【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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兄のマンションに帰ってきてしばらくしてインターフォンが鳴った。
「はい」
兄さんが出る。
「ああ、はい。…………俺が取りにいきます。」
……兄さんは平静を装っているけれど、、声に僅かな緊張がみられる。
「陸、俺はフロントに荷物を取りに行くけれど、すぐ戻ってくるからここにいろよ?」
つまり、インターフォンの相手は俺を指名していたという事か。
「わかった」
兄がホッとした顔をした。

兄が部屋を出て行ったのをみて俺も動く。
俺に用があるとすれば、京極関係者だ。
遵法精神のかけらもないような、いや、むしろ俺が法律だとでも言い切りそうな連中に対して兄一人で行かせるわけにはいかない。
オメガ用の防犯ベルをもってエレベーターに乗った。Ω保護課に救出されたことでこの防犯ベルが即時提供された。この防犯ベルは先日学生課で渡されたものと同型だ。公的機関に直接救出要請が入りGPSで追ってくれる。GPSを発見するまでは確実に追ってくれ、その場を直接確認してくれる。だからストーカー被害者など危険性が高い人しか使えないことになっているのだ。αだった俺に流石のコンちゃんもこれを提供するのは不可能だった。
退院して一番にしたことは、防犯ベルを渡してくれた彼女の安否確認だった。
俺にこれをくれた彼女は大丈夫だろうか。紛失届を出せただろうか。いや、紛失届を出せば無事では済まない。俺との番契約を邪魔した者を京極は許さない。けれど、、、この防犯ベルがないと危険だから彼女に提供されたのに防犯ベルなしでは、彼女もまた俺みたいな目にあってしまう。それだけは避けなければならないと思って調べた。
彼女のストーカーは捕まっていて、安堵した。。
Ωがどれだけ危険と隣り合わせの生活なのか、実感させられた。


ロビーのソファには兄と想像通りだが猪瀬ともう一人、どこかで見たような年配の男性がいた。どこで見たのだろう…
こっそり近寄ろうとしたが、即、猪瀬に気が付かれた。
「青島、出てこい。こちらが気が付いている以上、盗み聞きなど効率の悪いことはよせ。」
やはり猪瀬は上位αだ。気配に聡い。隣の年配男性もαのようだが俺には気がつかなかった。猪瀬より下位なのだろう。猪瀬の機嫌をうかがっているのが見てとれる。親にも近い年齢の人相手にその態度はどうなんだよと思わないでもない。

深呼吸して出ていく。
大丈夫。ここのマンションのセキュリティは一流だ。フロントは24時間有人でしかも柔道黒帯といった体術に優れた者が配置されている。
何より、ここは鷹司のマンションだ。京極のほうが格は上だが、できれば諍いを避けたいはず。

「陸!?なんで!部屋にいろと言ったはずだ!」
兄がこちらを振り返った。
「累は嘘が下手すぎるからなぁ。一人では行かせないだろ、麗しい兄弟愛だな」
蓮兄さんが柱の陰からひょこっと顔を出して言った。
俺も猪瀬も驚きのあまり言葉が出ない。ここまで気配を消せるものなのか。
「京極貴嗣を含め関係者には接近禁止命令出てるが、陸から近づく分には問題ないしな。」
「俺のせいか…」
兄のつぶやきを蓮兄さんが拾って認めた。
「そうだな」
「蓮兄さん!」
「事実だろうが。インターフォンで何を言われようと累が無視していれば、陸から行く事は無かった」
確かにそうだ。でも。
「兄さんに責任はない。元々巻き込んだのは俺のほうだ。」
蓮兄さんはあの時既に家にいて、兄さんと猪瀬のやり取りを聞いていたのだ。俺が兄を一人で行かせたりしない事も分かっていた。
吐き気がしそうだ。
俺が行けば猪瀬は兄さんに用はない。問題なく解放される。それが分かっていながらも蓮兄さんは俺達のあとをつけてきた。兄さんに自責の念を抱かせて慰める、そのためにつけてきたのだ。
俺を囲うためにバースを変更させた京極
兄が自立しない為に、兄が蓮兄さんの許容以上に自信を持たないように兄を傷つける蓮兄さん
上位αなんて腐ってる

けれどもう俺の存在がバレているのであればもういい
兄をどんなネタで脅してここまで呼び寄せたのか、それを確認したかっただけだが もうそんな確認もいらない
兄にとって不利なネタ だった場合には蓮兄さんがもっと早く止めに入っている。いや、猪瀬を痛めつけている。

だから、兄は俺に関するネタで脅された。ならばだいたいの内容は想像つくから、後で諭せばいい。単なるブラフだからと
ならば、どうでもいい
「俺はお前らと話す気はない」



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