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デジャヴ?
兄が泣いている。
そして白い天井に消毒液のニオイ。
うん、デジャヴ。
「陸、気がついたか!」
そのまま腹に抱きついてきて泣かれた。
「陸陸陸…今度こそ助からないかと思った」
「心配かけてごめん」
グスグス泣いている兄の頭を撫でながら、周囲を見渡した。
またも個室。ただ前回と異なるのは猪瀬が隣のベッドに寝ている事か。
アナフィラキシーショック後の回復には薬剤は当然だが、番から漏れ出るフェロモンも効果がある。その為に同室にされたのだろう。
寝巻き姿の兄が、ようやく落ち着いた。……蓮兄さんがキレそうだ。今の俺の体によくないから、看病したいなら、蓮兄さんのニオイは無くせと服を着替えさせられたのだろう。
ここまで蓮兄さんの痕跡が無い兄はどれくらいぶりだろうか。
……
「あれからどれくらい経った?」
「半日。昨日の夜に病院に担ぎ込まれたんだ。」
「そっか……」
猪瀬のフェロモンが香っている。
優しい香りだと思うのは番ったからか。俺がフェロモンレイプをした。
状況が状況とはいえ、許されることではない。いくらαが複数の番がもてるとはいえ俺のようなΩと番になってしまうと問題が発生するだろう。
俺は、バース変更したのが京極という最高位αだったせいかΩとしてのランクはかなり高い。α社会同様Ω社会にもランクがある。そしてαΩ社会にもランクがあるのだ。αは一方的に番解除ができるとされているが、実際には自分より上のΩには不可能で、契約解除したければ番Ωの了承が必要になる。わざわざ解除するΩがいないから知られていないだけだ。
猪瀬は苦しむだろう。
簡単に言えば、俺は高級食材みたいなもんだ。
腹は減るから他の食事だって出来るが、飢餓感はへらない。未契約のΩとしても熱は籠もったままになるし、番契約をしてもかろうじて腹は満たされるが物足りない。
京極という腹を満たす為に俺はそういうΩにさせられた。
…………
猪瀬の額の汗をハンカチで拭く
不思議だ。何とも思っていなかったのに番になった途端になんとなく構いたくなる。奴の香りを持っていたくなる
嫌いじゃない、その程度で良かった。これが憎んでいたやつだったらどう思うとゾッとする。
…………コイツは苦しむだろうな、俺と京極の間で。
…………。
「陸。」
兄さんが言いかけてやめた。
『陸はどうするつもりなんだ』
そう尋ねようとしたのだろう。
どうするかなんて決めていない。どうなるかもわからない。それにそんなことよりも気になることがある
「兄さん、あれ何?」
露骨に不吉なものがカーテンレールから垂れ下がっている。見るからに首吊り縄
「あー、あれ?ちょっと分からせるために必要なものなんだ」
分からせる?
兄がカーテンレールのところへ近づいていく、嫌な予感がする
そのまま首を輪の中に突っ込んで踏み台の椅子をけった。
「……!!」
よく咄嗟に動けたと思う。
カーテンレールが兄の重さに耐えきれずに折れ、後ろ向きに倒れ込む兄の頭を何とかガードした。
「何してるんだよ!」
「陸にわからせようと思って」
「何を!俺が今どんだけ心臓が縮んだか!」
「同じだよ!眠ってる陸を見て俺がどんな思いだったか!」
「違う!兄さんは今自殺しようとしたんだよ!
「お前が今回した事と同じ事をしたたけだ!」
「俺は自殺何て考えてない!」
「同じだよ!レイプなんて心を破壊するものだ。男だから大丈夫とかそんな事はない!それに計算した。俺の重みでレールが壊れることぐらい分かってやったんだよ」
「万が一折れなかったらどうするつもりだったんだよ!こんな事の為に命をかけないでよ!兄さんの命はそんなに軽くない!俺や蓮兄さんがどう思うかわかってんの!」
俺が胸ぐらを掴んで怒鳴ると、兄さんは逆に俺の腹を殴った。
「お前だってそうだ!!俺の大切な大切な弟なんだよ!どんな気持ちだったよ!?俺が首をくくろうとした時に感じた事を一生忘れるんじゃねぇぞ!」
「…………」
「お前の心も体も軽んじないでくれ」
………心臓がぎゅっと縮こまったこの恐怖、それを俺は兄に何度も与えていたのか。
「ごめん」
輪っかを見る。先程までぷらんぷらんと垂れ下がっていた輪っか。不吉で目に入るだけで不安になるような光景だった。アレが兄から見たここ数ヶ月の俺なのだろう。
「ごめん」
泣きじゃくる兄を抱きしめ、外れたカーテンレールを見る。…………蓮兄さんにバレたらそれこそ俺の命がヤバそうだけど。
『お前の心も体も軽んじないでくれ』
特大ブーメランだけどな。俺なんかに分からせる為に危険な事を。計算をミスっていたら首の骨が折れていたかもしれない、兄にはそれが分かっていたはずだ。
違う、俺なんかじゃなくて俺だから。
……ごめん。馬鹿な弟で。ありがとう、兄さん。
~~~~~~~~~~~~~~
陸にはどうしても言っておきたい。
自分を大切にしろと。
目的の為に自己犠牲も厭わない、でも、それで傷つく人間がいるんだよと。傷ついた陸を見て悲しむ人間がいるんだよと。
ここが上手くかけなくて困りました。
読者様の読解力で何とか補間してください。
しかし…
うじうじなのに限界くるとキレる累兄さん。
特大ブーメラン放ったことは気が付かないちょとヌケてる累兄さん。
兄が泣いている。
そして白い天井に消毒液のニオイ。
うん、デジャヴ。
「陸、気がついたか!」
そのまま腹に抱きついてきて泣かれた。
「陸陸陸…今度こそ助からないかと思った」
「心配かけてごめん」
グスグス泣いている兄の頭を撫でながら、周囲を見渡した。
またも個室。ただ前回と異なるのは猪瀬が隣のベッドに寝ている事か。
アナフィラキシーショック後の回復には薬剤は当然だが、番から漏れ出るフェロモンも効果がある。その為に同室にされたのだろう。
寝巻き姿の兄が、ようやく落ち着いた。……蓮兄さんがキレそうだ。今の俺の体によくないから、看病したいなら、蓮兄さんのニオイは無くせと服を着替えさせられたのだろう。
ここまで蓮兄さんの痕跡が無い兄はどれくらいぶりだろうか。
……
「あれからどれくらい経った?」
「半日。昨日の夜に病院に担ぎ込まれたんだ。」
「そっか……」
猪瀬のフェロモンが香っている。
優しい香りだと思うのは番ったからか。俺がフェロモンレイプをした。
状況が状況とはいえ、許されることではない。いくらαが複数の番がもてるとはいえ俺のようなΩと番になってしまうと問題が発生するだろう。
俺は、バース変更したのが京極という最高位αだったせいかΩとしてのランクはかなり高い。α社会同様Ω社会にもランクがある。そしてαΩ社会にもランクがあるのだ。αは一方的に番解除ができるとされているが、実際には自分より上のΩには不可能で、契約解除したければ番Ωの了承が必要になる。わざわざ解除するΩがいないから知られていないだけだ。
猪瀬は苦しむだろう。
簡単に言えば、俺は高級食材みたいなもんだ。
腹は減るから他の食事だって出来るが、飢餓感はへらない。未契約のΩとしても熱は籠もったままになるし、番契約をしてもかろうじて腹は満たされるが物足りない。
京極という腹を満たす為に俺はそういうΩにさせられた。
…………
猪瀬の額の汗をハンカチで拭く
不思議だ。何とも思っていなかったのに番になった途端になんとなく構いたくなる。奴の香りを持っていたくなる
嫌いじゃない、その程度で良かった。これが憎んでいたやつだったらどう思うとゾッとする。
…………コイツは苦しむだろうな、俺と京極の間で。
…………。
「陸。」
兄さんが言いかけてやめた。
『陸はどうするつもりなんだ』
そう尋ねようとしたのだろう。
どうするかなんて決めていない。どうなるかもわからない。それにそんなことよりも気になることがある
「兄さん、あれ何?」
露骨に不吉なものがカーテンレールから垂れ下がっている。見るからに首吊り縄
「あー、あれ?ちょっと分からせるために必要なものなんだ」
分からせる?
兄がカーテンレールのところへ近づいていく、嫌な予感がする
そのまま首を輪の中に突っ込んで踏み台の椅子をけった。
「……!!」
よく咄嗟に動けたと思う。
カーテンレールが兄の重さに耐えきれずに折れ、後ろ向きに倒れ込む兄の頭を何とかガードした。
「何してるんだよ!」
「陸にわからせようと思って」
「何を!俺が今どんだけ心臓が縮んだか!」
「同じだよ!眠ってる陸を見て俺がどんな思いだったか!」
「違う!兄さんは今自殺しようとしたんだよ!
「お前が今回した事と同じ事をしたたけだ!」
「俺は自殺何て考えてない!」
「同じだよ!レイプなんて心を破壊するものだ。男だから大丈夫とかそんな事はない!それに計算した。俺の重みでレールが壊れることぐらい分かってやったんだよ」
「万が一折れなかったらどうするつもりだったんだよ!こんな事の為に命をかけないでよ!兄さんの命はそんなに軽くない!俺や蓮兄さんがどう思うかわかってんの!」
俺が胸ぐらを掴んで怒鳴ると、兄さんは逆に俺の腹を殴った。
「お前だってそうだ!!俺の大切な大切な弟なんだよ!どんな気持ちだったよ!?俺が首をくくろうとした時に感じた事を一生忘れるんじゃねぇぞ!」
「…………」
「お前の心も体も軽んじないでくれ」
………心臓がぎゅっと縮こまったこの恐怖、それを俺は兄に何度も与えていたのか。
「ごめん」
輪っかを見る。先程までぷらんぷらんと垂れ下がっていた輪っか。不吉で目に入るだけで不安になるような光景だった。アレが兄から見たここ数ヶ月の俺なのだろう。
「ごめん」
泣きじゃくる兄を抱きしめ、外れたカーテンレールを見る。…………蓮兄さんにバレたらそれこそ俺の命がヤバそうだけど。
『お前の心も体も軽んじないでくれ』
特大ブーメランだけどな。俺なんかに分からせる為に危険な事を。計算をミスっていたら首の骨が折れていたかもしれない、兄にはそれが分かっていたはずだ。
違う、俺なんかじゃなくて俺だから。
……ごめん。馬鹿な弟で。ありがとう、兄さん。
~~~~~~~~~~~~~~
陸にはどうしても言っておきたい。
自分を大切にしろと。
目的の為に自己犠牲も厭わない、でも、それで傷つく人間がいるんだよと。傷ついた陸を見て悲しむ人間がいるんだよと。
ここが上手くかけなくて困りました。
読者様の読解力で何とか補間してください。
しかし…
うじうじなのに限界くるとキレる累兄さん。
特大ブーメラン放ったことは気が付かないちょとヌケてる累兄さん。
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