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前回のあらすじ
陸がヒートになる。
少し京極に絆されかけていた陸がであったが、ヒートの余りの苦しさに、惨めさに、Ωに書き換えた京極への恨みを募らせる
~~~~~~~~~~~~~
青島が休んでいる。
Ωで一週間ともなれば理由なんて明白だ。不在の間に、こりもせず愚かな事を言うβが数名いた。
「どう乱れるんだろうな。ずっとαだったヤツだぜ?」
αにコンプレックスでもあるのだろう。青島がΩになった事でマウントをとるようになった。βにはΩを最下層に見るヤツもいる。実際、性産業に携わるΩは多い。Ωの希少性は高時給になし、ヒートの問題もあって雇用が義務化されている大企業以外では一般職の募集はほぼ無い。学力や手に職も無いΩは、低ランクΩはハードモードなのだ。やんごとなき家系のΩや良いαに出会えたΩは別だが。
そう、別なのだ。
確かに、青島は後天性Ω、しかもαからの、更にはαとして体が完成してからのバース転位だけあって、はっきり言ってΩとしての魅力にかける。性産業にいってもβよりは少し色をつけて貰える程度だろう。
本人のΩとしてのランク。α同様にΩにも本質的ランキングがある。そしてそれはα同様外見にも比例して表れる事が多い。つまり、青島は見下していい存在、そう判断しているのだろう。
だが、Ωの世界はそんなに単純ではない。
本人が上位か下位か、それだけの世界では無いのだ。番のαの地位がどれだけか、そしてなによりその番にどれだけ執着されているかだ。番のαに地位があっても多くのΩを囲いってアテンドをさせるαもいる。番のいるΩとやる事で興奮を覚える輩もいるのだ。
青島は京極様に執着されている。青島=京極家と思った方がいい。
外見で判断してはいけないのだ。…………まあ、かくいう俺も不思議で仕方無かったが。
まだ、青島がαだったころ。何故、京極様クラスが青島なんかを。同じαでしかも男。京極様はヘテロだったはずだ
けれど、青島がΩになって納得したのだ。『京極の血は後天性Ωに惹かれる』京極家のビッチングと同じ位囁かれていること。俺はこっちの方が信憑性が高いと思っている。
ビッチングが可能ならば、何も青島程度の外見では無くもっとイイのに手を出す。Ωならば、外見関係無くフェロモンに惹かれたとかもあり得るが、αのフェロモンなんて基本感知出来ないし感知できるのはマーキングとか攻撃性があるものとかだからウザいだけだ。
だから、ビッチングは都市伝説だ。実際京極に関係無く後天性Ωはいる。ただ、京極家の嫁に多いだけだ。当主の奥様も後天性Ωだ。ビッチングが可能だと言うのであれば、奥様がαだった頃から首輪をさせたはずだ。
京極様は青島の後天性Ωの隠された香りにヤられたのだ。
だから……
『どう乱れるんだろうな。』
こんな妄想を抱いた時点でアウトなのに。愚かな言葉はまだ続く。
パン、と手を叩く音が響いた。
「わりぃ。手が滑った」
西野が言う。
β達が押し黙る。
西野と青島は仲が良かった。コレまた、俺には分からないが青島を気に入っていた。友人というか部下というか下僕というか弟分というか、とにかく距離が近かった。ただ、京極様が青島を迎えに来てから『陸』呼びは無くなった。
京極様のソレに俺達αは驚いたけれど、西野はそうでも無かった。
『あんなののどこがいいんだろ?』
『そんなことはないよ。青島は原石だ。』
西野もだいぶ変な奴だよなぁ…と思ってた俺!
俺に見る目が無かった!
一週間ぶり、ヒート明けの青島は別人だった。
ゴクリと誰かが唾を飲み込む音がした。
無理もない。今の青島には淫靡さというか、妙な色香というかが漂っている。
αの庇護欲と、そして同時にαの嗜虐心を唆る雰囲気を纏いつつも未踏感があるΩ。喰らいたい、自分色に染め上げたいと思うαは多いだろう。
京極のお手つきで無ければ……!
「……青島、ノート見せてやるから俺の隣に来いよ」
「ありがとう」
西野の呼びかけに、青島が力無く笑う。青褪めた顔に紅い唇。陰のある微笑みに目が釘付けになる。
笑い方まで違う。
それほど陰を落としたのか、初のヒートは。
初のヒート…
これ程までの色香を纏うようになったヒート。どれほど乱れ鳴いたのだろうか。その靭やかな手でどう己を……
西野がバンとノートを机に叩き付けた
「え?に、西野?」
青島がビクリと身体を震わせた。
「わりい。蠅がうざくて」
「蠅?この時期に?」
「うじ虫じゃないだけまし」
「…………違いが分からないんだけど?」
「確かに」
西野の言葉に青島がケラケラ笑った。青島らしい笑い方に毒気を抜かれる。
……やっぱり底辺Ωだな。Ωとしてのランクは上のようだけど。
~~~~~~~~~~~~~~~
なんだかんだ、西野は陸を完全には見捨てられない人
前回のあらすじ
陸がヒートになる。
少し京極に絆されかけていた陸がであったが、ヒートの余りの苦しさに、惨めさに、Ωに書き換えた京極への恨みを募らせる
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青島が休んでいる。
Ωで一週間ともなれば理由なんて明白だ。不在の間に、こりもせず愚かな事を言うβが数名いた。
「どう乱れるんだろうな。ずっとαだったヤツだぜ?」
αにコンプレックスでもあるのだろう。青島がΩになった事でマウントをとるようになった。βにはΩを最下層に見るヤツもいる。実際、性産業に携わるΩは多い。Ωの希少性は高時給になし、ヒートの問題もあって雇用が義務化されている大企業以外では一般職の募集はほぼ無い。学力や手に職も無いΩは、低ランクΩはハードモードなのだ。やんごとなき家系のΩや良いαに出会えたΩは別だが。
そう、別なのだ。
確かに、青島は後天性Ω、しかもαからの、更にはαとして体が完成してからのバース転位だけあって、はっきり言ってΩとしての魅力にかける。性産業にいってもβよりは少し色をつけて貰える程度だろう。
本人のΩとしてのランク。α同様にΩにも本質的ランキングがある。そしてそれはα同様外見にも比例して表れる事が多い。つまり、青島は見下していい存在、そう判断しているのだろう。
だが、Ωの世界はそんなに単純ではない。
本人が上位か下位か、それだけの世界では無いのだ。番のαの地位がどれだけか、そしてなによりその番にどれだけ執着されているかだ。番のαに地位があっても多くのΩを囲いってアテンドをさせるαもいる。番のいるΩとやる事で興奮を覚える輩もいるのだ。
青島は京極様に執着されている。青島=京極家と思った方がいい。
外見で判断してはいけないのだ。…………まあ、かくいう俺も不思議で仕方無かったが。
まだ、青島がαだったころ。何故、京極様クラスが青島なんかを。同じαでしかも男。京極様はヘテロだったはずだ
けれど、青島がΩになって納得したのだ。『京極の血は後天性Ωに惹かれる』京極家のビッチングと同じ位囁かれていること。俺はこっちの方が信憑性が高いと思っている。
ビッチングが可能ならば、何も青島程度の外見では無くもっとイイのに手を出す。Ωならば、外見関係無くフェロモンに惹かれたとかもあり得るが、αのフェロモンなんて基本感知出来ないし感知できるのはマーキングとか攻撃性があるものとかだからウザいだけだ。
だから、ビッチングは都市伝説だ。実際京極に関係無く後天性Ωはいる。ただ、京極家の嫁に多いだけだ。当主の奥様も後天性Ωだ。ビッチングが可能だと言うのであれば、奥様がαだった頃から首輪をさせたはずだ。
京極様は青島の後天性Ωの隠された香りにヤられたのだ。
だから……
『どう乱れるんだろうな。』
こんな妄想を抱いた時点でアウトなのに。愚かな言葉はまだ続く。
パン、と手を叩く音が響いた。
「わりぃ。手が滑った」
西野が言う。
β達が押し黙る。
西野と青島は仲が良かった。コレまた、俺には分からないが青島を気に入っていた。友人というか部下というか下僕というか弟分というか、とにかく距離が近かった。ただ、京極様が青島を迎えに来てから『陸』呼びは無くなった。
京極様のソレに俺達αは驚いたけれど、西野はそうでも無かった。
『あんなののどこがいいんだろ?』
『そんなことはないよ。青島は原石だ。』
西野もだいぶ変な奴だよなぁ…と思ってた俺!
俺に見る目が無かった!
一週間ぶり、ヒート明けの青島は別人だった。
ゴクリと誰かが唾を飲み込む音がした。
無理もない。今の青島には淫靡さというか、妙な色香というかが漂っている。
αの庇護欲と、そして同時にαの嗜虐心を唆る雰囲気を纏いつつも未踏感があるΩ。喰らいたい、自分色に染め上げたいと思うαは多いだろう。
京極のお手つきで無ければ……!
「……青島、ノート見せてやるから俺の隣に来いよ」
「ありがとう」
西野の呼びかけに、青島が力無く笑う。青褪めた顔に紅い唇。陰のある微笑みに目が釘付けになる。
笑い方まで違う。
それほど陰を落としたのか、初のヒートは。
初のヒート…
これ程までの色香を纏うようになったヒート。どれほど乱れ鳴いたのだろうか。その靭やかな手でどう己を……
西野がバンとノートを机に叩き付けた
「え?に、西野?」
青島がビクリと身体を震わせた。
「わりい。蠅がうざくて」
「蠅?この時期に?」
「うじ虫じゃないだけまし」
「…………違いが分からないんだけど?」
「確かに」
西野の言葉に青島がケラケラ笑った。青島らしい笑い方に毒気を抜かれる。
……やっぱり底辺Ωだな。Ωとしてのランクは上のようだけど。
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