、一枚。
以前は2枚も3枚も持っていっていたから、上位αの性欲はすげ~なぁと思っていたが。
今なら分かる。猪瀬は一部を京極に渡していたのだろう。京極は下着に残った俺のフェロモンで、俺のヒートが近い事を察していたのだ。…………本当に動物的だな。
そして、ヒートが明けて、猪瀬は俺のフェロモンで自慰をするのをやめた。だから、一枚で足りるようになったのだ。

更に、猪瀬は俺を陸様と呼ぶようになった。青島でもなく、番様でもなく、陸様と。…………青島が一番良いんだけどな
そして同時に、ハウスキーパーも雇った。蔦子さんという方で、もともと猪瀬の家にいた方で猪瀬にとっては乳母のような女性らしい。

…………そういうことなのだろう。
猪瀬は、俺を自分の番としては見ていない、俺をいずれ京極貴嗣の番となる者として見ている。俺に仕える者としての覚悟を決めたと呼び方を変えることで表明した。

俺がいつ猪瀬を解放するかも分かっていないくせに。お前はそれで良いのか。新たな番を持てないままに、この男は俺のヒートに部下として仕えるつもりなのだろう。
…………チョン切る前に解放してやらないとな。猪瀬のあの様子だと、京極への操立ての為に陰茎切除手術をやりかねん。
多分、ヤツは今ホルモン剤を常用している。


「蔦子さん、時間なんで一緒にいいですか?」
ヒートが明けてからも京極との面会は続けている。
猪瀬の都合がつかない時は蔦子さんに同席してもらっている
蔦子さんには京極も頭が上がらないらしい。猪瀬の乳母ということは京極の乳母とほぼ同意語、だから無体なことはできないはずだ。
最も最近のやつが、そんな事をするようにも思えない。一応、万が一の備えだ。
猪瀬と番って以後、京極との会合は苦痛だった。ヤツは別れ際に俺にフェロモンを浴びせてきた。番がいる俺にとっては暴力と同じ行為だ。えげつない嫌がらせだと思ったが、今なら分かる。京極は俺に少しでも自分の跡を残したかったのだ。俺が苦しもうと、自分を俺に刻みたかったのだ。
情念というものは醜いものなのだということを思い知る
けれど、今、京極は自分のフェロモンをできる限りを押し殺している。フェロモンが届かないように ディフューザーまで持ち歩いている。だから、猪瀬不在の会合もこなせている。
今までの京極は、俺に自分を刻み込む事を考えていた。俺の体調や心よりもそっちを優先していた。
今は……。

最近、京極と猪瀬は忙しく、面会は1時間程度で終わることが増えた。
猪瀬たちが何で忙しくなっているのかは知っている。コンちゃんから教えてもらった。
謝罪行脚だ
あの狂った宴で被害を受けたΩたちに対して謝罪と補償を行っている
あのゲスαどものSNSは更新されていない。 中毒とも言えるくらいSNS をアップしていたαたちだ。多分もう……。
彼女たちは辛い契約を解除されているのだろう。だからと言って、受けた傷がなくなるわけではない、それだけで許されて良い事ではない。

ただ、京極を神のように 崇める猪瀬が京極が頭を下げることに何も言ってないのだ。
それだけでもだいぶマシな人間になった。

……多分 こいつらは全てが片付いた後、俺に許しを求めにくるのだろう
いつになるのか、ただとりあえず後2ヶ月 、次のヒートの前には猪瀬を解放しようと思っている。猪瀬が陰茎切除手術を決意する前に。

「……陸?」
問題を解く手が止まった俺に京極が小首をかしげる
「いや 何でもない」

手の止まった俺を見て問題に悩んでいると思ったのだろう。京極が説明をしてくれる
「ここはね…。」

やはり京極はすごい。知識が膨大にあり、そして多角的に物事を見れる
こんな完璧な人間なのになぜあんな愚かなことをしてしまったのか
…………俺を求めたからだ。
俺が死ねば、この男もついてくるだろう。
俺は…………俺はコンちゃんが好きだ。けれど、コンちゃんを守る、けれど、もしもコンちゃんが不慮の事故で亡くなったとしても、猪瀬のようにその知らせだけで肉体が死んでしまうなんて事にはならないだろう。コンちゃんもだ。
…………千葉さんは違うだろう。コンちゃんを運命と公言した千葉さんの執着。蓮兄さんの執着、京極の…………

「陸?……今日は 課題はここまでにしておこうか。悩み事か?私では力になれないか」
首を振るとちょっと傷ついたような顔をした。猛獣のくせに時々可愛いから不思議だ。
「他の人に相談するから大丈夫」
「そう……」
一瞬見せた嫉妬。そして諦め…。京極は少しだけ情念を押さえられるようなった気がする





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