【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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150-猪瀬

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累が帰った後しばらくして インターホンが鳴った
青島が出る。ついつい青島を目で追ってしまう。……千葉の声が漏れ聞こえる。貴嗣様もいるのか。
「すぐに俺の番と行く」
俺の番。青島の言葉に心がほっこりする。けれど同時に貴嗣様を思っていたたまれなくなる
「猪瀬。とりあえず下で会うから出るぞ」
「……分かった」
青島の後を追って部屋を出る。何故千葉が?
「ああ、このマンションを手配してくれたのが千葉さんだから。蓮兄さんより信用できるし」
寂しそうに笑う番に胸が締め付けられる。慰めたくてハグをした。
誰だ、お前を傷つけたのは。千葉か鷹司蓮か。許さない。番が泣いている、フェロモンでわかる。
守るから。腕に力を込めると、番のフェロモンが和らいだ。ふわりと俺を包み込む
「……番なんて難儀なもんだな」


エントランスに行くと貴嗣様と千葉がいた。
貴嗣様……!
俺が ひざまずこうとするのを青島の手が止めた。特に力が入っているわけでもない。 ただ青島が嫌がったというのが、俺の動きを止めたのだ
…………契約というのはここまで作用してくるものなのか。

青島が千葉に会釈する
「そろそろこんちゃんの首に巻いたネックガードの暗証番号を知りたいんだけど?」
「それ、この前も断りましたよね? こんちゃんに直接伝えるって」
番のフェロモンが揺らぐ。千葉か、コイツが俺の番を傷つけたのか。
「…………随分と手懐けたな」
千葉が睨む俺に対して同情のこもった目を向けた。
「番契約ってこういうものでは?」
「まあこういう側面もあるわな」
「で?」
「分かった」
千葉が意外と素直に引き下がった。

「で、そちらは?」
青島が貴嗣様をみる
「猪瀬と暮らすのはやめてほしい。」
「俺と猪瀬は番です。関係のないものに口出しをされる筋合いはない」
「関係はある!」
「自分の部下という程度では口出しできませんよ」
「違う!君は私の番だ!」
貴嗣様の叫び声に咄嗟に体が動いた。
「猪瀬……」
貴嗣様の力ないつぶやきに自分が何をしてしまったのかを自覚した。俺はとっさに 貴嗣様と青島の間に割って入ってしまったのだ。背中に青島を庇うようにして
俺が貴嗣様を妨害する日がくるなんて!
俺の主を!
俺の神を!
混乱してうずくまる俺をふわりと香りが包む。いたわるような香りにしがみついた。

「お優しいこって」
千葉が冷やかすように言う
「俺の番だからな。無理矢理契約した以上、守るさ」
『俺の番』……。優しい単語に安堵する。
「何かするならとうにしていたとは思うけど、一応言っておく。余計なことはするなよ。」
「……なぜ、猪瀬だったんだ」
貴嗣様の声が震えている。そうさせたのは俺だ。この俺……。
「答えなくてもわかってんだろ。」
「…………」
番が死亡すると、番契約も消滅する。それは上位だろうが下位だろうが関係ない。青島が抵抗しようと、番を殺せば青島はフリーになる。
青島に懐かれていた、それだけで宮下に命がけの運試しをさせた貴嗣様だ。あの場にいたゲスαと青島が番っていたら、もう始末していただろう。
今だに俺は生きている。俺は貴嗣様に認められていたのだ。
ならば、俺のすべき事は決まっている。
「猪瀬、お前にも余計な事をするなと言っているんだ。猪瀬が逝けば俺もついて逝く」
「……」
運命といった結びつきの強い関係だった場合や死んでいく方の執着が強い場合、亡くなる際に伴侶連れて逝く事がある。物理的に何かしたという証拠などはない。ただ突然心臓が止まるのだ。
俺に青島に対する強い執着なんて無い。けれど、置いていかれる方に執着があり上位の場合、稀ではあるが心不全となることがある。
青島には俺に対する愛情なんてない。けれど、守るという青島の言葉に俺と心中するという決意がみえる。コイツの守るは危険だ。捨て身の攻撃だから、思いだけで心不全を起こさせるかもしれない。そして青島が死んだ時、貴嗣様も引きづられて死んでしまう。
それだけは回避せねば。
貴嗣様は支配者だ。この世界の支配者にもなれる方なのだ。
……俺は死ぬ事も叶わないのか。貴嗣様の邪魔にしかならないのか
……
「貴方の呼び出しに応じたのは、俺のこの決意を貴方と猪瀬に見せるためだ。」
青島の声が死刑宣告のように響いた…

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