【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

文字の大きさ
上 下
133 / 243

131

しおりを挟む
「もう少し見ていたいけれど、母タイガーが疲れてしまいますよね。ありがとうございました」
園長さんにペコリとお辞儀した。

「いえ、そんな…」
京極はまだ不満そうだ
「あの! 2時間後にミルクを与えるんです。あの一番右端の子が母乳をうまく飲めなくて他の兄弟に負けちゃうから、スタッフが個別にあげているのです。チャレンジなさいますか?」
仔トラのもぐもぐタイム。とても魅力的なお誘いだが2時間後か。ここまで来るのにすでに1時間かかっているということは、この動物園に滞在できるのは1時間のみ。不可能だ

「私たちはあと1時間しかここにいない。今日1日ぐらいミルクの時間を早めることはできないのか」
ヲイ!
「申し訳ございません。まだあの子は小さいので無茶をさせることはできないのです」
「私が言っているのだが?」
京極が威圧を出しているようだ。園長が苦しそうにしている。
「ですが……」
「見せて下さい!二時間後にここにくれば良いですか!?」
俺の大声に京極の威圧が緩んだ
「は、はい」
「では、二時間後にまたこちらに伺います!失礼します!」
そのまま、飼育室を出る。どうせ京極は俺から離れない。ならば俺がここから出るのが一番の得策だ
「陸、待って」
無視をしてスタスタと歩き出す。ホワイトタイガーの赤ちゃんにそんな酷なことを言うやつなんて無視だ、無視。
…………でも、俺の為、なんだよ…

ため息をついて言った
「俺はとりあえず2時間後のもぐもぐタイムを見に行ってくる。お前はどちらでもいい。もともと3時間 という約束だから帰ってもいい。忙しいだろうし、その辺はお前に任せる」
「陸と一緒にいられる事以上に重要な事なんて私にはないよ」
「………………」
「電車は不安だから送らせて欲しい。 ダメか?」
「……分かった。」


カピバラやらキリンやら色々な動物を見て回った
動物って見ているだけで力をもらえる気がする
そして動物は直感が冴えわたっているのだろう。京極が来るとしずしずと頭を垂れるようにしてやってくるものもいれば、逆に一目散に逃げ出すものもいる
……猛獣すら使役できそうだ。
そんな地球の覇王は、コレまたガイドよろしく色々教えてくれた。
……このαの頭ってどうなっているんだろう?
「はい」
餌を渡される。この動物園は所々に餌の自販機があって、来園者が餌やりすることができる。
細やかな気遣いに心がざわめく。優しさがじわりじわりと心の奥深くに侵食してくる。
やっぱり来るべきでは無かった。そう、思う。


あっという間に2時間が過ぎてホワイトタイガーの所へ行った
園長さんと飼育員さんがいた。
「良い動物園だな。二時間……良い働きをしたな。」
「ありがとうございます!」
…………多分、寄附金額を増やすんだろうな。

飼育員さんがミルクをあげているのを間近で見る
哺乳瓶が赤ちゃんの口元に差し出されると、小さな虎は舌を出してミルクを飲む
「か、可愛い……」
ありえないくらいに可愛い。
「あげてみますか?」
飼育員さんがにっこりと笑いながらいう。
「いいんですか」
「はい。ただ、赤ちゃんとはいえ猛獣なので……」
「り」
「大丈夫です。カジカジするのは当たり前の事ですから。ありがとうございます。…京極もありがとう」
飼育員さんの言葉を遮った京極を更に俺が遮る。
こんな体験、二度とできない。流石に京極にも感謝だ。
仔トラを抱くと以外とずっしりで安定感バツグンだった。
「ほら、ミルクだよ」
腕の中の白いふわふわが懸命にミルクを飲む。
うわぁ~

「陸がミルクを与えている……」
「「「???」」」

京極がブツブツ何か呟いている。
そういえば、以前から京極は時々こんな風にしていたような……。それで、京極が席を外して猪瀬がため息と共に予定を変更していたな…

「陸がミルク…陸の…陸の…私が…私も陸のミル…飲む」
ヲイ?

「陸、私は少し席を外す。存分に楽しんで」
「「「「??」」」」
をい!
京極が去っていき、聞き取れなかった飼育員さんが怪訝そうな顔をする。
「お連れ様、どうかなさったんですか?」
「いえ。無視していいです」
他になんて答えろと!?

仔トラが前足をワシャワシャした。
可愛いなぁ。
癒しだ癒し。
これ以外、何も考えたくない……

戻ってきた京極を見て、飼育員さんが顔を赤らめた。
気持ちは分からないでもない。
なんつーか、凄絶に淫靡?淫猥?
…………これの運転する車で帰るのか。
気が重い……。

何かをするなら、帰りだろう。そう思って警戒をしながら車に乗ったが、特に京極が暴挙に出ることもなかった。
…………疲れた。



しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

処理中です...