【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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154,猪瀬

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朝のシャワーが日課になった。
目が覚めると番が腕の中にいて、暖かい気持ちになる。
違う、これはフェロモンが勘違いをさせているだけだ。

シャワーを浴びて髪を乾かし終える頃に味噌汁の匂い。
そのままダイニングに行けば朝食が用意されている。
温泉卵に納豆にサラダ、煮物で時々肉or魚に代わる
それが青島の朝食らしい。割としっかり食っているんだなと言ったら
『コンちゃんの隣に立てる体型になりたかったからな。今更習慣は変えられない』
……返答に困った。
青島が、底辺αだった青島がコンちゃんの為にどれだけ努力をしてきたかは分かっている。
…………俺達は。俺と貴嗣様は…
それでも、番ってしまえば解決すると、だからΩにしてしまえばと思っていたのに……。
お人好しの青島はそれでも俺の分も用意する。

朝食を終えて食器を食洗機に入れると青島が弁当を渡してきた。
一人分作るのと二人分作るのとで手間はそれほど変わらないと言っていたので昼を用意してもらっている。
「ありがとう」
「どういたしまして」
家事は青島が全て行っている。一人暮らし だったから問題なくできるということだった。俺はあまりこの家に他人を入れたくはない。そこは青島も同感だったから家事は全て青島に依頼した。代わりに青島には 家事代を払っている

「行ってくる」
「ああ」
青島が見送りに出てくれた。俺に対して思うことはあっても、それでも礼儀は守るのが青島だ。

大学の授業がない時は貴嗣様の会社に出社をしている。今日は家から会社に直行だ。
「おはようございます」
すでに出社してる貴嗣様に挨拶をすると、 貴嗣様は頷いた後、手を差し出された。無言で密封袋に入れた青島の下着を渡す。
貴嗣様はそれを持って少しだけ続き部屋の方で休まれる。何をしているか考えないようにしている。青島と俺は番にはなったが、青島の元を離れると意外となんとかなるものである。逆に言うと、同居中はふわりふわりと青島のフェロモンが俺を無意識のうちに誘ってくるから大変だ。ごくりと何度も唾を飲み込む。けれどアレは貴嗣様のモノであって、俺のモノではない。いずれ貴嗣様に返却をするものだから、俺が手を伸ばしていいものではないのだ。貴嗣様も青島と俺の同居は反対だ。だが仕方ない。俺が手を出さないと分かっているから、同居をなんとか認めているのだろう。青島の背後に京極家と千葉がいるのが痛い。
先日の俺らの行動は京極の奥様の逆鱗、つまりは当主の逆鱗に触れた。千葉もコンちゃんを守った青島に恩義を感じている。だから、青島の安定の為に住居などの環境が手配され、今の俺達では太刀打ちができない。

部屋から戻ってきた貴嗣様に弁当を渡す。
陸、と呟きながら弁当を召し上がれ、そしてまた続き部屋に行かれる。
俺の番を…………違う、アレは貴嗣様のだ。コレ以上考えてはいけない。
ソレに……同じ穴のムジナだ。
青島はインナーをほぼ同じ物で揃えている。だから洗濯籠に入っている使用済みインナーと洗濯済をこっそりと交換している。一枚は貴嗣様にもう一枚は……。アレは主の番なのに。
『番なんて難儀なもんだな』
そうだな青島。俺もここまで影響されるとは思わなかったよ。
何故、あのゲスαどもは平然としていられるのか。番に他のαたちの相手をさせるなんて、自慰ですらこんなにも心臓が締め付けられるのに……

仕事の区切りがついたので社食で昼を取る。福利厚生の一環で作られたここのレベルは高く、俺達役職もちもここで食べる事が多い。席待ちがないように幹部エリアは植栽で区切られちている。
食事を進めていると離れたところから御曹司という単語が聞こえてきた。αは耳が鋭いのだ。
恐らくは下位αだ。
『しかしまあ、御曹司も馬鹿だよな?』
『間抜けというか……』
『まあまだ若いしね。』
『甘い、甘い。というか、側近にねとられるってどういう感じだよ?しかも寝盗った側近をいまだに使っているとは。処分もできない甘ちゃんだな。』
怒りの余り立ち上がろうとすると、貴嗣様に手で抑えつけられた
「いい。私は何とも思わん。…………事実だしな」

俺の神が。俺のせいで貶められている。俺のせいで!
貴嗣様が寝取られ男の烙印を押されている。
救いなのは、貴嗣様が周囲の言葉など気にしていない事だ。昔から周囲の評価など気にされない方だった。周囲がどう思っていようと、皆、貴嗣様の地位実力の前には跪かずにはいられない。だから貴嗣様は効率的な行動をなさる。相手の感情に配慮する必要など無かったからだ。俺もそう思っていた、貴嗣様のカリスマがあれば既成事実をつくれば皆従わざるえないから。…………青島の事も。

『猪瀬もよくもまぁ御曹司の隣にたてるよな』
うるさい。
『今後NTRって呼ぶか?御曹司だとバレバレだし?』
『あはは、そっちの方がやばいだろ』
嘲笑
よくもよくもよくも……!





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