【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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エレベーターという狭い密閉空間を出ると少し頭が働き始めた。

家に戻り、ゴミ袋を持ってバスルームに向かう。
脱いだ服をそのままゴミ袋へと投入する。洗って再度着る気にもならない。

頭からシャワーを浴びる。身体をガシガシと洗った。
今更、Ωになったのに今更落とした所で意味が無いこと位分かっている。
それでも耐えられなかった。

『心配なんだ』
お前がソレを言うのか、スマホすら操作出来ない時間を過ごさざるえないバースに書き換えたお前が!
『助けが必要になったら呼んで』
誰が!お前なんかに!
俺がΩになった途端にフェロモンレイプをしたヤツなんかに
『体が出来上がってからのヒートは辛いから……』
番のいないΩは短命だ。それだけヒートは肉体的にも精神的にも過酷だという事。そして、男性Ωは更に短命だ。何度も何度も射精し続けるのだ、当然だ。疲弊して精神が壊れる者もいると聞く。
京極は俺をそんな存在に書き換えた、俺の了承も無く!
αというパートナーがいなければ60までには大半が死ぬという存在に。

『行かないで』
伸ばした手を途中で止めた京極。わがままな俺とは違い、夢の中ですらそんな気遣いを見せた男が何故!
そう、少し、少し絆されていた。京極と俺の関係はいつもそうだ。信頼や尊敬、それらが薄く張る度にヤツが壊す。壊したくせにまた築こうとする。そうして破片が俺の中ので悪さをする。
『私に従わないなら死ね』それがヤツの本音だ!
…人口的にはΩの方が数は少ない。更にαは複数のΩと番うことが可能だし、実際、Ωをコレクションにしているやつもいれば、契約番とをしているものもいる。
俺もとも思うけれど、京極を敵にしてまで俺と契約番になろうだなんて酔狂なヤツはいないだろう。
それに……コンちゃん…

「ホテル、捜さないと…」
湯船に浸かりながら呟く。
そう、今からでもヒート隔離施設のあるホテルを探さなければならない、ここは兄さん達の家だ。
そうは思うのに、思うのに……
怖い。
自分がどうなってしまうのか、一人で過ごすのが怖い。

身動きもできずにいると兄さん達が帰ってきてしまった。洗面台兼脱衣場で蓮兄さんが舌打ちするのが聞こえた。
「こら、蓮!陸が来れなかったからってそれはないだろ!陸、晩飯美味しかったよ。今度は陸の都合の良い時に行こうな」
「……そうだね」
兄さんに言われて曖昧に笑った。
「…………どうかしたのか?陸?」
「何でもないよ」
「…………陸、お店のご飯、テイクアウトしてきたから風呂からでたら食べろ。いつから入ってるんだ?のぼせるなよ?…………なんだ、この服?捨てるのか出しておいてやる」
「ありがとう」
「ダメだ」
ガサッと音がして、ゴミ袋を持ったであろう兄を蓮兄さんが止めた。
「陸の部屋に突っ込んでおけ」
「いらない!捨てておいてくれ!」
蓮兄さんの言葉にかぶせるように俺が怒鳴る。
「陸、ここ追い出されたくなければ俺に従え。その状態で追い出せばどうなるかわかっているだろう。累も陸のことを思うなら、とりあえずは俺に従え」
「…累兄さん、とりあえずそれ部屋に置いておいてほしい」
ここをこの状態で追い出されたら? ヒートにあおられたその辺の輩にレイプされる。けど、そんなことを京極が許したりはしないだろうから、蓮兄さんが京極に連絡して、俺は京極に捕まって監禁というところだろう。

「…………そう」
累兄さんが、低くつぶやいた。そして顔を伏せた俺の耳にドンと鈍い音が聞こえた。そっちを見ると、すりガラス越しに蓮兄さんが兄さんに殴られて倒れているのがわかった。
「兄さん!」
慌てて湯船から飛び出して、後ろから兄さんを止める。
「陸、タオルを巻け。面倒なことになる」
蓮兄さんが嫌そうに言う。
「……」
なんかこないだも脱衣場であったな。兄さんたちは脱衣所で揉めるのが好きなのか?俺は露出狂じゃないし、場所を選んでほしい。誰もマッパで喧嘩の仲裁なんてしたくない。

とりあえず嫌々ながら洋服を部屋に持って行く。リビングに戻れば累兄さんと蓮兄さんがもめていた。

「あれはなんなんだよ。これがわからないと思って部外者扱いしないでくれ。陸は俺の大事な弟なんだぞ!」
「あの服には京極のフェロモンが付いている。陸はおそらく、明後日ぐらいにヒートになる。」
「え?ああ、そうか、おまえは匂いで分かるのか。…珍しく陸を外食に誘うから…」
はっと言葉をとぎらせた累兄さんが蓮兄さんを殴った。
「出てけ!お前が出ていかないなら俺が陸とココを出ていく!」
ルイ兄さんは俺が京極と週一で会っていることを知っている。週一であわなければペナルティーがくることも知っている。そして今の蓮兄さんの発言で、今週で最も俺が安全な日が今日だと知ったのだ。その日を蓮兄さんは潰そうとしたのだ。
『蓮が三人で食事しようだなんて珍しいな』そう言って今朝兄は浮かれていた。だからこそ余計に許せないのかもしれない。
京極をヒート直前の俺に会わせて拉致させる、もしもヒートになって身動きが取れなかったとしても俺にはペナルティが課せられるから、今日会合しなければ、どちらにしろ俺をこの家から追い出せる。蓮兄さんは自分が非を負わずに。

「累、俺がここを出て行く。どちらにしろ、京極から明日には連絡が入るはずだ。俺にしばらくホテルにいろと」
「……」
「累、何があっても陸と2人で外に出るな。お前だけではヒート中の陸を守れはしない。巻き添えを食らうだけだ。陸のヒートが落ち着いたら戻ってくるよ」
そう言って蓮兄さんが荷物を持って出て行った。
……どういうことだ。。。




































































~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次話、ちょっと地獄?というか、…陸、ヒートになります。
ヒートの描写、下手だし、
陸が気の毒だし、蓮兄さん鬼畜発覚だし読者様は自己責任で一話とばすなりなさってくださいね!
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