【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「陸、大丈夫か。蓮、ここは病室だ。陸にこんな事をするなら出ていけ」
兄さんが蓮兄さんに言うが、それは困る。
多分、βの兄に配慮して伝えられてないことがあるはずだ。
この首輪の事だって累兄さんは知らない。
これほどの惨状になっているのだ、本来であれば一度外して体を清潔にしたほうがいいのにしていない、そうできない理由を兄には知らせていないのだろう。
俺たちαならこの首輪を見ただけで悟る。もともとは、ほかのヤツの番になるくらいなら死んでしまえというαの妄執の首輪。けれど、マーキングもされていない状態の首輪ならば、お前の番になるくらいなら自死してやるというΩの覚悟を示した首輪。
でも、兄はこの首輪を普通に保管していた。俺が、コンちゃんがこの首輪をしていることを受け入れられなかったこと同様に、兄も俺がこの首輪を装着することを受け入れられなかったはずだ。とことん、βなのだ。
そんなβには医師も隠し事をするだろう。

「兄さん、大丈夫だから。今は何よりも情報が必要なんだ。早く正確な情報が」
「……俺は正確な情報を持ってないというのか?兄なのに?」
「…漣兄さんも兄だから。」
兄さんが顔をゆがませた。血のつながりよりもαという事を優先された。バースで苦しんできた兄にとって医師の対応はひどい仕打ちだろう。

「で、抑制剤というか麻酔薬が効いて京極がお前を離したんで、そのまま救急車でこの病院に運ばれた。一応京極には接近禁止命令が警察からは出ている。ここまでの騒ぎになると大学ももう黙認はできないだろうから、学内では安全だ」
「…わかった。ちなみに、リモート受講は許可されたのかな?」
「……京極には停学処分が下されている。リモート希望理由が京極から離れたいだった以上、京極不在の間は却下といわれてるが交渉次第だろうな」
「…そっか」
多分…大学側は俺に大学以外の所で京極に襲われる事を望んでいる。さっさと番ってほしいと思っている。だから、通学といった俺が外に出ざるえない状況を作り出そうとしているのだ。
京極の名はそれほどに重い。
「…陸にこんなことをしておいて、停学なだけなのか」
「停学にしただけでもすごい事だがな。よっぽど堪えたらしいな」
「何を、何を蓮は言っているんだ?犯罪者だぞ!?」
兄が怒鳴るが蓮兄さんは肩を竦めるのみだ。

よっぽど堪えた、つまり、動画が拡散されて帝都大に批判がいっているのか。
まだ、俺がレイプされた時の動画はネットに残っているのか…
「猪瀬が確認すると同時に削除要請を出したからな。短時間だろうな」
「……なんの話?削除要請って?さっきから二人は何の話をしているんだ?」
「陸に聞けよ。それか…累が後で俺にさっきの言葉を謝罪するというなら教えてやる。等価交換だ」
「蓮兄さん!」
だめだ、京極が動画の削除に動いたなら大々的に知れ渡ることはない。
兄に知れることもないのに、伝える必要なんてない。兄が傷つくだけだ。
「蓮、後でお詫びをするから教えてくれ…」
「兄さん!」
蓮兄さんが要求するのお詫びなんて、後でするお詫びなんてまっとうものであるはずがない。蓮兄さんのポリシー。等価交換。でも交換する価値すらない!
「蓮兄さん!」
「陸は大学側がリモート受講に反対することも、京極にレイプされることも予想がついていたから、それをライブ配信したんだよ。」
「え…」
「音のみだがな。それでも大学側が不当に受理しなかったことも、京極が陸にナニをやっているかも十分にわかるものだった」
「な、なん、で…」
兄さんが青ざめる。口がハクハクと動く…
「番いたくない陸が取れる手段なんてそれぐらいしかないだろ。録音では説得力に欠けるし。ライブで垂れ流したから猪瀬が確認して踏み込んだわけだし、大学側も救急車を手配した。そうでなければ、部屋でヤられたあとは京極家に連れ去られて何らかの手段でその首輪を外されて番ってチャンチャンだっただろ。」
「そんな…」
混乱している兄さんを蓮兄さんが抱きしめて、背中をポンポンとたたく。崩れ落ちそうになる兄を支える

…………
本当にαというものは腐っている。
番に頼られるために、番を傷つける。


…垂れ流し、か。
事実とはいえ、兄をより傷つけるために発せられたより強い言葉。
けれど…
思わず自分の体を抱きしめた。

京極が動画の削除に動いたとは言え、ネットに載ったものは完全に消すことなど不可能だ。
デジタルタトゥー
『私に突かれただけでイクなんて陸は淫乱だね…』
『私をきゅうきゅうと締め付けて陸のここはなんて淫乱なんだ…』

ちがう
ちがう

…垂れ流し…

首を振る。
『こんなのはなぁ!ションベンと同じなんだよ!』
そう、そう、生理現象だ

『陸は淫乱だね…』
…垂れ流される…







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