【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

文字の大きさ
上 下
140 / 243

138-??

しおりを挟む
~~~~~~~~~~~~~~~~
前回のあらすじ
陸がヒートになる。
少し京極に絆されかけていた陸がであったが、ヒートの余りの苦しさに、惨めさに、Ωに書き換えた京極への恨みを募らせる

~~~~~~~~~~~~~


青島が休んでいる。

Ωで一週間ともなれば理由なんて明白だ。不在の間に、こりもせず愚かな事を言うβが数名いた。
「どう乱れるんだろうな。ずっとαだったヤツだぜ?」
αにコンプレックスでもあるのだろう。青島がΩになった事でマウントをとるようになった。βにはΩを最下層に見るヤツもいる。実際、性産業に携わるΩは多い。Ωの希少性は高時給になし、ヒートの問題もあって雇用が義務化されている大企業以外では一般職の募集はほぼ無い。学力や手に職も無いΩは、低ランクΩはハードモードなのだ。やんごとなき家系のΩや良いαに出会えたΩは別だが。
そう、別なのだ。
確かに、青島は後天性Ω、しかもαからの、更にはαとして体が完成してからのバース転位だけあって、はっきり言ってΩとしての魅力にかける。性産業にいってもβよりは少し色をつけて貰える程度だろう。
本人のΩとしてのランク。α同様にΩにも本質的ランキングがある。そしてそれはα同様外見にも比例して表れる事が多い。つまり、青島は見下していい存在、そう判断しているのだろう。
だが、Ωの世界はそんなに単純ではない。

本人が上位か下位か、それだけの世界では無いのだ。番のαの地位がどれだけか、そしてなによりその番にどれだけ執着されているかだ。番のαに地位があっても多くのΩを囲いってアテンドをさせるαもいる。番のいるΩとやる事で興奮を覚える輩もいるのだ。
青島は京極様に執着されている。青島=京極家と思った方がいい。
外見で判断してはいけないのだ。…………まあ、かくいう俺も不思議で仕方無かったが。
まだ、青島がαだったころ。何故、京極様クラスが青島なんかを。同じαでしかも男。京極様はヘテロだったはずだ
けれど、青島がΩになって納得したのだ。『京極の血は後天性Ωに惹かれる』京極家のビッチングと同じ位囁かれていること。俺はこっちの方が信憑性が高いと思っている。
ビッチングが可能ならば、何も青島程度の外見では無くもっとイイのに手を出す。Ωならば、外見関係無くフェロモンに惹かれたとかもあり得るが、αのフェロモンなんて基本感知出来ないし感知できるのはマーキングとか攻撃性があるものとかだからウザいだけだ。
だから、ビッチングは都市伝説だ。実際京極に関係無く後天性Ωはいる。ただ、京極家の嫁に多いだけだ。当主の奥様も後天性Ωだ。ビッチングが可能だと言うのであれば、奥様がαだった頃から首輪をさせたはずだ。
京極様は青島の後天性Ωの隠された香りにヤられたのだ。
だから……
『どう乱れるんだろうな。』
こんな妄想を抱いた時点でアウトなのに。愚かな言葉はまだ続く。

パン、と手を叩く音が響いた。
「わりぃ。手が滑った」
西野が言う。
β達が押し黙る。

西野と青島は仲が良かった。コレまた、俺には分からないが青島を気に入っていた。友人というか部下というか下僕というか弟分というか、とにかく距離が近かった。ただ、京極様が青島を迎えに来てから『陸』呼びは無くなった。
京極様のソレに俺達αは驚いたけれど、西野はそうでも無かった。
『あんなののどこがいいんだろ?』
『そんなことはないよ。青島は原石だ。』

西野もだいぶ変な奴だよなぁ…と思ってた俺!
俺に見る目が無かった!

一週間ぶり、ヒート明けの青島は別人だった。
ゴクリと誰かが唾を飲み込む音がした。
無理もない。今の青島には淫靡さというか、妙な色香というかが漂っている。
αの庇護欲と、そして同時にαの嗜虐心を唆る雰囲気を纏いつつも未踏感があるΩ。喰らいたい、自分色に染め上げたいと思うαは多いだろう。
京極のお手つきで無ければ……!

「……青島、ノート見せてやるから俺の隣に来いよ」

「ありがとう」
西野の呼びかけに、青島が力無く笑う。青褪めた顔に紅い唇。陰のある微笑みに目が釘付けになる。
笑い方まで違う。
それほど陰を落としたのか、初のヒートは。
初のヒート…
これ程までの色香を纏うようになったヒート。どれほど乱れ鳴いたのだろうか。その靭やかな手でどう己を……

西野がバンとノートを机に叩き付けた
「え?に、西野?」
青島がビクリと身体を震わせた。
「わりい。蠅がうざくて」
「蠅?この時期に?」
「うじ虫じゃないだけまし」
「…………違いが分からないんだけど?」
「確かに」
西野の言葉に青島がケラケラ笑った。青島らしい笑い方に毒気を抜かれる。
……やっぱり底辺Ωだな。Ωとしてのランクは上のようだけど。







~~~~~~~~~~~~~~~
なんだかんだ、西野は陸を完全には見捨てられない人




しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

処理中です...