【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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156-猪瀬

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秘書室から連絡が入った
『青島様がいらっしゃいました。お通ししてよろしいでしょうか』
「陸が!?すぐ通してくれ」
貴嗣様が席を立ち、自らドアを開けにいく。現れた青島に抱きつかなかっただけでも快挙だが、手を握られた番の顔色は悪い。
俺の番に触るな!
もう少しでそう言いそうになった。違う、コレは貴嗣様の……
「陸、どうしたの?珍しいね。会えて嬉しい」
青島が貴嗣様の手を振りほどき言った。
「猪瀬の、俺の番の有給休暇をもぎ取りに来た。番休暇は労働基準法で定められているからな。出張なんて行かせない」
「「え……」」
貴嗣様と俺の戸惑いが重なった。
俺は青島のヒートが近い事に、貴嗣様は恐らく俺の事を青島が『俺の番』と呼んだことに。貴嗣様にとって青島は自分の番だという認識が強いのだ。

青島の最近の憂いはヒートへの恐怖だったのか。
初ヒートの後、青島は変わった。天真爛漫、馬鹿全開の笑いから愁いを帯びた笑顔に。
無理もない。
抱く方と思っていた自分が抱かれたくて抱かれたくてしかたない時間を過ごしたのだ。
手首に残っていた擦過傷、己を律する事が叶わず物理的に封じたのだろう。
ディルドなんて、Ωにとっては生理用品みたいなもんだろう。たが、俺がナプキンを使えと言われたら、ソレは流石に心も折れる。
青島の生い立ちを考えればどれだけ打ちのめされたなんて想像がつく。
コイツは筋肉馬鹿ならぬ精神馬鹿だ。底辺αでも頑張り続ければポテンシャルを越えられる、鋼の精神を持てば生来のものに屈する事はない、そう思ってやってきた人間が、肉欲に負けたのだ。
怖い、だろうな……。
番契約をした後のヒートは、未契約のヒートより辛いときく。その時、番と過ごせれば至福の時間に、番不在ならば地獄の時間になると言う。
前回のヒートがトラウマになっている青島に更に酷なヒートをやり過ごせというのは……。
「陸は私の番だ!猪瀬のではない!」
「俺は猪瀬のものだ!この噛み跡は猪瀬が刻んだ!」
青島が力任せに襟元を広げて噛み跡を貴嗣様に見せた。不安なのだろう、そのせいで青島も攻撃的になっている。けれどそれは愚策だ!
「猪瀬ー!」
身構えたが、効果はなかった。貴嗣様の俺を叩き潰すような威圧が襲ってきた。肺が押し潰されて血を吐いた。
俺を呼ぶ憎しみの籠もった声。憤怒の瞳。俺の神が、俺に死んでしまえと言っている。目の前が真っ暗になる。
「ふざけんな!お前は俺の番なんだよ。ついて逝くからな!」
番が俺を包み込む。
ああ、そうだ。俺は番の為にも生きなければ…。
俺を守るように番が立ち塞がる。
「陸!」
「前にも言ったが、猪瀬に俺はついていく。来世とか地獄とかがあるのかはわからないが、お前が俺達を殺して後追いしても猪瀬と俺が共にあるのをみるだけだぞ。」
「陸、何故?猪瀬は陸の事を想ってなどいない。陸のヒートが近いことすら気が付かなかったんだぞ!私の方が……」
貴嗣様の声。
そうだ、貴嗣様……
「だから?猪瀬は俺のヒートの予兆を見過ごした。確かに俺への興味は薄いのだろう。で?ヒートに気がついたあんたは俺から番を離させた。番不在のヒートがどれほどのものか知らないとは言わせない。俺を懲らしめるためか、ならば、番の体調も見れない猪瀬よりもあんたの方がクズだ」
「違う!そうじゃない!ただ、陸がヒートを私以外と過ごすなんて耐えられなかっただけだ!なのに、なのに!酷いよ陸!私が君をどれだけ欲しているか知っているのにこうして宣言しにくるなんて!」
「酷い?」
はんっと青島が鼻で嗤った。不味い、青島。何を言うつもりだ。理知的になれ。俺らを追い詰めたあの時のお前に戻れ。不安に負けて喧嘩腰になるな。
貴嗣様も自分の番が他のαとヒートを過ごすなんて、恐慌状態なのだ。
「俺は当然の権利を主張しに来ただけだ。 ヒートを俺の番と過ごす。それだけだ」
「違う違う!陸の番は猪瀬じゃない、私だ!陸は私の為にΩになったんだ!だから私の番だ!」
「Ωになったんじゃない!させられたんだ!お前にビッチングされてな!!」
………………!
なんでこのタイミングで!今までの青島からして、何れはコレを武器にしてくるとは思っていた。こんなバラしかたではなく!それだけ今の青島は追い詰められているのか。戦略をたてれないほどの恐怖に苛まれているのか。
「あ…………り、陸……そ、そんなのは都市伝説だ」
貴嗣様の狼狽え様が全てを物語っている。こんな風に言われてそれを信じる者などいない。普段の貴嗣様ならばもっと上手くごまかせたはずだ。
クソっ。青島が気が付いていると思った時点でもっと貴嗣様と擦り合せをしておくべきだった。
この場で一番冷静なのは俺か。





















































~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
も~いくつか寝ると♪
ぼんのー10倍
いや~ありがたい。私には絶対不可能な数と思ってました。
読者様、いつもありがとうございます!

というわけで(?)ブクマ1080人になりましたら、キリ番(?)記念に期間限定で京極サマ視点を一話だけアップします。
孤高のα感が減ってしまうので、UPは…と迷いましたがここらで京極様の好感度を少しだけでもあげておきたいという作者の野望(?)が…。好感度が上がりそうな物を選びました。…いや、アレで上がるのか?孤高感が崩れるだけか???
京極サマの孤高感が崩れる可能性もあるので読む読まないは読者様の責任でお願いいたします。
なお、二三日?で非公開にいたします・。。。

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